第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

一般口述

訪問・通所2

[O] 一般口述10

2019年12月15日(日) 09:30 〜 10:30 第2会場 (東館2階 セミナー室)

座長:平野 康之(東都大学 幕張ヒューマンケア学部 理学療法学科)

[O-057] 訪問リハビリテーション利用者の社会参加に関わる要因について

*瀬尾 津雲1、工藤 悠平1、十鳥 献司1、中原 義人1 (1. 社会医療法人慈恵会聖ヶ丘病院)

キーワード:生活空間、転倒恐怖感、社会的孤立

【はじめに・目的】訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)の目的は、利用者の生活の場に赴いて、日常生活の自立と家庭内の役割、さらには社会参加の向上を図ることが目的とされている。中村らは虚弱高齢者は生活空間が狭くなりつつある現状で、外出頻度が少なく閉じこもり傾向であると報告しているが、当事業所の利用者においても例外では無い。今回、当事業所の訪問リハ利用者の社会参加に関わる実態を調査し、検討したので報告する。

【方法】対象は平成30年11月30日現在、当事業所訪問リハ利用者10名。(男性3名、女性7名、年齢82.6±5.4歳)。介護度は要支援1:1名、要支援2:1名、要介護1:6名、要介護2:2名。調査項目として日常生活動作の自立度を評価する①Functional Independence Measure(以下、FIM)、生活の空間的な広がりを評価する②Life Space Assessment(以下、LSA)、高齢者の社会的孤立度を評価する③Lubben social network scale短縮版(以下、LSNS)、転倒恐怖感の評価として④日本語版Fall efficacy scale(以下、FES)、⑤同居家族、⑥友人交流、⑦家庭内役割、⑧趣味、⑨地域活動の有無を調査し、LSAの平均値(25.2点)を基に高値群、低値群に分けてt検定、χ²検定を用いて比較検討した(P<0.05)。更に全対象者のLSAとFIM、LSAとFESをピアソンの相関係数を用いて検討した。
【結果】FIMの平均値はLSA高値群116.0点、低値群91.7点であり高値群が有意に高かった。FESの平均値はLSA高値群28.3点、低値群23.0点で高値群が有意に高かった。⑤~⑨はいずれも有意な差は認められなかったが、LSA低値群は⑥友人交流、⑦家庭内役割、⑧趣味、⑨地域活動の有無のいずれにおいても高値群より低い割合となった。相関係数はLSAとFIMはr=0.73、LSAとFESがr=0.81と有意な正の相関が認められた。
【考察 結論】生活空間の広がりには日常生活自立度、転倒恐怖感が関連する事が示唆された。訪問リハにおいて上記にアプローチする事は生活空間の拡大や社会参加に有意義に寄与すると考える。更に友人交流や趣味、地域活動、家庭内役割の獲得を目標とすることでより社会参加の拡大に繋がる事が考えられる。今後は利用者やケアマネジャー、PT、OT、ST、近隣住民などの協力体制をより密に行っていくことで、利用者の社会参加の一助となる事が考えられる。FIM得点が高いにも関わらず、LSAやLSNSが低値の利用者は自宅内生活の自立度が高くとも、生活空間が狭く、社会的に孤立している可能性が示唆された。訪問リハ利用者の多くは活動範囲が自宅周囲に留まり、知人との交流機会が減少し、更に外出や地域活動への関心、意欲が低下していることが予想され、生活の質が低下していることが考えられる。今後は利用者の自宅内生活のみならず、屋外での活動にも注意を向け、利用者の現在の生活がどれだけ充実しているかについても調査検討し、社会参加促進の一助としていきたい。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき当院倫理委員会の承諾と、個人情報が特定されないように個人情報の保護、プライバシーの保護に配慮する旨を対象者及び家族に説明し了承を得た。