第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

老年学1

[O] 一般口述1

Sat. Dec 14, 2019 1:00 PM - 2:00 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:橋立 博幸(杏林大学 保健学部理学療法学科)

[O-006] 地域在住高齢者の腰痛既往と背部筋の筋量、筋内非収縮組織および姿勢アライメントとの関連

*真野 航希1、田岡 久嗣2、齋藤 敬子1、杉野 綾香1、田中 真砂世3、佐々木 瞳4、美原 知里4、谷内 裕樹4、恩田 有生4、正木 光裕1,5 (1. 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部、2. 天理よろづ相談所病院リハビリセンター、3. 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻、4. 京都市修徳老人デイサービスセンター、5. 新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所)

Keywords:高齢者、腰痛既往、背部筋

【はじめに・目的】
腰痛患者では健常者よりも、腰椎の安定性に寄与する腰部多裂筋の筋量が減少している(Hides J, 2008)。腰痛患者では腰部多裂筋において、筋内の脂肪組織といった非収縮組織が増加していることも報告されている (Wan Q, 2015; Sions J, 2017)。腰痛は寛解しても再発することが多く、腰痛の寛解後1年以内の腰痛再発率は50%である (Hestbaek L, 2003)。腰痛再発の原因はいまだ明らかにされていないため、過去に腰痛を経験したが現在は有さない腰痛既往者においても、背部筋の筋量や筋内非収縮組織について分析する必要がある。また、高齢者では若年者よりも腰痛の発症率が高いため(Spijker-Huiges A, 2015)、腰痛既往を有する高齢者を対象に分析することも重要である。
本研究の目的は地域在住高齢者を対象とし、腰痛既往と超音波画像診断装置で評価した背部筋の筋量や筋内非収縮組織との関連について、姿勢アライメントと合わせて検討することとした。
【方法】
地域在住高齢者69名を対象として、現在の腰痛や過去に3ヵ月以上続く腰痛既往を有さない者60名 (健常群: 年齢85.0 ± 7.1歳) 、過去に3ヵ月以上続く腰痛を経験したが現在は有さない者9名 (腰痛既往群: 年齢88.6 ± 2.0歳) に群分けした。超音波画像診断装置 (GE Healthcare社製) を使用し、背部筋の筋量評価として、安静腹臥位での胸部脊柱起立筋、腰部脊柱起立筋、腰部多裂筋、腰方形筋の筋厚を左右測定した。各筋の筋厚は左右の平均値を算出した。背部筋の結合組織や脂肪組織といった筋内非収縮組織の評価として、画像処理ソフト (NIH社製) を用いて各筋の筋輝度を算出し、左右の平均値を算出した。姿勢アライメントの評価として、スパイナルマウス (Index社製) を使用し、安静立位、安静腹臥位での胸椎後彎角度、腰椎前彎角度、仙骨前傾角度を測定した。また、質問紙を用いて過去の腰痛の持続期間を聴取し、疼痛の程度をNumerical Rating Scale (NRS)、腰痛が日常生活動作に及ぼす影響をOswestry Disability Index (ODI) を用いて評価した。
統計解析では、腰痛既往と関連する要因を検討するために、腰痛既往の有無を従属変数、背部筋の筋厚、筋輝度、姿勢アライメント、年齢、身長、体重および性別を独立変数とした、変数増加法による多重ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】
腰痛既往群において過去の腰痛の持続期間は100.3±131.5ヵ月、NRSは5.2 ± 1.4、ODIは 28.1 ± 15.0 % であった。多重ロジスティック回帰分析の結果、腰痛既往と有意な関連がある要因として、腰部多裂筋の筋輝度 (オッズ比: 1.06) が抽出され、その他の項目は抽出されなかった。腰痛既往群は健常群よりも腰部多裂筋の筋輝度が増加していた。
【結論】
地域在住高齢者における腰痛既往には、背部筋の筋量や姿勢アライメントよりも腰部多裂筋の筋内非収縮組織増加が関連することが示唆された。今後、腰痛既往者における腰痛再発の原因を明らかにするための更なる検討が求められている。

【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には研究内容についての説明を十分に行い、書面にて同意を得た。なお、本研究は本学における倫理委員会の承認を得て実施した。