第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

社会参加

[O] 一般口述6

Sat. Dec 14, 2019 3:20 PM - 4:20 PM Room3 (East Building 2nd floor, Middle Conference Room)

座長:細井 俊希(埼玉医科大学 保健医療学部理学療法学科)

[O-036] 第6頸椎損傷者の大学入学後の学生生活を支援したことから得られた経験

*小野 雅之1,2、新井 健司1,2,3、井ノ上 成美1,2、高橋 房子1,2、出澤 健一郎1,2、大森 豊1,2,3 (1. 株式会社 かわさきハートネット、2. 川崎市中部リハビリテーションセンター 井田障害者センター 在宅支援室、3. 訪問看護リハビリテーション麻生)

Keywords:大学生活、アウトリーチ、個別支援

【はじめに】
川崎市中部リハビリテーションセンター(以下当センター)は、地域包括ケアの視点に立ち、障害の有無や種別、年齢等に関わらず、専門的かつ総合的支援を行う機関である。これらは地域リハビリテーションの理念に基づいた在宅支援型のアウトリーチによる個別支援と地域力の向上を推進することを目的として運営されている。今回、発達障害を有し大学での就学継続の問題が予測される第6頸椎損傷者に対してアウトリーチを主体とした支援を行った。
【対象】
対象者は小学生で発達障害を指摘され、摂食障害や不登校となった10代後半の男性である。他県の全寮制の定時制高校に進学し、2年時に遊びでプールに飛び込んだ際に第6頸椎を損傷した。受傷後は入院加療を約10ヵ月行い、現在は完全四肢麻痺と膀胱直腸障害を呈している。母親や友人の協力を得て高校を卒業し、現在は大学進学のために実家に帰省している。4月から大学生活を始めるにあたり、学生生活を継続できるようにしてほしいという依頼があった。当センターでは相談員と理学療法士、作業療法士が情報収集の基に支援を行った。
【経過】当初、対象者に困っていることを質問しても具体的な返答は得られなかった。母親も含めたサポートが行き届いているため、対象者が困る経験が少ないことが予測された。そのため就学前の3月から大学に同行し、体験の中から困る可能性がある事柄を確認していった。大学側に協力体制があり、保健室や事務部の職員が支援方法に関して協力的に関与していただけた。対象者は筆記が困難であったが、作業療法士がスマートフォンの固定台を作成し講義内容を静止画撮影することで筆記の問題が解決できた。また当初支給していた自走式の車いすでは通学が困難であることが分かり、電動アシスト付き車いすの支給をすることになった。また講義の受講時に座席の配慮を行うことや試験時の対応についても検討出来た。膀胱直腸障害に関しては、バルーンを使用して自己管理が行えることが確認された。また摂食障害の既往があり、昼食に関しては特にご家族が心配されているようであった。水分に関しては腎機能を維持するためにも適切な摂取が必要であることから事前にそれらに関する助言が行えた。現在は、通学も継続できており、専門性の高い支援のニーズが収まったことから介入を終了している。
【考察】 対象者のこれまでの経緯から考えて困難なことに対して解決する能力が必ずしも高くないことが予測された。その反面、友人なども含めた環境になじむことが出来れば高校生活のように過ごせることも判っている。そのため大学生活の問題点を明確にして、その解決方法を対象者、大学職員とともに解決していくことが重要と考えた。今後は、活動範囲を広げより積極的に大学生として自立した生活ができるように、継続してスポット介入する予定である。

【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、本人と家族に文書にて説明し同意を得た。