第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

病院・施設

[O] 一般口述9

Sat. Dec 14, 2019 5:40 PM - 6:40 PM Room3 (East Building 2nd floor, Middle Conference Room)

座長:大垣 昌之(社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院 リハ技術部)

[O-050] 外来軽症パーキンソン病患者における運動療法前後のQOL変化には非運動症状が関連する

*松田 理佐子1、鈴木 良和1、上出 直人2、川端 良治1、柴 喜崇2、平賀 よしみ1、永井 真貴子3、西山 和利3、福田 倫也1,2,4 (1. 北里大学東病院リハビリテーション部、2. 北里大学医療衛生学部、3. 北里大学医学部脳神経内科学、4. 北里大学東病院リハビリテーション科)

Keywords:パーキンソン病、生活の質、非運動症状

【目的】
パーキンソン病(PD)患者に対する運動療法は,軽症PD患者の運動症状の改善やQuality of life(QOL)の向上について有効である(PD診療ガイドライン2018).しかし,運動療法実施前後でQOLが向上しない症例を臨床上経験することも多く,このような症例の特徴は明らかとなっていない.そのため本研究の目的は,外来通院中の軽症PD患者に対する運動療法実施前後でQOLが改善しない症例の特徴を明らかにすることとした.
【方法】
対象は,当院脳神経内科,リハビリテーション科に通院し,理学療法依頼のあったHoehn&Yahr分類StageⅠ~Ⅲの軽症PD患者.理学療法では,1回/2週,1時間の運動療法・運動指導を3~6ヶ月間実施した.運動療法実施に際し,開始時・終了時にPD症状,身体機能,QOLの評価を行った.PD症状指標としてMovement Disorder Society-Sponsored Revision of the Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(MDS-UPDRS),身体機能指標として10m快適歩行時間,Timed-Up and Go Test (TUG),等尺性膝伸展筋力,QOL指標としてParkinson’s disease questionnaire(PDQ-39)を評価した.MDS-UPDRSは高得点ほどPD症状が強く,PDQ-39は高得点ほどQOLが低いことを示す.運動療法前後でのPDQ-39の得点が改善した症例をQOL改善群、得点が不変または増悪した症例を非改善群へ分けた.運動療法前後でのPD症状,身体機能について変化量(変化量=介入後-介入前)を算出し,QOL改善群と非改善群との群間差についてstudent t検定を用い検討した.統計解析にはEZRを使用し,有意水準は5%とした.
【結果】
対象は,PD患者21名(年齢:71.9±5.4歳,性別:男性8名,Hoehn&Yahr分類Ⅰ6名,Ⅱ12名,Ⅲ3名)であった.QOL改善群は14名,QOL非改善群は7名であった.QOL改善群と非改善群における身体機能の変化量の差は,10m快適歩行時間,TUG,等尺性膝伸展筋力で統計的有意差を認めなかった.QOL改善群と非改善群におけるPD症状の変化量の差は,MDS-UPDRS PartⅠで1.3±2.7点,-1.8±3.0点(P<0.05)と有意な差を認めた一方で,PartⅡ,PartⅢ,PartⅣでは差を認めなかった.
【結論】
QOL改善群と非改善群では,非運動症状のみに有意差を認めた.つまり,QOLが改善されなかった症例群において非運動症状の進行を認めた.PDQ-39やMDS-UPDRS PartⅠは主観的評価であり,MDS-UPDRS PartⅡ~Ⅳや身体機能といった客観的評価よりも強く関連した可能性がある.運動症状の軽度なPD患者に対して外来で理学療法介入を行う際には,客観的な身体機能向上を目的とした介入のみではなく,主観的な症状や身体能力の自己認識などに対する介入が効果的な支援につながる可能性がある.地域で生活を送る軽症PD患者が,QOLを維持・向上し地域でいきいきと暮らせるようにするために,非運動症状に対する評価を適切に行い,薬物療法を含めた包括的支援のために医師との連携を密にすることが重要であると考えられた.

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は当院病院倫理委員会の承認を得て実施した(B18-045).本研究に使用されたデータは通常診療情報を後方視的に調査したものであり,二次利用に際して匿名化し個人情報保護に努めた.研究実施についてはオプトアプトを用い,診療情報の二次利用についての拒否の機会を与えた.