第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

訪問・通所3

[O] 一般口述12

Sun. Dec 15, 2019 1:40 PM - 2:40 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:滝本 幸治(奈良学園大学 保健医療学部リハビリテーション学科)

[O-070] 地域在住脳卒中者における歩行時の苦痛に関する調査
―身体機能・心理機能との関連―

*小野 香織1、伊藤 一成1、稲田 亨1 (1. 旭川リハビリテーション病院)

Keywords:地域在住脳卒中者、歩行、苦痛

【はじめに・目的】
地域在住脳卒中者から「歩行が楽に行えない」といった訴えを受けることがある。先行研究では、地域在住高齢者において歩行時に何らかの苦痛を感じていることが報告されている。地域在住脳卒中者の歩行に関する研究では、歩行速度や耐久性、生活空間の拡がりなどの報告は多いが、歩行時の苦痛に着目した報告は検索した限りない。そのため、本研究の目的は地域在住脳卒中者における歩行時の苦痛に関する実態、そして、苦痛と身体および心理機能との関連を調査することとした。
【方法】
対象は屋内歩行が自立している当院外来リハビリテーションに通う地域在住脳卒中者20名(年齢61.5±10.8歳、発症後104.0±64.2ヶ月)とした。測定は、歩行時の苦痛、身体機能検査、心理機能検査を実施した。歩行時の苦痛は、内山の安楽性の定義より、苦痛を身体的苦痛(痛み、息切れ、動悸)と精神的苦痛(緊張、不安)に分類し、Visual Analogue Scale(以下VAS、0mm:全く苦痛を感じない、100mm:非常に苦痛を感じる)でそれぞれ聴取した。身体機能検査は、歩行速度(快適・最大)試験、Timed Up and Go Test(快適・最大)、6分間歩行距離を行った。心理機能検査は、歩行関連自己効力感(modified Gait Efficacy Scale:mGES)、転倒関連自己効力感(Modified Fall Efficacy Scale:MFES)、老年期うつ病評価を行った。統計学的解析は、まず身体的・精神的苦痛それぞれの中央値、四分位を算出した。そして、身体的・精神的苦痛それぞれと身体機能検査、心理機能検査の項目についてSpearmanの順位相関係数を算出した。有意水準は5%とした。
【結果】
身体的苦痛のVASは26(0-53)mmであった。精神的苦痛のVASは17(6-47)mmであった。全く苦痛を感じない0mmの対象者は身体的苦痛で6名、精神的苦痛で3名であった。身体的・精神的苦痛と身体および心理機能との関連では、身体的苦痛は身体機能と有意な相関は認めず、心理機能とはmGES(r=-0.60)、MFES(r=-0.57)に有意な負の相関を認めた。精神的苦痛も身体機能と有意な相関は認めず、心理機能とはmGES (r=-0.76)、MFES (r=-0.62)に有意な負の相関を認めた。
【結論】
対象者の7割が身体的苦痛を感じ、約8割が精神的苦痛を感じていることから、地域在住高齢者のみならず、地域在住脳卒中者においても歩行時の苦痛があることが明らかとなった。この身体的・精神的苦痛は歩行や転倒の自己効力感と関連する一方で、歩行速度やバランス能力、耐久性といった歩行能力やうつとは関連しない可能性が示された。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は当院倫理審査委員会の承認を得て実施し、対象者には研究に関して研究説明書にて十分な説明を行い、研究協力同意書に署名する形で同意を得た上で調査を実施した。なお、本研究はヘルシンキ宣言に則り実施した。