[P-71] 生活期脳卒中患者の歩行速度向上を目的とした歩行練習に歩行補助具T-Supportを取り入れることで歩行速度の向上を得た一例
Keywords:脳卒中、歩行速度、T-Support
【はじめに・目的】
Schmidらは,脳卒中患者の歩行速度は,患者の外出状況やQOLを反映し,歩行速度の改善が外出頻度の増加,QOLの向上に寄与することを報告している.T-Support(以下TS)とは,股関節前面に配置した弾性バンドにより立脚後期から遊脚初期の股関節屈曲モーメントを補い,歩行速度や立脚後期における足関節底屈トルクを増大させる歩行補助具である.今回,脳卒中を発症し自宅退院後に杖歩行で外出したいとの希望のある症例に対するTSを使用した訪問理学療法について報告する.
【方法】
症例は80歳代女性で,左麻痺を認め急性期病院へ搬送された.右被殻出血と診断され,保存的治療を経て,25病日回復期病院へ転院し,206病日夫と二人暮らしの自宅に退院.退院時のBrunnstrom recovery stage(以下ステージ)は下肢Ⅱであった.直後より当院による訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)が開始となった.開始当初の移動能力は金属支柱付きGait SolutionとT字杖を使用し2動作そろえ型歩行で歩行速度は0.30m/sであった.自宅内移動は見守りが必要で,屋外は車椅子介助で移動していた.訪問リハは1回60分・週2回介入し,毎回TSでの歩行訓練を行った.またパシフィックサプライ社製Gait Judge System を用い,歩行中の歩行速度と歩数,立脚後期の足関節背屈角度の平均値を算出した.測定は自宅廊下4.5mを歩行し,歩行評価の時期はTS使用開始時と4.5ヶ月経過後に実施した.
【結果】
訪問リハ開始当初のTS未装着/装着時の歩行速度は0.30/0.37m/s,足関節背屈角度は-3.4/-0.7度,歩数は20/18歩であった。4ヶ月経過後,歩行速度は0.45/0.47m/s,足関節背屈角度は-0.6/-0.5度,歩数は12/12歩で装着利得はほぼなくなり,2動作前型歩行を獲得した.その後屋外でも歩行練習を開始し,余暇としての杖歩行での外出を実現するために,夫への歩行介助指導も併せて行った.
【結論】
本症例では介入当初の歩行速度は0.4m/s未満であり,外出は困難であった.歩行速度を向上させる為に前型歩行の獲得が重要であると考えた.TSは股関節前面の弾性バンドにより麻痺側立脚中期以降の股関節伸展で弾性バンドが伸張され,下肢の振り出しを補助する構造である.TSを使用することで即時効果も認められたため,継続使用に至った.下肢のステージはⅡのまま変化はなかったが,歩行速度はTS未装着でも0.45m/sに向上し,前型歩行に移行出来たことで外出の機会を持つことも出来た.生活期脳卒中患者でも歩行速度が向上することで,生活範囲を広げることが可能であると考える.
【倫理的配慮、説明と同意】
症例には本報告の目的,趣旨,個人情報の保護に関する説明を高等と書面にて行い,本人の署名をもって同意を得た.
Schmidらは,脳卒中患者の歩行速度は,患者の外出状況やQOLを反映し,歩行速度の改善が外出頻度の増加,QOLの向上に寄与することを報告している.T-Support(以下TS)とは,股関節前面に配置した弾性バンドにより立脚後期から遊脚初期の股関節屈曲モーメントを補い,歩行速度や立脚後期における足関節底屈トルクを増大させる歩行補助具である.今回,脳卒中を発症し自宅退院後に杖歩行で外出したいとの希望のある症例に対するTSを使用した訪問理学療法について報告する.
【方法】
症例は80歳代女性で,左麻痺を認め急性期病院へ搬送された.右被殻出血と診断され,保存的治療を経て,25病日回復期病院へ転院し,206病日夫と二人暮らしの自宅に退院.退院時のBrunnstrom recovery stage(以下ステージ)は下肢Ⅱであった.直後より当院による訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)が開始となった.開始当初の移動能力は金属支柱付きGait SolutionとT字杖を使用し2動作そろえ型歩行で歩行速度は0.30m/sであった.自宅内移動は見守りが必要で,屋外は車椅子介助で移動していた.訪問リハは1回60分・週2回介入し,毎回TSでの歩行訓練を行った.またパシフィックサプライ社製Gait Judge System を用い,歩行中の歩行速度と歩数,立脚後期の足関節背屈角度の平均値を算出した.測定は自宅廊下4.5mを歩行し,歩行評価の時期はTS使用開始時と4.5ヶ月経過後に実施した.
【結果】
訪問リハ開始当初のTS未装着/装着時の歩行速度は0.30/0.37m/s,足関節背屈角度は-3.4/-0.7度,歩数は20/18歩であった。4ヶ月経過後,歩行速度は0.45/0.47m/s,足関節背屈角度は-0.6/-0.5度,歩数は12/12歩で装着利得はほぼなくなり,2動作前型歩行を獲得した.その後屋外でも歩行練習を開始し,余暇としての杖歩行での外出を実現するために,夫への歩行介助指導も併せて行った.
【結論】
本症例では介入当初の歩行速度は0.4m/s未満であり,外出は困難であった.歩行速度を向上させる為に前型歩行の獲得が重要であると考えた.TSは股関節前面の弾性バンドにより麻痺側立脚中期以降の股関節伸展で弾性バンドが伸張され,下肢の振り出しを補助する構造である.TSを使用することで即時効果も認められたため,継続使用に至った.下肢のステージはⅡのまま変化はなかったが,歩行速度はTS未装着でも0.45m/sに向上し,前型歩行に移行出来たことで外出の機会を持つことも出来た.生活期脳卒中患者でも歩行速度が向上することで,生活範囲を広げることが可能であると考える.
【倫理的配慮、説明と同意】
症例には本報告の目的,趣旨,個人情報の保護に関する説明を高等と書面にて行い,本人の署名をもって同意を得た.