第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

一般口述

病院・施設

[O] 一般口述9

2019年12月14日(土) 17:40 〜 18:40 第3会場 (東館2階 中会議室)

座長:大垣 昌之(社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院 リハ技術部)

[O-049] 家族の“介助効力感”と患者の生活機能との関連

*上月 渉1,2、樋口 由美1、上田 哲也1、安藤 卓1、北川 智美1、藤堂 恵美子1、畑中 良太1、村上 達典1、永井 麻衣1、北村 綾子1 (1. 大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科、2. 帝塚山リハビリテーション病院)

キーワード:家族、生活機能、介助効力感

【はじめに、目的】
退院後の患者への身体的な介助がどの程度必要なのかという家族の不安は、在宅復帰を阻む要因の1つとされる。既存の介護負担感尺度は、実際に介護を行っている状況下を評価し得るものの、退院後に経験するであろう「これからの」身体介護への不安や自信を評価する尺度はない。そこで我々は、入院患者の家族が抱く身体的な介助に対する自己効力感を “介助効力感”と定義し、評価を試みた。入院患者の身体機能や生活機能の回復を患者家族が実感し、家族の介助効力感が向上すれば、退院後の不安が緩和されて自宅への退院が促通される可能性がある。本研究では、家族の介助効力感と患者の生活機能との関連について調査することを目的とした。
【方法】
対象は、2018年11月から2019年4月の間にA回復期病院へ入院した患者とその同居家族、22組(患者:年齢82.2±8.4歳、家族:67.6±15.3歳、在院日数:55.6±23.5日)であった。独居の患者、入院前に施設入所していた患者は除外した。患者と家族の基本属性は診療録およびアンケートにて収集した。患者の生活機能はFunctional Independence Measure (FIM)、家族の介助効力感はオリジナルの調査票(調査票の信頼性ICC(1、2)=0.99)を用いて、それぞれ入院時・退院時に評価した。介助効力感の調査票は、ベッド周囲動作4項目とFIM運動項目11項目(身体的な介助を要する動作)から構成される全15項目で、回答方法は5件法のリッカートスケールを用いた(15~75点(最良値))。統計解析は、家族の介助効力感と患者の生活機能との関係を明らかにするために、入院時・退院時のそれぞれの値を用いてSpearmanの順位相関分析を行い、有意水準は5%未満とした。
【結果】
家族の介助効力感は入院時44.0±17.5点から、退院時51.7±18.2点へ向上した。患者のFIM運動項目、認知項目の得点はそれぞれ入院時44.9±17.4点、24.7±8.7点から、退院時70.2±16.3点、28.3±6.9点へ改善した。家族の介助効力感と患者のFIM運動項目、認知項目との相関分析を行った結果、入院時はそれぞれr=0.20(p=0.38)、r=0.31(p=0.16)を示し有意な関連性は認めなかった。一方、退院時はそれぞれr=0.43(p<0.05)、r=0.56(p<0.05)の中等度の有意な相関関係を認めた。
【結論】
入院時においては、家族の介助効力感と患者の生活機能に関連性は低いものの、退院時では関連性が強まることが示された。家族は入院期間を通じて患者の生活機能を把握し、その生活機能に応じた介助効力感を獲得した可能性が示唆される。今後は、この変化に関与する要因について検討していく必要がある。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は、大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科の研究倫理委員会の承認(2018-104)を得て実施した。また、全対象者(患者、家族)には口頭や紙面にて説明を行い、同意を得た。