第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

老年学2

[O] 一般口述3

Sat. Dec 14, 2019 2:10 PM - 3:10 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:今岡 真和(大阪河﨑リハビリテーション大学 リハビリテーション学部理学療法学専攻)

[O-016] 地域在住自立高齢者の呼吸機能には体組成が影響する

*河野 千紗都1、前田 拓也2、上出 直人3,4、坂本 美喜3、柴 喜崇3、佐藤 春彦3,4 (1. 社会医療法人 三思会 東名厚木病院 リハビリテーション科、2. 北里大学東病院リハビリテーション部、3. 北里大学医療衛生学部、4. 北里大学大学院医療系研究科)

Keywords:地域在住自立高齢者、呼吸機能、体組成


【はじめに・目的】
地域在住高齢者の約10%に潜在的な呼吸機能低下があると報告されている(Yoshikawa, et al. 2017).高齢者の呼吸機能低下はADLやQOLの低下,死亡と関連しており,高齢者の健康増進が重要視されている現代において,呼吸機能低下に対する予防対策の構築は重要である.先行研究においては,脂肪量や骨格筋量といった体組成が呼吸機能と有意に関連するとの報告が散見されるが,明確な結論は出ていない.そこで,本研究では,地域在住自立高齢者を対象に,呼吸機能と体組成の関連性について検討した.
【方法】
本研究は横断的観察研究とした.対象は要支援・要介護認定を受けていない65歳以上の地域在住自立高齢者347名(平均年齢72.4±4.6歳,男性87名)とした.除外基準は,呼吸器疾患・心疾患を有する対象者,体内に金属インプラントを有する対象者,明らかな認知機能低下を有する対象者とした.調査項目は呼吸機能として努力性肺活量(Forced vital capacity:FVC),一秒量(Forced expiratory volume in 1.0 second:FEV1.0)を測定した.体組成として,生体インピーダンス法にて,各体節の骨格筋量と脂肪量,さらに腹部周囲長を測定した.また,四肢筋量からSkeletal mass index(SMI)を算出した.身体機能として握力を測定した.さらに、基本属性として,年齢,性別,身長,体重,喫煙歴,病歴を調査した.統計解析は,FVCおよびFEV1.0と各変数との関連性を単変量解析にて検討した.その後,FVCまたはFEV1.0を従属変数、筋量および脂肪量を独立変数,年齢・性別・身長・握力・喫煙年数を混乱要因とする重回帰分析を行った.なお,統計学的有意水準は5%とした.
【結果】
対象者のFVCは標準値に対して平均95.4%(42.6%~137.2%),FEV1.0は標準値に対して平均96.0%(39.5%~147.2%)であった.単変量解析の結果,FVC,FEV1.0ともに上肢,体幹,下肢の筋量,SMI,上肢,体幹,下肢の脂肪量,腹部周囲長と有意な関連を示した.一方,重回帰分析の結果,混乱要因で調整すると,FVCは腹部周囲長のみが負の関連を示し、骨格筋量は関連しなかった.FEV1.0では腹部周囲長が有意に負の関連を,上肢筋量と体幹筋量が有意に正の関連を示した.
【結論】 地域在住自立高齢者において,呼吸機能と腹部脂肪量や上肢・体幹の筋肉量といった体組成が関連することが示された.このことから,高齢者の呼吸機能低下にはサルコペニアやサルコペニア肥満が関与している可能性が示唆された.

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号 2016-G021B).また,本研究の対象者には書面および口頭にて,研究目的および内容について説明し,研究協力については書面による同意を得た.