第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

一般口述

老年学3

[O] 一般口述5

Sat. Dec 14, 2019 3:20 PM - 4:20 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:松本 大輔(畿央大学 健康科学部理学療法学科)

[O-028] 地域在住高齢者における要介護度間での背部筋の筋量、立位姿勢アライメント、下肢筋力および認知機能の比較

*杉野 綾香1、平川 みな子2、真野 航希1、齋藤 敬子1、安本 大吾3、大原 靖史3、小澤 正直3、谷内 裕樹3、恩田 有生3、正木 光裕1,4 (1. 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部、2. 天理よろづ相談所病院リハビリセンター、3. 京都市修徳老人デイサービスセンター、4. 新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所)

Keywords:高齢者、要介護度、背部筋

【はじめに・目的】
高齢者は加齢によって背部筋の筋量減少や立位姿勢アライメントの変化といった体幹の運動機能に低下が生じる。加齢によって膝関節伸展筋力といった下肢の運動機能や認知機能にも低下が生じる。また、地域在住高齢者において、介護保険の要介護状態には膝関節伸展筋力 (Nakatani T, 2004) 、Mini-Mental State Examination (MMSE) 点数 (Fujiwara K, 2006) が関連していることが報告されている。しかし、介護保険の要介護度間 (健常高齢者、要支援高齢者、要介護高齢者) で背部筋の筋量、立位姿勢アライメント、下肢筋力、認知機能にどのような違いがあるかは明らかにされていない。
本研究の目的は地域在住高齢者を対象に、介護保険の要介護度に基づいて群分けした上で、超音波画像診断装置にて評価した背部筋の筋量、立位姿勢アライメント、下肢筋力および認知機能を群間比較することとした。
【方法】
地域在住高齢者105名 (年齢85.0±6.5歳) を対象とし、介護保険の要介護度に基づいて健常群24名、要支援群6名、要介護1群22名、要介護2群32名、要介護3群12名、要介護4・5群9名に群分けした。背部筋の筋量評価として、超音波画像診断装置 (GE Healthcare社製) を使用し、左右の胸部脊柱起立筋、腰部脊柱起立筋、腰部多裂筋、腰方形筋の筋厚を測定した。各筋の筋厚は左右の平均値を算出した。立位姿勢アライメントの評価として、スパイナルマウス (Index社製) を使用し、安静立位での胸椎後彎角度、腰椎前彎角度、仙骨前傾角度を測定した。下肢筋力の評価として、徒手筋力計 (アニマ株式会社製) を使用して右側の膝関節伸展筋力を測定した。また、MMSEを用いて認知機能を点数化した。
統計解析は、背部筋の筋厚、立位姿勢アライメント、膝関節伸展筋力、MMSE点数において、一元配置分散分析の後、Bonferroni法による多重比較を用いて群間で比較した。
【結果】
多重比較の結果、胸部脊柱起立筋の筋厚は健常群よりもその他の全ての群において有意に減少し、腰方形筋の筋厚は健常群よりも要支援群、要介護1群、要介護2群、要介護3群で有意に増加した。安静立位での腰椎前彎角度は健常群よりも要介護1群、要介護2群、要介護3群、要介護4・5群で有意に減少し、仙骨前傾角度は健常群、要支援群よりも要介護4・5群で有意に減少した。下肢筋力は健常群よりもその他の全ての群において有意に低下した。MMSE点数は健常群よりも要介護1群、要介護2群、要介護3群で有意に低下し、要支援群よりも要介護2群、要介護3群で有意に低下した。その他の項目には有意な差はみられなかった。
【結論】
地域在住高齢者において、要介護度が高くなるほど胸部脊柱起立筋の筋量は減少することが示唆された。要介護度が高くなるほど腰方形筋の筋量は逆に増加するため、代償的に使用している可能性がある。また、立位姿勢アライメント、下肢筋力、認知機能にも低下が生じるが、その低下傾向は各機能において異なることが示された。

【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には研究内容についての説明を十分に行い、書面にて同意を得た。なお、本研究は本学における倫理委員会の承認を得て実施した。