第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

一般口述

病院・施設

[O] 一般口述9

Sat. Dec 14, 2019 5:40 PM - 6:40 PM Room3 (East Building 2nd floor, Middle Conference Room)

座長:大垣 昌之(社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院 リハ技術部)

[O-054] 回復期リハビリテーション病院からの退院先を決定する因子

*高田 優輝1、石橋 直樹1、鈴木 雄太1,2、吉田 康兵1、浦辺 幸夫2、白川 泰山1 (1. マッターホルンリハビリテーション病院、2. 広島大学大学院医系科学研究科)

Keywords:施設退院、回復期リハビリテーション病院、自宅退院

【はじめに・目的】
当院の所在する広島県呉市は,高齢化率が33.6%であり,人口15万人以上の都市で最も高い.地勢としては,平地が少なく,傾斜地が多いという特徴がある.筆者らは,傾斜地に自宅がある場合,自宅退院には高い歩行能力が求められ,島嶼部への自宅退院には,日常生活動作の自立が不可欠であることを示した(鈴木ら2015,石橋ら2019).しかし,これらは対象の年齢による要因を十分に考慮していなかった.回復期病棟からの自宅退院には,年齢の関与が大きく(濱田ら2007),呉市のような地理的特徴をもち,高齢化が進行している地域では,年齢の違いにより自宅退院に必要な要因が異なる可能性がある.本研究の目的は,対象の年齢により自宅退院先に影響する因子が異なるかを確認し,術後リハビリテーションの一助とすることである.

【方法】
対象は,過去3年6ヶ月の間に当院回復期病棟を退院した,下肢に整形外科疾患を有する75歳以上の患者147名(男性23名,女性124名)とした.対象の年齢,10m歩行時間,6分間歩行距離,HDS-R,FIMの運動項目(以下Motor FIM),独居率などを調査した.退院先は自宅または施設とし,それぞれ75歳以上85歳未満の高齢群と,85歳以上の超高齢群に分類した.統計学的解析は,二元配置分散分析およびTukeyの多重比較検定を行い,独居率にはFisherの正確検定を用いた.各群について退院先を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.いずれも有意水準5%とした.

【結果】
高齢群および超高齢群の自宅退院率はそれぞれ89.7%,56.6%であった.高齢群の自宅退院者と施設退院者の比較では,10m歩行時間がそれぞれ14.1±9.9秒,16.4±6.6秒, Motor FIMがそれぞれ80.0±9.8点,55.0±25.1点であり,ともに自宅群で高かった(p<0.01).その他の項目に退院先間での有意差はなく,ロジスティックス回帰分析で自宅退院に関連する項目なかった.超高齢群では,全ての項目が自宅退院者で高かった(p<0.05).独居率は,自宅退院者で17.6%,施設退院者で76.3%であり,施設退院者で高かった (p<0.01).ロジスティック回帰分析において,自宅退院に有意に関連する項目としてHDS-R(OR:0.91,95%CI:0.83-0.99),Motor FIM(0.89,0.81-0.98)が選択された.

【結論】
高齢群では,自宅退院者で歩行能力やADL能力が高かったが,自宅退院を予測する項目は抽出されず,自宅退院には身体機能などの要因以外の社会的要因の関与が大きい可能性がある.一方で,超高齢者では,介護者がいることや,認知機能が維持できており,ADL能力を獲得できた者が自宅退院に有利である可能性が示唆された.

【倫理的配慮、説明と同意】
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はマッターホルンリハビリテーション病院倫理審査委員会の承認を得て実施した(MRH180011)