4:40 PM - 4:50 PM
[N-02] 転倒関連自己効力感尺度の運動機能低下と転倒発生に対する予測的能力
1年間の縦断的観察研究
Keywords:転倒関連自己効力感、地域在住自立高齢者、予測的妥当性
【はじめに、目的】
転倒関連自己効力感は虚弱高齢者の運動機能低下や転倒発生の予測因子となることが示されている.しかし,生活機能が良好な地域高齢者においても同様の予測的能力を有するかは明らかにされていない.本研究は,地域在住自立高齢者における転倒関連自己効力感の将来の機能低下や転倒発生に対する予測能力を検討した.
【方法】
本研究は1年間の縦断的観察研究とした.対象は,地域の広報誌で募集し,1年間追跡調査が可能であった地域在住高齢者262名とした(71.4±4.6歳,男性65名).65歳未満,日常生活活動(ADL)障害のある高齢者は除外した.ADLは要介護・要支援認定の有無で確認した.対象者には,ベースラインで調査として,転倒関連自己効力感,運動機能,認知機能,転倒の有無と転倒回数を踏査した.転倒関連自己効力感は日本語版のShort Falls Efficacy Scale-International (Short FES-I)を用いて評価した.運動機能は,快適条件および最速条件での5m歩行時間,5 times chair stand test (FCST),Timed Up and Go test (TUG),握力,膝伸展筋力を評価した.認知機能は,Trail Making Test part A (TMT-A)を調査した.さらに,1年後の追跡調査において,転倒の有無と転倒回数,運動機能を再度調査した.また,交絡要因として,老研式活動能力指標および疼痛の有無も調査した.統計解析として,従属変数を1年後の運動機能,独立変数をShort FES-Iとし,交絡要因で調整した重回帰分析を行った.加えて,従属変数を1年後の転倒回数,独立変数をShort FES-I,交絡要因として年齢,性別で調整したPoisson回帰分析を実施した.
【結果】
Short FES-Iと1年後の運動機能との関連として,単変量解析では最速条件歩行時間, FCST,TUGがShort FES-Iと有意な関連を示した.一方,重回帰分析では,交絡要因で調整してもShort FES-Iは1年後の最速条件歩行時間と有意に関連した(非標準化回帰係数=12.1).Short FES-Iと転倒との関連については,Poisson回帰分析により,年齢と性別で調整してもShort FES-Iは1年後の転倒回数と有意に関連した(相対リスク比=1.09).
【結論】
本研究の結果,Short FES-Iは1年後の歩行能力と転倒発生と有意な関連を示した.すなわち,転倒関連自己効力感は,ADLが自立した地域在住高齢者においても,将来の運動機能や転倒発生の予測因子となることが示された.特に,Short FES-Iは社会活動に関する評価項目も含まれており,生活機能が良好な地域在住高齢者への適応において妥当な尺度であると考えられた.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号 2016―G021B).また,本研究の対象者には書面および口頭にて研究目的および内容について説明し,研究協力については書面による同意を得た.
転倒関連自己効力感は虚弱高齢者の運動機能低下や転倒発生の予測因子となることが示されている.しかし,生活機能が良好な地域高齢者においても同様の予測的能力を有するかは明らかにされていない.本研究は,地域在住自立高齢者における転倒関連自己効力感の将来の機能低下や転倒発生に対する予測能力を検討した.
【方法】
本研究は1年間の縦断的観察研究とした.対象は,地域の広報誌で募集し,1年間追跡調査が可能であった地域在住高齢者262名とした(71.4±4.6歳,男性65名).65歳未満,日常生活活動(ADL)障害のある高齢者は除外した.ADLは要介護・要支援認定の有無で確認した.対象者には,ベースラインで調査として,転倒関連自己効力感,運動機能,認知機能,転倒の有無と転倒回数を踏査した.転倒関連自己効力感は日本語版のShort Falls Efficacy Scale-International (Short FES-I)を用いて評価した.運動機能は,快適条件および最速条件での5m歩行時間,5 times chair stand test (FCST),Timed Up and Go test (TUG),握力,膝伸展筋力を評価した.認知機能は,Trail Making Test part A (TMT-A)を調査した.さらに,1年後の追跡調査において,転倒の有無と転倒回数,運動機能を再度調査した.また,交絡要因として,老研式活動能力指標および疼痛の有無も調査した.統計解析として,従属変数を1年後の運動機能,独立変数をShort FES-Iとし,交絡要因で調整した重回帰分析を行った.加えて,従属変数を1年後の転倒回数,独立変数をShort FES-I,交絡要因として年齢,性別で調整したPoisson回帰分析を実施した.
【結果】
Short FES-Iと1年後の運動機能との関連として,単変量解析では最速条件歩行時間, FCST,TUGがShort FES-Iと有意な関連を示した.一方,重回帰分析では,交絡要因で調整してもShort FES-Iは1年後の最速条件歩行時間と有意に関連した(非標準化回帰係数=12.1).Short FES-Iと転倒との関連については,Poisson回帰分析により,年齢と性別で調整してもShort FES-Iは1年後の転倒回数と有意に関連した(相対リスク比=1.09).
【結論】
本研究の結果,Short FES-Iは1年後の歩行能力と転倒発生と有意な関連を示した.すなわち,転倒関連自己効力感は,ADLが自立した地域在住高齢者においても,将来の運動機能や転倒発生の予測因子となることが示された.特に,Short FES-Iは社会活動に関する評価項目も含まれており,生活機能が良好な地域在住高齢者への適応において妥当な尺度であると考えられた.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号 2016―G021B).また,本研究の対象者には書面および口頭にて研究目的および内容について説明し,研究協力については書面による同意を得た.