The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本呼吸理学療法学会企画 » シンポジウム

[RS-1] シンポジウム 呼吸理学療法の多様性

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 2:20 PM B2会場 (東京ベイ幕張ホール No. 3・4)

座長:玉木 彰(兵庫医療大学大学院医療科学研究科), 座長:岸川 典明(愛知医科大学病院リハビリテーション部)

日本呼吸理学療法学会企画

[RS-1-1] 誤嚥性肺炎

吉田 剛 (高崎健康福祉大学保健医療学部理学療法学科)

誤嚥性肺炎は,口腔内に乾燥などの条件で起因菌が繁殖し,唾液や食塊の嚥下時に誤嚥して気道侵入することで発症する。これまで嚥下障害に対してリハチームの中で理学療法が果たす役割は,誤嚥後の排痰が中心であった。しかし,嚥下障害が残存した状態では容易に再発し,対症療法としての対応に終始することに対する疑問が生じてくる。そもそも,誤嚥する嚥下機能に対しても理学療法が対応できることがあるのではないかという考えに立って嚥下理学療法を構築しているところである。

嚥下機能は,球麻痺や偽性球麻痺といった嚥下機能自体の局所の問題だけでなく,前提となる口腔衛生状態,全身活動性に加えて,肩甲骨や脊柱,下顎を含む姿勢アライメント,頸部周囲筋群の筋緊張,呼吸と嚥下の協調性などの要素が嚥下運動しやすい状態かどうかに大きく影響を受ける。そもそも気道防御反射としての嚥下反射という位置づけがあり,嚥下ニューロンと呼吸ニューロンは解剖学的にも重なっているので切り離して考えることができない機能である。嚥下呼吸パターンは,通常呼息―嚥下―呼息パターンが正常といわれているが,高齢者は吸息―嚥下または嚥下―吸息パターンが多いと言われており,呼吸器疾患者も同様である。また嚥下パターンには個別性があり,飲み込みのクセが存在するとも言われている。

持続性陽圧呼吸療法(CPAP)が嚥下反射の潜時と回数を抑制し,逆流性食道炎や嚥下―呼息パターンが改善するという報告もある。また,代償的嚥下法として知られる息こらえ嚥下練習なども呼吸と嚥下のタイミングの改善に役立つと考えられている。これらの知見も併せて,今まで培われた呼吸理学療法手技を嚥下機能の改善にも役立て,誤嚥性肺炎の予防につなげることが望まれる。