日本デザイン学会 第69回研究発表大会

講演情報

テーマセッション

[1B] デザイン科学研究部会「多空間デザインモデル,デザイン理論・方法論」、タイムアクシスデザイン研究部会「タイムアクシスデザイン」

2022年6月25日(土) 13:00 〜 15:00 口頭発表 第1会場

座長(テーマセッション):加藤 健郎(慶應義塾大学)

14:40 〜 15:00

[1B-06] 映画「ドライブ・マイ・カー」における「時間」の多層構造

*髙橋 紀子1、川島 洋一2 (1. 福井工業大学 大学院、2. 福井工業大学)

キーワード:Multilayered Structure Model, Regional Resources, Timeaxis Design

これまで著者たちは、「地域資源の記録とその魅力の発信を目的とした映像制作の手法」を研究テーマとしてきた。美しい風景や伝統文化などをドキュメンタリーとして表現する観光映像ではなく、そこに「物語」を導入する映画的手法による地域プロモーション映像の方法論的研究に注力してきた。また、ケーススタディとして映像作品を制作し、その制作プロセスにおける省察を通して、物語映像の表現における「時間性」とその多層構造に着目する視点を獲得した。本稿は、時間軸をデザインに組み込む新たなパラダイムとして松岡由幸氏が提唱した「タイムアクシス・デザイン」の文脈において、この「時間の多層構造」を論じることを目的とする。松岡氏の理論では、「マルチタイムスケール・モデル」が最も近い概念であるが、そこでは長短さまざまなスケールの時間性が論じられているものの、その多層構造までは言及されていない。本稿では、著者たちが提唱する「多層時間モデル」の有効性を検証するために、映像作品の分析を試みる。分析の対象は、第94回アカデミー賞国際長編賞を受賞した濱口竜介監督作品(原作:村上春樹)映画「ドライブ・マイ・カー」とし「時間の多層構造」の視点から読み解いてみたい。