第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

老年学2

[O] 一般口述3

Sat. Dec 14, 2019 2:10 PM - 3:10 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:今岡 真和(大阪河﨑リハビリテーション大学 リハビリテーション学部理学療法学専攻)

[O-015] 居宅内生活における歩行速度とフィールドテストで計測された歩行速度との関係

*浅川 康吉1、加藤 真由美2、正源寺 美穂2、北岡 和代3、植村 小夜子4、甲斐 正義5、石田 和生5、稲垣 嘉信5 (1. 首都大学東京、2. 金沢大学、3. 公立小松大学、4. 佛教大学、5. NECソリューションイノベータ株式会社)

Keywords:モニタリング、生活歩行速度、独居高齢者

【はじめに、目的】壁に設置して人の動きを検知するセンサ(人感センサ)は対象者の活動を非侵襲的に計測することができる。我々は人感センサを用いて居宅内の普通の生活における歩行速度(以下、生活歩行速度)を計測し、その臨床的意義を検討している。本研究の目的は、生活歩行速度と運動機能評価などで広く用いられている歩行路を用いて計測された歩行速度(以下、フィールドテスト歩行速度)との関係を明らかにすることである。
【方法】対象者は65歳以上の独居高齢者18名(年齢78.1±6.4歳、介護度は非該当から要介護3で中央値は1)とした。生活歩行速度の計測には24時間連続で人感有無を検知する人感センサを用い、居宅のリビングルーム付近の壁とトイレ扉付近の壁に設置したセンサの反応時間の差とセンサ間距離から歩行速度(m/s)を算出した。計測期間は2ヵ月間とし、この間に記録された歩行速度の平均値と中央値を生活歩行速度のデータとした。フィールドテスト歩行速度は最大歩行と通常歩行とを計測した。計測時期は生活歩行速度計測期間の中間にあたる時期とし、屋内に設けた11mの直線歩行路の中央部分5mの通過所要時間(秒)から歩行速度(m/s)を算出した。得られたデータの正規性の検定にはShapiro-Wilk検定を用いた。生活歩行速度の平均値と中央値のそれぞれについてフィールドテスト歩行速度における最大歩行速度および通常歩行速度との関係はPearsonの相関係数を用いて分析した。また、対象者を通常歩行速度(m/s)が1.0以上の者と1.0未満の者とに分け、対応のないt検定を用いて群間の生活歩行速度の差を比較した。統計学的分析における有意水準は5%とした。
【結果】生活歩行速度(m/s)の平均値±標準偏差は、平均値でみた場合は0.567±0.201、中央値でみた場合は0.536±0.226であった。フィールドテスト歩行速度(m/s)の平均値±標準偏差は最大歩行速度では1.40±0.26、通常歩行速度では1.14±0.27であった。生活歩行速度の中央値はフィールドテスト歩行速度の最大歩行速度(r=0.508, p=0.031)とも通常歩行速度(r=0.644, p=0.004)とも有意な相関を認めた。生活歩行速度の平均値はフィールドテスト歩行速度の通常歩行速度(r=0.516, p=0.028)と有意な相関を認めた。通常歩行速度(m/s)が1.0 以上の者(n=13)と1.0未満の者(n=5)との間では、生活歩行速度の中央値(p=0.025)にも平均値(p=0.021)にも有意な差を認めた。
【結論】生活歩行速度はフィールドテスト歩行速度と中等度の相関をもつことが示唆された。また、サルコペニアの診断・介入の判断に重要な指標となっている歩行速度1.0 m/sで対象者を分けると生活歩行速度には差がみられることが示唆された。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は金沢大学医学倫理審査委員会の承認を得て実施した。実施にあたっては本人ならびに代諾者(家族)から書面により同意を得た。本演題の内容は国立研究開発法人情報通信研究機構「ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発」の研究助成をうけて実施した研究の一部である。利益相反には該当しない。