第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

老年学3

[O] 一般口述5

Sat. Dec 14, 2019 3:20 PM - 4:20 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:松本 大輔(畿央大学 健康科学部理学療法学科)

[O-030] 高齢女性の両下肢細胞内液比は四肢骨格筋量よりもフレイルや身体機能と関連する

*桑原 嵩幸1、脇田 正徳1、山崎 志信1、齋藤 優季1、森 公彦2、河合 謹也1、沖塩 尚孝1、長谷 公隆1 (1. 関西医科大学香里病院リハビリテーション科、2. 関西医科大学附属病院リハビリテーション科)

Keywords:高齢者、フレイル、細胞内液比

【はじめに・目的】
高齢者の健康問題としてフレイルは重要な指標であり、筋量の低下はフレイルの主な構成要素の一つである。一方、近年高齢者の筋機能においては、量的因子だけでなく質的因子も重要とされている。生体電気インピーダンス(BIA)法で測定される四肢の細胞内液量(ICW)は筋の収縮組織量を表すとされ、下肢の総水分量(TBW)に占めるICWが表す下肢の細胞内液比(ICW/TBW)は、下肢筋内の収縮組織を反映する質的指標の一つとされている。近年BIA法によって得られる筋量では、筋の非収縮組織量も含まれるため筋の収縮機能を過大評価する可能性が指摘されている(山田,2015)。また、高齢者の筋の量と質は独立して筋力と関連する因子であると報告されている(Yamada,2010)。したがって、高齢者の筋機能を他の指標との関連性において検討する場合、筋の量的および質的指標を個別に評価することが必要と考えられる。しかし高齢者において両者を個別に評価し、フレイルとの関連を検討した報告は見当たらない。したがって、本研究の目的は地域在住高齢者における骨格筋の量的指標、質的指標と、フレイルおよび身体機能との関連性を明らかにすることである。

【方法】
対象は当院通所リハビリテーションを利用中の高齢女性29名(年齢:77.0±9.4歳)とした。BIA法による四肢骨格筋量(SMI)と両下肢ICW/TBWの測定は、Inbody S10(インボディ・ジャパン社製)を使用した。フレイルスコアには基本チェックリスト(KCL)を用いた。身体機能として膝関節伸展筋力、Berg Balance Scale、快適歩行速度、6分間歩行距離を測定した。統計解析は、骨格筋指標(SMI、両下肢ICW/TBW)とKCL、身体機能との関連をPearson積率相関係数、Spearman順位相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
SMIはKCLおよび身体機能のいずれの指標とも有意な関連を認めなかった。一方、両下肢ICW/TBWはKCLと有意な負の相関を認め(r=-0.46)、膝関節伸展筋力(r=0.56)、Berg Balance Scale (r=0.42)、快適歩行速度(r=0.47)、6分間歩行距離(r=0.54)とも有意な関連を認めた。なお、SMIと両下肢ICW/TBWに有意な関連は認めなかった(p=0.15)。

【結論】
地域在住高齢女性のフレイルおよび身体機能の改善には、下肢筋の質的指標を高めることが重要であると示唆された。本研究では対象者が少ないため今後の検討が必要であるが、SMIによる筋量評価では、筋の非収縮組織量が含まれるため、見かけ上筋量が維持されている可能性があり、フレイルや身体機能と関連を認めなかったと考えられる。そのため、筋の収縮機能を反映するICW/TBWがフレイルや身体機能との関連性を認めたと推察された。近年、筋力増強運動によってICWも増加するとの報告が見受けられる(Canha,2018)。筋力増強運動は筋の質的改善にも有効な可能性があるため、今後フレイルや身体機能に及ぼす影響を縦断的に検討する必要がある。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は、当院の研究倫理委員会の承認を受けて実施した。また、個人情報の保護に十分配慮して実施した。