[O-029] 地域在住自立高齢者における他者との交流形態の違いが身体機能に及ぼす影響の検討
Keywords:地域在住高齢者、ソーシャルネットワーク、身体機能
【はじめに・目的】
高齢者において,他者との交流などを意味するソーシャルネットワークは生活機能に影響を与える要因である.先行研究では,他者との交流形態の違いによって生活機能に与える影響が異なることが示唆されている.しかし,他者との交流形態と高齢者の健康との関連性は十分に解明されていない部分が多い.そこで本研究の目的は,地域在住自立高齢者において,他者との交流形態の違いに着目して,身体機能との関連を検証することとした.
【方法】
要介護認定を受けていない65歳以上の地域在住高齢者339名(73.0 ± 4.8歳,女性238名)を対象とした.他者との交流の評価は,先行研究(斉藤,他.2015)に基づいて,別居の家族や親戚および友人との1か月間の交流頻度を調査した.また,本研究では,他者との交流形態の違いに着目し,交流頻度を直接会う頻度(対面交流頻度)と手紙・電話・メールなどで連絡を取る頻度(非対面交流頻度)の2種類に分けて調査・分析をおこなった.交流頻度は,「ほとんど毎日」から「家族や親戚,友人はいない」までの7件法で調査し,得られた回答から先行研究(斉藤,他.2015)の方法に従って,1か月の交流回数に換算して統計解析に用いた.身体機能として,快適および最速の5m歩行速度,Timed Up and Go ( TUG ),握力,Chair Stand Test ( CST ),膝伸展筋力を測定した.交絡要因として,年齢,性別,Body Mass Index,合併症,服薬状況,老研式活動能力指標,主観的健康観,抑うつの有無を調査した.統計学的解析は,各身体機能を従属変数とし,対面交流頻度または非対面交流頻度を独立変数,交絡要因を調整変数とする一般線形モデルにて解析した.統計学的有意水準は5%とした.
【結果】
対面交流頻度および非対面交流頻度の平均はそれぞれ12.9±9.3回/月,12.5±10.7回/月で,両者の相関関係は中等度であった(rs=0.4, p<0.01).統計解析の結果,交絡要因で調整しても,対面交流頻度では,CSTのみが有意な負の関連を示した(p=0.016, R2=0.16).一方,非対面交流頻度ではCST(p=0.030, R2=0.15)およびTUG(p=0.038, R2=0.33)が有意な負の関連を示した.
【結論】
対面交流頻度と非対面交流頻度との間に高い相関関係はなく,両者は互いに独立したものであると考えられた.一方で,対面交流頻度と非対面交流頻度は,いずれも身体機能と関連することが示され,他者との交流形態の違いは身体機能との関連性に対しては大きな差異がないと考えられた.従って,他者との交流という観点では,交流の形態に関わらず他者との繋がりを保てるように支援することが身体機能維持にも繋がりうる可能性が示唆された.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号2016-G021B).また,本研究の対象者には書面および口頭にて研究目的および内容について説明し,研究協力については書面による同意を得た.
高齢者において,他者との交流などを意味するソーシャルネットワークは生活機能に影響を与える要因である.先行研究では,他者との交流形態の違いによって生活機能に与える影響が異なることが示唆されている.しかし,他者との交流形態と高齢者の健康との関連性は十分に解明されていない部分が多い.そこで本研究の目的は,地域在住自立高齢者において,他者との交流形態の違いに着目して,身体機能との関連を検証することとした.
【方法】
要介護認定を受けていない65歳以上の地域在住高齢者339名(73.0 ± 4.8歳,女性238名)を対象とした.他者との交流の評価は,先行研究(斉藤,他.2015)に基づいて,別居の家族や親戚および友人との1か月間の交流頻度を調査した.また,本研究では,他者との交流形態の違いに着目し,交流頻度を直接会う頻度(対面交流頻度)と手紙・電話・メールなどで連絡を取る頻度(非対面交流頻度)の2種類に分けて調査・分析をおこなった.交流頻度は,「ほとんど毎日」から「家族や親戚,友人はいない」までの7件法で調査し,得られた回答から先行研究(斉藤,他.2015)の方法に従って,1か月の交流回数に換算して統計解析に用いた.身体機能として,快適および最速の5m歩行速度,Timed Up and Go ( TUG ),握力,Chair Stand Test ( CST ),膝伸展筋力を測定した.交絡要因として,年齢,性別,Body Mass Index,合併症,服薬状況,老研式活動能力指標,主観的健康観,抑うつの有無を調査した.統計学的解析は,各身体機能を従属変数とし,対面交流頻度または非対面交流頻度を独立変数,交絡要因を調整変数とする一般線形モデルにて解析した.統計学的有意水準は5%とした.
【結果】
対面交流頻度および非対面交流頻度の平均はそれぞれ12.9±9.3回/月,12.5±10.7回/月で,両者の相関関係は中等度であった(rs=0.4, p<0.01).統計解析の結果,交絡要因で調整しても,対面交流頻度では,CSTのみが有意な負の関連を示した(p=0.016, R2=0.16).一方,非対面交流頻度ではCST(p=0.030, R2=0.15)およびTUG(p=0.038, R2=0.33)が有意な負の関連を示した.
【結論】
対面交流頻度と非対面交流頻度との間に高い相関関係はなく,両者は互いに独立したものであると考えられた.一方で,対面交流頻度と非対面交流頻度は,いずれも身体機能と関連することが示され,他者との交流形態の違いは身体機能との関連性に対しては大きな差異がないと考えられた.従って,他者との交流という観点では,交流の形態に関わらず他者との繋がりを保てるように支援することが身体機能維持にも繋がりうる可能性が示唆された.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号2016-G021B).また,本研究の対象者には書面および口頭にて研究目的および内容について説明し,研究協力については書面による同意を得た.