第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

一般口述

老年学2

[O] 一般口述3

Sat. Dec 14, 2019 2:10 PM - 3:10 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:今岡 真和(大阪河﨑リハビリテーション大学 リハビリテーション学部理学療法学専攻)

[O-013] 地域在住高齢者の要介護状態と背部筋の筋量、姿勢アライメント、移動能力および下肢筋力との関連

*齋藤 敬子1、東 佐登美2、真野 航希1、杉野 綾香1、田中 真砂世3、佐々木 瞳4、美原 知里4、谷内 裕樹4、恩田 有生4、正木 光裕1,5 (1. 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部、2. 佛教大学保健医療技術実習センター、3. 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻、4. 京都市修徳老人デイサービスセンター、5. 新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所)

Keywords:高齢者、要介護状態、背部筋

【はじめに・目的】
地域在住高齢者において、介護保険の要介護状態には歩行速度やtimed up-and-go (TUG) 時間 (長澤, 2016) 、膝関節伸展筋力 (宮原, 2017) が関連することが報告されている。高齢者は加齢によって背部筋の筋量低下 (Ikezoe T, 2012) や立位姿勢アライメントの変化 (Takeda N, 2009) といった体幹において運動機能の低下が生じる。脊柱起立筋や多裂筋は脊柱伸展、側屈作用を有するため、日常生活動作における矢状面、前額面での体幹の動的な姿勢制御や体幹の伸展動作に寄与している。また、脊柱後彎、骨盤後傾が増加した立位姿勢アライメントも日常生活動作での姿勢制御に影響を与える。地域在住高齢者において、これらの背部筋や立位姿勢アライメントも要介護状態に関連する可能性があるが、要介護状態と背部筋、立位姿勢アライメントとの関連はこれまでに報告されていない。
本研究の目的は地域在住高齢者を対象に、介護保険の要介護状態と超音波画像診断装置を使用して評価した背部筋の筋量、姿勢アライメントとの関連について、移動能力および下肢筋力と合わせて検討することとした。
【方法】
地域在住高齢者97名を対象として、介護保険の要介護度に基づいて健常群24名 (年齢: 78.0 ± 3.4歳) 、要介護群73名 (年齢: 87.3 ± 5.4歳) に群分けした。背部筋の筋量評価として、超音波画像診断装置 (GE Healthcare社製) を使用し、左右の胸部脊柱起立筋、腰部脊柱起立筋、腰部多裂筋の筋厚を測定した。各筋の筋厚は左右の平均値を算出した。姿勢アライメントの評価として、スパイナルマウス (Index社製) を使用し、安静立位、安静腹臥位での胸椎後彎角度、腰椎前彎角度、仙骨前傾角度を測定した。移動能力の評価として、最大歩行速度、TUG時間を測定した。下肢筋力の評価として、徒手筋力計 (アニマ株式会社製) を使用し、右側の膝関節伸展筋力を測定した。また、Numerical Rating Scaleを用いて腰痛・下肢痛の程度を評価した。
要介護状態に関連する要因を検討するために、要介護状態の有無を従属変数、背部筋の筋厚、姿勢アライメント、移動能力、下肢筋力、腰痛、下肢痛、年齢、性別および身長を独立変数とした、変数増加法による多重ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】
多重ロジスティック回帰分析の結果、要介護状態と有意な関連がある要因として、胸部脊柱起立筋の筋厚 (オッズ比: 0.04) 、歩行速度 (オッズ比: 0.00004) のみが抽出され、その他の項目は抽出されなかった。要介護群は健常群よりも胸部脊柱起立筋の筋厚が減少し、歩行速度が低下していることが示された。
【結論】
地域在住高齢者の要介護状態には、姿勢アライメントや下肢筋力よりも胸部脊柱起立筋の筋量減少や歩行速度の低下が関連していることが示唆された。地域在住高齢者において要介護状態に移行することを予防するためには、下肢に対するトレーニングのみならず、脊柱起立筋を対象とした体幹に対するトレーニングも必要である可能性がある。

【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には研究内容についての説明を十分に行い、書面にて同意を得た。なお、本研究は本学における倫理委員会の承認を得て実施した。