[O-075] 要支援群・要介護群別にみる経時的機能変化
-通所リハビリテーション利用者の身体・認知・社会・生活機能変化-
キーワード:要支援者と要介護者、通所リハビリテーション、Timed Up and Go test
【はじめに・目的】
近年,通所リハビリテーション(通所リハ)利用者を対象とする理学療法の介入効果に関する先行研究は散見される.しかしながら,要支援群のみで検討したものや,要介護1~3を含み軽度要介護群として検討したものが多く,要支援群および要介護群別に並行調査した研究は渉猟できなかった.そこで,本研究は要支援群・要介護群別に経時的な身体・認知・社会・生活機能変化について検討することを目的とした.
【方法】
2017年2月から2018年10月の期間内に通所リハを利用した者で,要支援1・2,要介護1・2・3いずれかの要介護認定を持ち取り込み基準を満たした56名(要支援群:15名,要介護群:41名)を解析対象とした.評価項目は,一般情報(要介護度,要介護度変化,年齢,性別,既往歴,主観的健康感,利用頻度など),身体機能(Timed Up & Go Test ;TUG,握力,歩行速度),認知機能(改訂版長谷川式簡易知能スケール;HDS-R),社会機能(Life Space Assessment;LSA),生活機能(基本チェックリスト)とした.評価は3か月間を1クールとして初回から3クール行った.初回評価項目をカイ二乗独立性の検定またはMann-Whitneyの検定を使用し要支援群,要介護群別に比較検討した.次に初回・1クール後・2クール後・3クール後の経時的な機能変化をone-way repeatedANOVAおよびBonferroni検定を用いて検討し,交互作用がないかtwo-way repeatedANOVAを使用して確認した.なお,すべての統計解析はSPSS17.0を用いて行い,有意水準は5%未満とした.
【結果】
初回評価の比較では,主観的健康感(p=0.014),利用頻度(p=0.003),基本チェックリストの日常生活関連動作(p=0.036)に有意差がみられた.経時的機能変化の検討では,TUG(26.0±18.5→25.1±18.1→23.5±16.9→24.3±19.1sec,p=0.014)において要支援群で有意な変化がみられ,さらに交互作用(p=0.001)を認めた.歩行速度では,要介護群で2クール後・3クール後(0.71±0.4→0.72±0.48m/s,p=0.021)に有意な改善がみられた.その他の項目で有意な差を認めたものはなかった.
【考察】
初回評価時に要支援・要介護群間で主観的健康感,利用頻度,基本チェックリストの日常生活関連動作に有意差があった.TUGの経時的変化に交互作用があり,要支援群では,経時的な改善傾向がみられ,要介護群では2クールまでは改善傾向にあるが,3クール後に悪化することが示唆された.要介護群では2クール後・3クール後の歩行速度に有意な改善がみられたが,起立・着座を含む総合的なバランス能力評価であるTUGは,同様に改善しなかった可能性があると考えられた.以上のことから,要介護群では起立・着座を含む総合的なバランス能力訓練がより必要であり,利用者自身のリハビリテーション継続に対するモチベーションの維持も重要であると考えられた.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,中部大学倫理審査委員会の承認を得て実施し,評価は対象者への文書及び口頭による同意を得た上で行った(承認番号No.300023).
近年,通所リハビリテーション(通所リハ)利用者を対象とする理学療法の介入効果に関する先行研究は散見される.しかしながら,要支援群のみで検討したものや,要介護1~3を含み軽度要介護群として検討したものが多く,要支援群および要介護群別に並行調査した研究は渉猟できなかった.そこで,本研究は要支援群・要介護群別に経時的な身体・認知・社会・生活機能変化について検討することを目的とした.
【方法】
2017年2月から2018年10月の期間内に通所リハを利用した者で,要支援1・2,要介護1・2・3いずれかの要介護認定を持ち取り込み基準を満たした56名(要支援群:15名,要介護群:41名)を解析対象とした.評価項目は,一般情報(要介護度,要介護度変化,年齢,性別,既往歴,主観的健康感,利用頻度など),身体機能(Timed Up & Go Test ;TUG,握力,歩行速度),認知機能(改訂版長谷川式簡易知能スケール;HDS-R),社会機能(Life Space Assessment;LSA),生活機能(基本チェックリスト)とした.評価は3か月間を1クールとして初回から3クール行った.初回評価項目をカイ二乗独立性の検定またはMann-Whitneyの検定を使用し要支援群,要介護群別に比較検討した.次に初回・1クール後・2クール後・3クール後の経時的な機能変化をone-way repeatedANOVAおよびBonferroni検定を用いて検討し,交互作用がないかtwo-way repeatedANOVAを使用して確認した.なお,すべての統計解析はSPSS17.0を用いて行い,有意水準は5%未満とした.
【結果】
初回評価の比較では,主観的健康感(p=0.014),利用頻度(p=0.003),基本チェックリストの日常生活関連動作(p=0.036)に有意差がみられた.経時的機能変化の検討では,TUG(26.0±18.5→25.1±18.1→23.5±16.9→24.3±19.1sec,p=0.014)において要支援群で有意な変化がみられ,さらに交互作用(p=0.001)を認めた.歩行速度では,要介護群で2クール後・3クール後(0.71±0.4→0.72±0.48m/s,p=0.021)に有意な改善がみられた.その他の項目で有意な差を認めたものはなかった.
【考察】
初回評価時に要支援・要介護群間で主観的健康感,利用頻度,基本チェックリストの日常生活関連動作に有意差があった.TUGの経時的変化に交互作用があり,要支援群では,経時的な改善傾向がみられ,要介護群では2クールまでは改善傾向にあるが,3クール後に悪化することが示唆された.要介護群では2クール後・3クール後の歩行速度に有意な改善がみられたが,起立・着座を含む総合的なバランス能力評価であるTUGは,同様に改善しなかった可能性があると考えられた.以上のことから,要介護群では起立・着座を含む総合的なバランス能力訓練がより必要であり,利用者自身のリハビリテーション継続に対するモチベーションの維持も重要であると考えられた.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,中部大学倫理審査委員会の承認を得て実施し,評価は対象者への文書及び口頭による同意を得た上で行った(承認番号No.300023).