[O-017] 通いの場(サロン)への参加はフレイル発症を抑制するか
JAGES縦断研究
Keywords:フレイル、介護予防、通いの場(サロン)
【はじめに,目的】
フレイルとは,高齢期に生理的予備能が低下することで,ストレスに対する脆弱性が亢進している状態であり,生活機能障害,要介護状態,死亡などの危険性が高くなった状態である.厚生労働省はフレイルの多面性に応じた総合的な対策の1つとして,高齢者の通いの場(以下,サロン)を中心とした介護予防事業を掲げている.こうしたサロンの効果検証が求められているが,全国規模のデータを用い,サロンへの参加とフレイル発症の関連を検証した報告は,未だない.そこで本研究では,サロンへの参加はフレイル発症を抑制するかを検証することを目的とした.
【方法】
日本老年学的評価研究(JAGES:Japan Gerontological Evaluation Study)のデータを用いた縦断研究である.分析対象は2013,2016年度の2時点の自記式郵送調査に回答した全国24市町村の65歳以上の日常生活の自立した地域在住高齢者で,2016年度のサロンに関する項目に回答した7,223名のうち,2013年度にフレイル(基本チェックリスト25項目中8項目以上該当)でなかった6,285名(平均年齢72.6±5.4歳,男性2,879名)とした.サロン参加とフレイル発症の関連の検証にはポアソン回帰分析(有意水準5%,強制投入法)を用いた.目的変数は2016年度のフレイルとし,説明変数はサロンへの参加状況とした.2016年度にサロンへの参加期間を尋ね,サロンへの参加期間が3年未満と回答した者は「サロン参加3年未満」,3年以上参加と回答した者は「サロン参加3年以上」,参加なしと回答した者は「参加なし」,参加していたが止めた,参加しているが期間不明と回答した者は「期間不明」,未回答は「欠損」とした.調整変数は2013年時点の年齢,性,等価所得,教育歴,婚姻,独居,就業,うつ,治療中の疾患の有無,肉・魚の摂取頻度,野菜・果物の摂取頻度,1日の歩行時間,友人と会う頻度,主観的健康感,飲酒,喫煙,手段的日常生活動作とした.
【結果】
2016年時点のフレイル発症割合は14.4%であった.サロン参加期間3年未満は6.3%,3年以上は8.0%,参加なしは71.1%,期間不明は5.9%,欠損は8.6%であった.サロン参加なしに対するフレイル発症IRR(incidence rate ratio)はサロン参加3年未満0.87(95%信頼区間: 0.58-1.29),サロン参加3年以上0.47(0.28-0.79)であった.
【結論】
全国24市町村の地域在住高齢者を対象とした分析の結果,サロン参加はフレイル発症の抑制に効果的であり,特にその効果はサロン参加期間3年以上で大きいことが示唆された.今後,理学療法士をはじめとする専門職にはサロンの機能強化が求められている.フレイル発症の抑制を考える上では,理学療法士はサロンの機能強化を図りつつ,サロンの参加の継続に向けて取り組むことも重要となるだろう.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は千葉大学,国立長寿医療研究センターの倫理審査委員会の承認を受け,各自治体との間で定めた個人情報取り扱い事項を遵守した.
フレイルとは,高齢期に生理的予備能が低下することで,ストレスに対する脆弱性が亢進している状態であり,生活機能障害,要介護状態,死亡などの危険性が高くなった状態である.厚生労働省はフレイルの多面性に応じた総合的な対策の1つとして,高齢者の通いの場(以下,サロン)を中心とした介護予防事業を掲げている.こうしたサロンの効果検証が求められているが,全国規模のデータを用い,サロンへの参加とフレイル発症の関連を検証した報告は,未だない.そこで本研究では,サロンへの参加はフレイル発症を抑制するかを検証することを目的とした.
【方法】
日本老年学的評価研究(JAGES:Japan Gerontological Evaluation Study)のデータを用いた縦断研究である.分析対象は2013,2016年度の2時点の自記式郵送調査に回答した全国24市町村の65歳以上の日常生活の自立した地域在住高齢者で,2016年度のサロンに関する項目に回答した7,223名のうち,2013年度にフレイル(基本チェックリスト25項目中8項目以上該当)でなかった6,285名(平均年齢72.6±5.4歳,男性2,879名)とした.サロン参加とフレイル発症の関連の検証にはポアソン回帰分析(有意水準5%,強制投入法)を用いた.目的変数は2016年度のフレイルとし,説明変数はサロンへの参加状況とした.2016年度にサロンへの参加期間を尋ね,サロンへの参加期間が3年未満と回答した者は「サロン参加3年未満」,3年以上参加と回答した者は「サロン参加3年以上」,参加なしと回答した者は「参加なし」,参加していたが止めた,参加しているが期間不明と回答した者は「期間不明」,未回答は「欠損」とした.調整変数は2013年時点の年齢,性,等価所得,教育歴,婚姻,独居,就業,うつ,治療中の疾患の有無,肉・魚の摂取頻度,野菜・果物の摂取頻度,1日の歩行時間,友人と会う頻度,主観的健康感,飲酒,喫煙,手段的日常生活動作とした.
【結果】
2016年時点のフレイル発症割合は14.4%であった.サロン参加期間3年未満は6.3%,3年以上は8.0%,参加なしは71.1%,期間不明は5.9%,欠損は8.6%であった.サロン参加なしに対するフレイル発症IRR(incidence rate ratio)はサロン参加3年未満0.87(95%信頼区間: 0.58-1.29),サロン参加3年以上0.47(0.28-0.79)であった.
【結論】
全国24市町村の地域在住高齢者を対象とした分析の結果,サロン参加はフレイル発症の抑制に効果的であり,特にその効果はサロン参加期間3年以上で大きいことが示唆された.今後,理学療法士をはじめとする専門職にはサロンの機能強化が求められている.フレイル発症の抑制を考える上では,理学療法士はサロンの機能強化を図りつつ,サロンの参加の継続に向けて取り組むことも重要となるだろう.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は千葉大学,国立長寿医療研究センターの倫理審査委員会の承認を受け,各自治体との間で定めた個人情報取り扱い事項を遵守した.