[O-027] 地域在住高齢者の歩行速度と下肢筋量非対称の関連
Keywords:歩行速度、非対称性、骨格筋量
【はじめに、目的】
歩行速度は、転倒・認知症・死亡リスクに関連し、高齢者における最も一般的な身体機能評価である。歩行速度は加齢に伴い低下し、その主要因子として筋力低下が密接に関わっている。そのような中、近年は下肢筋力の非対称性が歩行速度や転倒に独立して関連することが報告されている。一方、加齢による筋力低下と共に筋量損失も生じると考えられているが、筋量は四肢の合計量が指標として用いられることが一般的であり、これまで筋量の非対称性に着目した先行研究は限られている。したがって、本研究目的は地域在住高齢者における下肢筋量非対称の存在と歩行速度への影響について調査することであった。
【方法】
地域在住自立高齢者139名を横断的に調査した。自立歩行不可、重度な並存疾患、ペースメーカー利用者、認知機能低下により測定実施困難であった例は解析から除外した。評価項目は、基礎情報、内服数、並存疾患、下肢痛、ADL、握力、5m通常歩行速度、骨格筋量(測定機器:Inbody430)を調査した。骨格筋量は、四肢筋量と下肢筋量それぞれを身長で補正した四肢骨格筋指数(SMI)および下肢骨格筋指数(LSMI)を用いた。サルコペニア基準に基づいてSMIが男性<7.0/m2、女性<5.7kg/m2以下に該当した者を低筋量とした。下肢筋量非対称性は、先行研究に準じて左右LSMIの絶対差割合として算出し、第三四分位以上をHigh-asymmetry(HA群)、その他をNormal群(N群)と定義した。統計解析は、歩行速度を目的変数とした線形回帰モデルを用いて、交絡因子(年齢・性別・BMI・低筋量・LSMI・握力・ADL・下肢痛・併存疾患・内服薬数)で調整したHA群の独立した関連を調査した。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
全体の下肢筋量非対称性は2.0±2.1%であった。第三四分位数(2.4%)以上に該当したHA群は34名、Normal群は105名であった。線形回帰モデルの結果、交絡因子調整後もHA群は歩行速度に独立して関連した(標準β: -0.3, 標準誤差: 0.02, t値: -3.3, p<0.01)。
【結論】
下肢筋量非対称性は歩行速度に独立して関連した。したがって、四肢および下肢の総筋量に関わらず、非対称性が存在する場合は歩行速度低下につながることが示唆された。本研究結果は、地域在住高齢者に対する筋量評価の新たな視点となり、非対称性を考慮した個別運動プログラム構築の一助となり得る。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施され、佐賀大学医学部倫理委員会にて承認を得て実施した.なお、対象者には事前に研究内容を十分に説明し、書面および口頭にて同意を得た上で実施した.
歩行速度は、転倒・認知症・死亡リスクに関連し、高齢者における最も一般的な身体機能評価である。歩行速度は加齢に伴い低下し、その主要因子として筋力低下が密接に関わっている。そのような中、近年は下肢筋力の非対称性が歩行速度や転倒に独立して関連することが報告されている。一方、加齢による筋力低下と共に筋量損失も生じると考えられているが、筋量は四肢の合計量が指標として用いられることが一般的であり、これまで筋量の非対称性に着目した先行研究は限られている。したがって、本研究目的は地域在住高齢者における下肢筋量非対称の存在と歩行速度への影響について調査することであった。
【方法】
地域在住自立高齢者139名を横断的に調査した。自立歩行不可、重度な並存疾患、ペースメーカー利用者、認知機能低下により測定実施困難であった例は解析から除外した。評価項目は、基礎情報、内服数、並存疾患、下肢痛、ADL、握力、5m通常歩行速度、骨格筋量(測定機器:Inbody430)を調査した。骨格筋量は、四肢筋量と下肢筋量それぞれを身長で補正した四肢骨格筋指数(SMI)および下肢骨格筋指数(LSMI)を用いた。サルコペニア基準に基づいてSMIが男性<7.0/m2、女性<5.7kg/m2以下に該当した者を低筋量とした。下肢筋量非対称性は、先行研究に準じて左右LSMIの絶対差割合として算出し、第三四分位以上をHigh-asymmetry(HA群)、その他をNormal群(N群)と定義した。統計解析は、歩行速度を目的変数とした線形回帰モデルを用いて、交絡因子(年齢・性別・BMI・低筋量・LSMI・握力・ADL・下肢痛・併存疾患・内服薬数)で調整したHA群の独立した関連を調査した。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
全体の下肢筋量非対称性は2.0±2.1%であった。第三四分位数(2.4%)以上に該当したHA群は34名、Normal群は105名であった。線形回帰モデルの結果、交絡因子調整後もHA群は歩行速度に独立して関連した(標準β: -0.3, 標準誤差: 0.02, t値: -3.3, p<0.01)。
【結論】
下肢筋量非対称性は歩行速度に独立して関連した。したがって、四肢および下肢の総筋量に関わらず、非対称性が存在する場合は歩行速度低下につながることが示唆された。本研究結果は、地域在住高齢者に対する筋量評価の新たな視点となり、非対称性を考慮した個別運動プログラム構築の一助となり得る。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施され、佐賀大学医学部倫理委員会にて承認を得て実施した.なお、対象者には事前に研究内容を十分に説明し、書面および口頭にて同意を得た上で実施した.