13:05 〜 13:20
[CA-02] 身体機能の改善により活動参加の目標達成に繋がった訪問リハビリテーション事例
自主練習のアドヒアランス向上による身体機能へのアプローチ
キーワード:アドヒアランス、身体活動量、訪問リハビリテーション
【はじめに・目的】
アドヒアランス(Adherence:以下,AD)は「患者の行動が医療者の提供した治療方針に同意し,一致すること」と定義されている(WHO,2003).訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)では,介入頻度や医療従事者の監視が減少するため,運動療法の効果を得るには患者自身の行動継続が必要であり,ADの概念が重要となる.また,訪問リハ対象者には,生活活動の乏しさから機能障害を招き重度化させている症例と,活動性を維持しながらも,機能障害から活動や参加が制約されている症例がおり,それぞれ異なる介入方略が必要と考えられる.後者の場合,個々の機能障害に応じた自主練習の指導とADが重要であるが,どのような視点がAD向上に有効かは十分に検討されていない.
本報告の目的は,良好な生活活動により身体活動量は保たれているが,下肢筋の痙縮によりT字杖歩行の獲得に難渋した訪問リハ利用者の,自主練習に対するAD向上に有効な介入視点を考察することである.
【方法】
本症例は,T字杖歩行での買い物動作獲得が目標のリハ意欲の高い70歳代男性(要介護3).認知機能に問題はなく,独居生活のため日常生活動作はFunctional Independence Measureが123点(歩行・階段・浴槽移乗のみ減点)であり,100m程度はT杖歩行で外出可能であった.静的場面での痙縮は,Modified Ashworth Scaleで1+と僅かしか認めないが,併存疾患である腰部脊柱管狭窄症による機能障害から,屋外T杖歩行時のみ下肢筋の痙縮が増強し,300m先のスーパーまでの歩行が困難であった.身体機能は,短縮版Berg Balance Scaleが,屋外歩行自立のカットオフ値20点(Chouら,2006)と同値であり,同年健常者の標準値(Chenら,2015)と同程度の身体活動量を有していた.そのため,生活活動の向上だけでなく,機能障害に対する適切な自主練習の指導が必要であると考え,利用者と介入方針に対する合意形成を行い,自主練習として下肢筋の痙縮抑制に有効なストレッチ(Stretch:以下,ST)(Odeenら,1981)の指導を開始した.自主運動とSTに対するADの評価は,自記式質問紙を用いてそれぞれの理解度と遵守率を5件法で聴取し,5点満点で得点化した.介入開始時の自主運動に対するADは,満点に近い4点を示した.しかし,STのADは2点と低い得点に留まり,ST効果の実感が不足していることが,ADの低さに作用していると考えられた.そこで,訪問リハ時には歩行前にSTを実施し,T字杖歩行中の痙性出現までの距離を確認するプロセスを経ることで,STが痙縮抑制効果を持つと理解できるように効果検証を共有して行った.
【結果】3か月後には,STに対するADが4点まで向上し,屋外T字杖歩行の距離が300mまで増加したことで,週1回の買い物動作が可能となった.
【結論】本事例の場合,自主練習実施に対するAD向上には根拠ある情報提供と合意形成,そして本人の実感を伴う効果検証の共有化が重要であった.
【倫理的配慮、説明と同意】
本発表に対して,症例と家族には十分な説明を口頭と紙面で行い,同意を得ている.
アドヒアランス(Adherence:以下,AD)は「患者の行動が医療者の提供した治療方針に同意し,一致すること」と定義されている(WHO,2003).訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)では,介入頻度や医療従事者の監視が減少するため,運動療法の効果を得るには患者自身の行動継続が必要であり,ADの概念が重要となる.また,訪問リハ対象者には,生活活動の乏しさから機能障害を招き重度化させている症例と,活動性を維持しながらも,機能障害から活動や参加が制約されている症例がおり,それぞれ異なる介入方略が必要と考えられる.後者の場合,個々の機能障害に応じた自主練習の指導とADが重要であるが,どのような視点がAD向上に有効かは十分に検討されていない.
本報告の目的は,良好な生活活動により身体活動量は保たれているが,下肢筋の痙縮によりT字杖歩行の獲得に難渋した訪問リハ利用者の,自主練習に対するAD向上に有効な介入視点を考察することである.
【方法】
本症例は,T字杖歩行での買い物動作獲得が目標のリハ意欲の高い70歳代男性(要介護3).認知機能に問題はなく,独居生活のため日常生活動作はFunctional Independence Measureが123点(歩行・階段・浴槽移乗のみ減点)であり,100m程度はT杖歩行で外出可能であった.静的場面での痙縮は,Modified Ashworth Scaleで1+と僅かしか認めないが,併存疾患である腰部脊柱管狭窄症による機能障害から,屋外T杖歩行時のみ下肢筋の痙縮が増強し,300m先のスーパーまでの歩行が困難であった.身体機能は,短縮版Berg Balance Scaleが,屋外歩行自立のカットオフ値20点(Chouら,2006)と同値であり,同年健常者の標準値(Chenら,2015)と同程度の身体活動量を有していた.そのため,生活活動の向上だけでなく,機能障害に対する適切な自主練習の指導が必要であると考え,利用者と介入方針に対する合意形成を行い,自主練習として下肢筋の痙縮抑制に有効なストレッチ(Stretch:以下,ST)(Odeenら,1981)の指導を開始した.自主運動とSTに対するADの評価は,自記式質問紙を用いてそれぞれの理解度と遵守率を5件法で聴取し,5点満点で得点化した.介入開始時の自主運動に対するADは,満点に近い4点を示した.しかし,STのADは2点と低い得点に留まり,ST効果の実感が不足していることが,ADの低さに作用していると考えられた.そこで,訪問リハ時には歩行前にSTを実施し,T字杖歩行中の痙性出現までの距離を確認するプロセスを経ることで,STが痙縮抑制効果を持つと理解できるように効果検証を共有して行った.
【結果】3か月後には,STに対するADが4点まで向上し,屋外T字杖歩行の距離が300mまで増加したことで,週1回の買い物動作が可能となった.
【結論】本事例の場合,自主練習実施に対するAD向上には根拠ある情報提供と合意形成,そして本人の実感を伴う効果検証の共有化が重要であった.
【倫理的配慮、説明と同意】
本発表に対して,症例と家族には十分な説明を口頭と紙面で行い,同意を得ている.