第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター4

[P] ポスター4

Sun. Dec 15, 2019 1:40 PM - 2:40 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-112] トランスファーボード使用率に対する理学療法士の技術指導効果について
介護老人保健施設の介護職負担軽減の取り組み

*佐藤 裕周1 (1. 介護老人保健施設ケアセンター八潮)

Keywords:福祉用具、腰痛予防、介護老人保健施設

【はじめに・目的】
厚労省は、H23年に休業4日以上の職業性疾病の6割が腰痛で、うち社会福祉施設が約19%を占め、10年で2.7倍に増加と報告。腰痛の発生状況として移乗が約70%。そのため、H25年「職場における腰痛予防対策指針」を策定、人力による抱え上げは行わず、福祉用具を使用することを推奨した。
当介護老人保健施設は、入所総数150床、1Fと2Fが一般棟で各50床、3Fが認知症専門棟で50床。各フロアに2つ、介護職負担軽減のためにトランスファーボード(以下TB)の導入を行った。しかし、重度~全介助の利用者に対して、抱え上げ介助をしているという現状がある。
そこで、理学療法士による技術指導を行い、TBの使用率の向上、負担軽減を目的に取り組みを行った。
【方法】
1.対象者
一般棟常勤介護職員28名。男性8名、女性20名。資格は介護福祉士22名、実務者研修終了4名、初任者研修修了2名。従事するフロアで2グループに分け、2F職員14名を介入群、1F職員14名を非介入群とした。
2.内容
1) TBに関するアンケートを2グループに対して実施。アンケートは無記名、それぞれの質問を選択式で回答して頂く。アンケートは介入前と介入後の二回実施し、グループ間比較と前後比較を行う。
2)介入群に対し、TBの基本的な使用方法として、「移乗前の環境設定」「被介助者の重心移動」「介助者の身体の使い方」を大項目とした実技練習主体の勉強会を実施。その後、業務内での移乗介助で、対象者それぞれに2回ずつ、20分間理学療法士が個別で技術指導を行う。使用するTBは、マスターグライドLサイズとした。
【結果】
TBの使用率は「毎回使っている」介入群0%(0名)→64.3%(9名)、非介入群35.7%(5名)→35.7%(5名)と、介入群で大きく向上。使用方法は「とても理解している」介入群7.1%(1名)→35.7%(5名)、非介入群0%(0名)→0%(0名)、「理解している」介入群85.7%(12名)→64.3%(9名)、非介入群85.7%(12名)→78.6%(11名)と、介入群で理解度の向上が見られた。介入前、TBが使用困難な理由は、「使用すると時間がかかる」が最も回答数が多かった。技術指導では、「移乗前の環境設定」が不十分で力任せで行うことが目立っており、TB上を滑らせて移乗することは理解しているが、被介助者と介助者の双方の負担を軽減するという意味では、使用方法を理解出来ていない者がほとんどであった。
【結論】
今回、理学療法士の指導によって、TBの使用率が大きく向上することを示唆した。身体運動学について専門的に学んだ理学療法士が指導役になることで、被介助者、介助者の体格に合わせた使い分けを指導できる利点がある。これまで、指導役が明確ではなかったことから、それぞれが独自のやり方を行っており、介護職内で指導していくことが困難になっていたと考えられる。今後も、勉強会と技術指導を継続し、介護職が指導役になれるようにすることで、施設全体の技術向上に繋げていきたい。

【倫理的配慮、説明と同意】
研究の対象となる当施設の職員に対しては、介護職への比較研究であるため、介護看護部部長と介護職係長への説明を行い、同意を得た。対象者個人に対しては、アンケート配布時に、アンケートの使用目的を記入。アンケートの回収を以て、本研究への同意とみなした。また技術指導の際に、利用者に協力をいただいて練習を行うため、利用者への同意も求めた。自身で判断することが困難な利用者は、ご家族に対して説明と同意を頂くこととした。