The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会企画 » シンポジウム

[YB-4] シンポジウム 認知症とフレイル予防の戦略

Sun. May 14, 2017 12:30 PM - 2:00 PM B1会場 (東京ベイ幕張ホール No. 1・2)

座長:古名 丈人(札幌医科大学保健医療学部理学療法学科)

日本予防理学療法学会企画

[YB-4-3] 認知症予防を目指した戦略

土井 剛彦 (国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター予防老年学研究部健康増進研究室)

認知症は加齢とともに増加するため,我が国にみられる高齢化率の増加に伴う患者数の急増が懸念されている。認知症に対する根治療法の開発が続けられる中,認知症の予防ないし発症遅延を目指すことが非常に重要な意味を有している。限られた資源の中でそれらを効果的に実施するためには,対象と方法について十分に考える必要がある。軽度認知機能障害(mild cognitive impairment:MCI)は認知症ではないが認知機能低下がみられる状態とされ,認知症への移行リスクが高い反面,健常への移行についてもある一定の割合でみられるとされている。そのため,MCIは着目すべき対象層であると考えられる。介入方法について,認知症のリスクの中で可変要因に着目し,積極的に取り組む必要がある。認知症に対する主な可変要因として,高血圧や糖尿病などの生活習慣病,うつなどの心理状態,身体活動低下,知的活動の減少,社会交流の減少などがあげられ,これらを改善するような生活スタイルを確立することが望ましい。運動を用いた介入のランダム化比較試験によると,認知機能の向上や脳萎縮に対する効果が報告されてきた。多くの研究では健常高齢者が対象とされ,MCIを対象にした検証は実施例が少ないものの,我々の実施した研究を含め近年報告されつつある。介入に用いられる運動としては,有酸素運動,筋力増強トレーニング,同時課題(dual-task)を用いた運動などが大半を占めており,これらを複合的に実施する例も報告されている。現状のエビデンスを的確に把握し,地域として認知症の課題にいかに取り組んでいくべきか,また専門職として理学療法士がどのような役割を担うことが求められているのかについて考えていくことが,認知用予防を目指した戦略において必要不可欠であると考えられる。