[O-074] 通所リハビリテーションを利用する要支援認定者の生活空間に影響を及ぼす心理的・身体的・社会的要因の検討
Keywords:重回帰分析、要支援認定者、生活空間
【はじめに】
要支援認定者の要介護状態への移行を予防することが通所リハビリテーションの目的のひとつである。生活空間は活動量の増減を通じて身体機能や日常生活動作(ADL)能力に関連しており,生活空間の狭小化は要介護状態への移行のリスク因子となり得る.これまで生活空間に影響を及ぼす因子が検証されているものの社会的要因での検証のように特定の領域に限られているものも多く,一定の見解が得られているとは言い難い.
そこで生活空間の広がりに及ぼす影響をより多面的に検証するため,本研究では通所リハビリテーションを利用する要支援認定者を対象に,生活空間に関連する因子を心理的・身体的・社会的要因から検証することを目的とした.
【方法】
対象は当院の通所リハビリテーションを利用中の要支援認定者55名のうちMMSE24点未満の者と極度の難聴の者を除いた53名とした.基本属性及び社会的要因として年齢,体重,既往歴,介護度,世帯家族数,1週間の利用回数,利用期間,自動車運転の実施状況,身体機能として握力,障害の有無(関節可動域制限・運動麻痺・感覚障害・嚥下障害・高次脳機能障害・栄養障害・褥瘡・疼痛),10m最大歩行速度,Timed up & Go test(TUG),Functional reach test(FRT),ADL能力としてBarthel Index(BI),心理的要因として主観的健康感(6件法),転倒不安感尺度を調査した.生活空間の評価にはLife-space assessment(LSA)を用いた.
統計学的解析として,まず LSA合計点と各調査項目との関連性をSpearmanの順位相関係数を用いて検証した.次いでLSA合計点を従属変数,LSA合計点と有意な相関関係が認められた項目を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った.有意確率はいずれも5%未満とした.
【結果】
10m最大歩行速度,TUG,FRT,自動車運転の実施状況,転倒不安感尺度の『家の掃除』,『簡単な食事の支度』,『簡単な買い物』,『近所を歩く』の各下位項目及び合計点でLSA合計点との間に有意な相関関係が認められた.これらの項目を独立変数に投入して重回帰分析を行った結果,転倒不安感尺度の『簡単な買い物』,10m最大歩行速度,自動車運転の実施状況が抽出された(調整済みR2=0.46).
【考察】 買い物は日常的な外出の主要な動機であり,それに対する転倒不安感が強いことは外出頻度の減少に繋がることが推測できる.また,10m最大歩行速度は歩行バランス能力を示すほか,屋外の実用的な歩行に必要な能力であり歩行速度が速い者ほど生活空間が広がりやすいものと考えられる.さらに自動車運転を実施している者は,より遠方への外出に有利であることからLSA得点に影響を及ぼしたものと思われる.以上より,生活空間には心理的・身体的・社会的要因が多面的に影響しているものと考えられる.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は当院の倫理審査委員会の承認(第471号)を得て実施され,対象者に対しては書面と口頭で本研究の目的や起こりうる不利益等について説明し,書面にて同意を得た.
要支援認定者の要介護状態への移行を予防することが通所リハビリテーションの目的のひとつである。生活空間は活動量の増減を通じて身体機能や日常生活動作(ADL)能力に関連しており,生活空間の狭小化は要介護状態への移行のリスク因子となり得る.これまで生活空間に影響を及ぼす因子が検証されているものの社会的要因での検証のように特定の領域に限られているものも多く,一定の見解が得られているとは言い難い.
そこで生活空間の広がりに及ぼす影響をより多面的に検証するため,本研究では通所リハビリテーションを利用する要支援認定者を対象に,生活空間に関連する因子を心理的・身体的・社会的要因から検証することを目的とした.
【方法】
対象は当院の通所リハビリテーションを利用中の要支援認定者55名のうちMMSE24点未満の者と極度の難聴の者を除いた53名とした.基本属性及び社会的要因として年齢,体重,既往歴,介護度,世帯家族数,1週間の利用回数,利用期間,自動車運転の実施状況,身体機能として握力,障害の有無(関節可動域制限・運動麻痺・感覚障害・嚥下障害・高次脳機能障害・栄養障害・褥瘡・疼痛),10m最大歩行速度,Timed up & Go test(TUG),Functional reach test(FRT),ADL能力としてBarthel Index(BI),心理的要因として主観的健康感(6件法),転倒不安感尺度を調査した.生活空間の評価にはLife-space assessment(LSA)を用いた.
統計学的解析として,まず LSA合計点と各調査項目との関連性をSpearmanの順位相関係数を用いて検証した.次いでLSA合計点を従属変数,LSA合計点と有意な相関関係が認められた項目を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った.有意確率はいずれも5%未満とした.
【結果】
10m最大歩行速度,TUG,FRT,自動車運転の実施状況,転倒不安感尺度の『家の掃除』,『簡単な食事の支度』,『簡単な買い物』,『近所を歩く』の各下位項目及び合計点でLSA合計点との間に有意な相関関係が認められた.これらの項目を独立変数に投入して重回帰分析を行った結果,転倒不安感尺度の『簡単な買い物』,10m最大歩行速度,自動車運転の実施状況が抽出された(調整済みR2=0.46).
【考察】 買い物は日常的な外出の主要な動機であり,それに対する転倒不安感が強いことは外出頻度の減少に繋がることが推測できる.また,10m最大歩行速度は歩行バランス能力を示すほか,屋外の実用的な歩行に必要な能力であり歩行速度が速い者ほど生活空間が広がりやすいものと考えられる.さらに自動車運転を実施している者は,より遠方への外出に有利であることからLSA得点に影響を及ぼしたものと思われる.以上より,生活空間には心理的・身体的・社会的要因が多面的に影響しているものと考えられる.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は当院の倫理審査委員会の承認(第471号)を得て実施され,対象者に対しては書面と口頭で本研究の目的や起こりうる不利益等について説明し,書面にて同意を得た.