第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

一般口述

老年学2

[O] 一般口述3

Sat. Dec 14, 2019 2:10 PM - 3:10 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:今岡 真和(大阪河﨑リハビリテーション大学 リハビリテーション学部理学療法学専攻)

[O-014] 地域在住自立高齢者における運動能力テストの測定誤差の検証

*北井 優衣1、上出 直人2,3、鈴木 良和4、柴 喜崇2、佐藤 春彦2,3、坂本 美喜2 (1. 国家公務員共済組合連合会 九段坂病院、2. 北里大学医療衛生学部、3. 北里大学大学院医療系研究科、4. 北里大学東病院リハビリテーション部)

Keywords:地域在住自立高齢者、測定誤差、運動能力テスト

【はじめに、目的】
介護予防において,高齢者の運動能力を把握するために,各種の運動能力テストが一般的に行われる.しかし,どのような運動能力テストであっても必ず一定の測定誤差が生じうる.一般的に,臨床で用いられている各種の運動能力テストにおいて信頼性は検証されているが,絶対的な測定誤差は検証が不十分である.しかし,測定誤差が明確でないと,測定値の変化が測定誤差であるか,真の変化であるか判断することができない.また,測定を行う上で,測定誤差の特性や測定精度を明確に知っておくことでより正確な評価を行うことができると考えられる.本研究では,地域在住自立高齢者の運動能力テストにおける誤差の範囲を検証した.
【方法】
本研究は横断的観察研究であった.対象は,地域の広報誌で募集した地域在住高齢者718名とした.運動能力テストとしては,Five times chair stand test(5CST),Timed Up and Go test (TUG),快適条件および最速条件での5m歩行時間,握力,膝伸展筋力を測定した.なお,すべての運動能力テストは同一検者が2回ずつ測定した.その他,身長や体重などの基本属性を調査した.データ解析として,Bland-Altman分析を用いて測定における系統誤差の有無を検討した.測定における系統誤差が無いことを確認した後,最小可検変化量(MDC)を用いて,各運動能力テストにおける絶対的な測定誤差量を算出した.また,測定値に対する測定誤差の相対的指標として,各運動能力テストのMDCを測定データの平均値で除して%MDCを算出した.
【結果】
Bland-Altman分析の結果,5CSTには比例誤差と加算誤差の両者の系統誤差が認められたため,5CSTのMDCは算出できなかった.一方,TUG,握力,5m歩行時間では系統誤差は認められず,%MDCは10%未満と測定誤差が小さく優れた精度であった.しかし,膝伸展筋力には系統誤差はないものの,%MDCが12%と測定誤差が比較的大きいことが示された.
【結論】
本研究の結果,5CSTでは系統誤差である比例誤差と加算誤差を認め,測定において学習効果が生じやすいと考えられた.膝伸展筋力は%MDCが12%と測定誤差が大きく,継時的に測定を行う際に,変化の検出感度が低い可能性が示唆された.よって,詳細な継時的に変化をとらえる場合にはやや劣るという特性を知ったうえで評価を行う必要がある. TUG・握力・歩行時間は測定誤差が10%未満と精度が高く,測定値が10%以上変化すれば真の変化として測定結果を解釈することができると考えられた.

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施したものである.また,本研究の対象者には書面および口頭にて研究目的および内容について説明し,研究協力については書面による同意を得た.