第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター4

[P] ポスター4

Sun. Dec 15, 2019 1:40 PM - 2:40 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-92] 頸髄損傷後、積極的・長期的な生活期リハの関わりを通してADL・QOLの改善が図られた一事例
活動と参加を意識した取り組み、及び高齢者の経済的状況が予後に与える影響

*宮村 潤一1,2 (1. 水俣協立病院、2. 神経内科リハビリテーション協立クリニック)

Keywords:活動と参加、機能予後、高齢者の経済的状況

【はじめに・目的】
我が国では、2025年に向けて地域包括ケアシステムの構築が急務になっている中、今後ますます生活機能維持・向上のための生活期リハビリの充実が期待されている。
今回、頸髄損傷後に急性期・回復期・生活期と切れ目なくリハビリを提供し、長期に渡ってADL・QOLの改善に至った取り組みについて考察を交えてここに報告する。
【方法】
症例は70歳代男性、家族6人暮らし。高所転落による第2頸椎骨折(頸髄損傷)、四肢マヒ、術後1ヶ月は人工呼吸器管理。急性期病院・回復期リハ病院を経て在宅復帰。要介護3。復帰直後から介護保険サービスとして当院訪問リハ(週2)、隣接する同一法人のクリニック通所リハ(週3)、福祉用具貸与(車椅子電動昇降リフト、電動昇降座椅子)を利用。支給限度額を超えており、介護サービス月額自己負担額40,994円。
訪問リハ・通所リハの担当者が日常的に連携を図り、単に身体機能の改善だけを目指すのではなく「活動」や「参加」に働きかけることを意識しサービスを提供。共通の内容としてストレッチ・筋力トレーニング・歩行練習・ADL練習。訪問リハにて起居動作・歩行練習、自主運動の助言、家族への介護指導。通所リハにて装具・福祉用具の検討、作業活動・趣味活動の提案・実施。
【結果】
握力 右:0から13kg、左:15から24kg。大腿四頭筋筋力 右:10から18kg、左:17から30kg。要介護度は3年間で要介護3から要支援2、介護サービス月額自己負担額は13,912円。FIM運動項目:59(半介助)から81点(屋内自立)。車椅子電動昇降リフト返却、家族介助にて温泉利用、電動カートを利用し近隣へ外出、電動昇降座椅子返却、洗髪以外の入浴動作自立、電動昇降座椅子返却、通所リハで創作活動参加・作品販売。
【考察】
数年に渡る関わりの中で、ADL・QOL改善につながった要因として、①退院直後より切れ目なく積極的なリハビリを実施。②年齢が比較的若く、リハ意欲があると同時に支給限度額を超える介護サービスを受けられる経済的ゆとりがあった。③通所リハでの機能訓練、訪問リハで実生活場面での関わり等それぞれの役割発揮。④通所リハでの活動と参加プログラムの提供を機に自宅でも活動機会が増えたことが考えられる。
一方で厚労省の国民生活基礎調査(平成29年)において、65歳以上の高齢者世帯の生活意識は「大変苦しい」「やや苦しい」が5割以上を占めている。経済的状況によっては利用できる介護サービスに限界があり、機能予後(ADL・QOLの改善)に影響を及ぼしかねない状況があることも考える必要がある。
【結論】
「活動と参加」を意識した生活期リハの提供により、長期に渡ってADL・QOLの改善を図ることができた。同時に、経済的状況によっては必要なリハビリを受けられないおそれがあった。PTとして社会保障制度が抱えている課題にも関心をもち、改善に向けて必要な行動が求められているのではないだろうか。

【倫理的配慮、説明と同意】
発表にあたり、症例本人とその家族、及び所属する施設長の同意を得ている。また、個人情報・秘密保持について配慮を行っている。