[O-001] 地域在住高齢者の筋量減少を推定する筋厚カットオフ値の検討
Keywords:カットオフ値、筋厚、サルコペニア
【はじめに、目的】超音波画像による筋厚は簡便に評価できる筋量の指標としてよく用いられており,下肢筋の代表として大腿四頭筋(QF)や下腿三頭筋(TS)が対象筋となることが多い。一方,サルコペニア診断基準としては,生体電気インピーダンス法を用いて測定した四肢筋量減少の基準値が用いられることが多く,超音波画像で計測したQFやTSの筋厚による筋量減少のカットオフ値については明らかでない。筋厚によるカットオフ値が明らかになれば,超音波画像は個々の筋の評価だけでなくサルコペニア判定のための筋量減少推定もできる有用なツールになると期待される。本研究では,超音波画像を用いて評価したQFとTSの筋厚による筋量減少の予測能を検討し,そのカットオフ値を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は地域在住高齢者204名(男性64名,女性140名,平均年齢75.3歳)とした。超音波画像装置(GEヘルスケア社製)を用い,端坐位にて右下肢のQFとTSを撮像した。QFは大腿長の中点の高さで大腿直筋(RF)上,TSは下腿長の近位1/3の高さで腓腹筋内側頭(GM)上にプローブを接触させ撮像した。得られた画像より,RF,中間広筋(VI),GM,ヒラメ筋(Sol)の筋厚を計測し,さらにRFとVIを合計したQF筋厚,GMとSolを合計したTS筋厚,および4筋を合計した筋厚SUMを求めた。体組成計(タニタ社製)を用いて四肢筋量を計測し,身長の2乗で除すことでSkeletal mass index(kg/m2)を求めた。Asian Working Group for Sarcopeniaのサルコペニア診断による筋量減少の基準値(男性;7.0 kg/m2,女性;5.7 kg/m2)をもとに,対象者を筋量維持群(男性51名,女性110名)と筋量減少群(男性13名,女性30名)に群分けした。統計処理として,男性,女性それぞれにおいて両群の筋厚の違いを対応のないt検定を用いて検討し,さらにROC曲線を用いて筋量減少のカットオフ値とAUCを求めた。
【結果】筋量維持群と比べ筋量減少群の筋厚は,男性のVI以外の筋で有意に小さかった(p<0.05)。男性/女性の筋量減少の筋厚カットオフ値は,RFが1.51cm/1.43 cm(AUC 0.78/0.65),VIが1.17cm/0.91 cm(AUC 0.68/0.71),QFが2.92cm/2.34 cm(AUC 0.77/0.75),GMが1.53cm/1.42 cm(AUC 0.81/0.75),Solが4.44cm/3.75 cm(AUC 0.78/0.65),TSが5.72cm/5.66 cm(AUC 0.85/0.73),筋厚SUMが8.56cm/7.62 cm(AUC 0.85/0.78)であった。
【結論】AUCは男性ではGM,TS筋厚や筋厚SUM,女性ではQF,GM筋厚や筋厚SUMで大きく,サルコペニア診断基準である骨格筋量減少の予測能が高いことが示唆された。特にGMやTSの筋厚は,大腿部と比べ肌の露出が容易で簡便に計測可能であることから,地域在住高齢者の骨格筋量減少を推定する有用な指標となると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
研究は,測定機関の倫理委員会の承認を得て実施された。対象者には事前に研究内容を説明し,書面にて研究に参加する同意を得た。
【方法】対象は地域在住高齢者204名(男性64名,女性140名,平均年齢75.3歳)とした。超音波画像装置(GEヘルスケア社製)を用い,端坐位にて右下肢のQFとTSを撮像した。QFは大腿長の中点の高さで大腿直筋(RF)上,TSは下腿長の近位1/3の高さで腓腹筋内側頭(GM)上にプローブを接触させ撮像した。得られた画像より,RF,中間広筋(VI),GM,ヒラメ筋(Sol)の筋厚を計測し,さらにRFとVIを合計したQF筋厚,GMとSolを合計したTS筋厚,および4筋を合計した筋厚SUMを求めた。体組成計(タニタ社製)を用いて四肢筋量を計測し,身長の2乗で除すことでSkeletal mass index(kg/m2)を求めた。Asian Working Group for Sarcopeniaのサルコペニア診断による筋量減少の基準値(男性;7.0 kg/m2,女性;5.7 kg/m2)をもとに,対象者を筋量維持群(男性51名,女性110名)と筋量減少群(男性13名,女性30名)に群分けした。統計処理として,男性,女性それぞれにおいて両群の筋厚の違いを対応のないt検定を用いて検討し,さらにROC曲線を用いて筋量減少のカットオフ値とAUCを求めた。
【結果】筋量維持群と比べ筋量減少群の筋厚は,男性のVI以外の筋で有意に小さかった(p<0.05)。男性/女性の筋量減少の筋厚カットオフ値は,RFが1.51cm/1.43 cm(AUC 0.78/0.65),VIが1.17cm/0.91 cm(AUC 0.68/0.71),QFが2.92cm/2.34 cm(AUC 0.77/0.75),GMが1.53cm/1.42 cm(AUC 0.81/0.75),Solが4.44cm/3.75 cm(AUC 0.78/0.65),TSが5.72cm/5.66 cm(AUC 0.85/0.73),筋厚SUMが8.56cm/7.62 cm(AUC 0.85/0.78)であった。
【結論】AUCは男性ではGM,TS筋厚や筋厚SUM,女性ではQF,GM筋厚や筋厚SUMで大きく,サルコペニア診断基準である骨格筋量減少の予測能が高いことが示唆された。特にGMやTSの筋厚は,大腿部と比べ肌の露出が容易で簡便に計測可能であることから,地域在住高齢者の骨格筋量減少を推定する有用な指標となると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
研究は,測定機関の倫理委員会の承認を得て実施された。対象者には事前に研究内容を説明し,書面にて研究に参加する同意を得た。