第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

一般口述

老年学2

[O] 一般口述3

Sat. Dec 14, 2019 2:10 PM - 3:10 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:今岡 真和(大阪河﨑リハビリテーション大学 リハビリテーション学部理学療法学専攻)

[O-018] 地域在住高齢者の躓き確率は大学生より高いが転倒は予測できない

*佐藤 春彦1,2、上出 直人1,2、柴 喜崇1、坂本 美喜1 (1. 北里大学医療衛生学部、2. 北里大学大学院医療系研究科)

Keywords:躓き、歩行、転倒

【はじめに・目的】
歩く時、つま先と床とが最も接近する最小つま先クリアランス(Minimum Toe Clearance: MTC)が小さければわずかな段差でも躓く。理屈の上ではそうだが、高齢者の転倒に関しては明確な証拠に乏しい。そこで、遊脚期全般にわたりつま先が描く矢状面上の軌跡を元に算出する躓き確率に着目した。本研究では地域在住高齢者の躓き確率は大学生よりも高いのか、また、確率が高いと転倒が発生しやすいのかを検証した。
【方法】
対象は体力測定会に参加された地域在住高齢者のうち、参加半年後に転倒の有無を聴取できた108名(73±4歳, 男27名)と、大学生100名(22±2歳,男44名)とした。対象者には直径16 mmの球形反射マーカーを右側の腸骨稜、大転子、膝外側上顆中央、外果、第5中足骨頭に貼付し、快適速度で直線9 mの歩行路を歩かせ、3台のカメラからなる運動解析システムLocus3D(アニマ社製)にて歩行データを記録した。躓き確率はByju(2016)の方法に基づき、第5中足骨頭マーカーの矢状面軌跡から床からの高さが4cmを超えない範囲(積分値)を算出した。躓き確率とMTCの高齢者と大学生の平均値について、歩行速度を共変量とした共分散分析で比較し、転倒の発生への影響の強さをロジスティック回帰分析で検証した。
【結果】
快適歩行速度は高齢者が有意に速かった(1.51 vs. 1.35 m/秒, p < 0.001)。躓き確率は高齢者が1370歩に1回、大学生が3906歩に1回と高齢者が有意に高かった(p < 0.001)。一方、MTCは高齢者が31mm、大学生が24mmと大学生が有意に低かった(p < 0.001)。高齢者は歩行計測の半年後に11名が転倒を経験したが、転倒の発生に関するオッズ比は躓き確率で1.25(95%信頼区間 0.03 - 58.74, p = 0.93)、MTCで1.04(95%信頼区間 0.56 - 1.92, p = 0.9) と、どちらも関与は認められなかった。
【結論】 遊脚期のつま先の最下点の一点のみで捉えるMTCは、歩行速度の低下が見られない地域高齢者では大学生よりも高く、躓く可能性は低いと捉えられた。一方、躓き確率は、高齢者の躓く可能性が若年者より高いと捉えたが、実際の転倒への関与は認められなかった。よって、躓き確率は地域で元気に暮らす高齢者の転倒は予測できないと結論した。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号2016-G021B)。また、本研究の対象者には書面および口頭にて研究目的および内容について説明し、研究協力については書面による同意を得た。