第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

訪問・通所3

[O] 一般口述12

Sun. Dec 15, 2019 1:40 PM - 2:40 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:滝本 幸治(奈良学園大学 保健医療学部リハビリテーション学科)

[O-072] 医薬品包装の開封動作と書字動作及び認知機能との関係

*松本 将1、内田 全城2 (1. 株式会社元気広場、2. 常葉大学)

Keywords:服薬支援、開封動作、ピンチ力

【はじめに・目的】
在宅高齢者における服薬遵守状況は不良とされ、自立した在宅生活の阻害因子の1つとされている。当介護予防・通所介護施設においても医薬品包装の開封動作に困難感を示す者が多く、同時に書字動作にも困難感を示し書字が不明瞭であることが多い。医薬品包装の開封動作と書字動作はどちらも巧緻運動が求められるが、医薬品包装の開封動作における主観的困難感と書字動作の定量的な評価との関連性を示した報告は見られない。以上より本研究は、在宅高齢者における服薬自立を支援する観点から医薬品包装の開封動作と書字動作及び認知機能との関連性を検証し、服薬支援に向けた知見を得ることを目的とした。
【方法】
対象は介護予防・通所介護施設を利用する要支援・要介護者86名(年齢±平均:83.51±5.37歳)とした。検査項目は、医薬品包装の開封動作における困難感の聞き取り調査(顆粒剤医薬品包装(以下、顆粒剤包装)の開封、錠剤医薬品press through package包装(以下、錠剤包装)の開封)と書字認識率、及びMMSEとした。書字認識率にはOCR法を行い、A4用紙に規定文章を書字した後にスキャナーで読み取り、文字解読ソフト(Googleドライブ)を用いて文字を認識し、全文字数を認識した文字数で除して認識率を算出した。規定文章はiPad(Apple社製)に予め録音した音声を被験者に聞かせ、平仮名で書くよう指示した。解析は、医薬品包装の開封動作における困難感の聞き取り調査結果からそれぞれ「困難群」と「非困難群」に分け、書字認識率とMMSEについてMann-Whitney`s U testを用いて群間比較を行った。なお危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
顆粒剤包装の開封動作において、「困難群」と「非困難群」との間には書字認識率とMMSEとの間に有意差はみられなかった(書字認識率:困難群/80.60±23.15%、非困難群/80.08±20.97%、p<.76、MMSE:困難群/26.24±3.03点、非困難群/27.15±2.95点、p<.21)。錠剤包装の開封動作において、「困難群」は「非困難群」に比べ書字認識率とMMSEが有意に低値を示した(書字認識率:困難群/69.81±30.02%、非困難群/84.75±14.65%、p<.03、MMSE:困難群/25.88±3.24点、非困難群/27.32±2.79点、p<.02)。
【結論】
本研究より、錠剤包装の開封動作に困難感を示す者の方が書字認識率とMMSEが有意に低い結果となった。顆粒剤包装に比べ錠剤包装の開封はピンチ力による錠剤の押し出し力が求められる。書字動作においてもピンチ力はペンの把持操作や筆圧に影響を及ぼす事から、錠剤包装の開封に困難感を示した者ほど書字認識率が低くなったと示唆される。また手指巧緻性と認知機能との間には強い相関関係があることが報告されている。以上より、書字動作並びに錠剤包装の開封動作に対しピンチ力という共通した巧緻動作への介入が服薬自立に寄与することが示唆された。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言及び厚生労働省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に基づき対象者の保護には充分留意し、説明文書を用いて充分な説明を行い、患者本人の自由意志による研究参加の同意を文章により取得した。