日本デザイン学会 第69回研究発表大会

講演情報

口頭

[5B] デザイン方法論、デザイン評価

2022年6月25日(土) 13:00 〜 15:00 口頭発表 第5会場

座長:田中 佐代子(筑波大学)

13:00 〜 13:20

[5B-01] イノベーション活動において協働を促進する媒介に関する一考察

共有化バウンダリーオブジェクトと共感化バウンダリーオブジェクト

*神谷 泰史1、小林 茂1 (1. 情報科学芸術大学院大学)

キーワード:Boundary Objects, Innovation Activities, Design Process

企業組織のイノベーション活動において、組織に所属する専門性の異なる多様な人々による知識創造を行うためには、イノベーション創出を目的とした異質な人々の協働が必要であるが、それには困難が伴う。本稿では、バウンダリーオブジェクト(BO)に着目し、BOに関する文献で議論されているBOのカテゴリーを参照し、2つのイノベーション活動の事例を基に、協働を促進するために受け手に作用するアプローチの違いによりBOを分類し、それらがイノベーションプロセスにおいて果たす役割を考察した。
その結果、BOによる協働プロセスには、集団間での情報の共有によって協働が促進される場合と、集団内での共感の喚起によって協働が促進される場合の2つがあることがわかった。これに基づき、前者:情報の共有を媒介するBOを共有化BO、後者:共感を媒介するBOを共感化BOと定義し、組織的知識創造プロセスモデルのSECIモデルを用いて、これら2つのBOによる組織的知識創造のメカニズムを説明する。これは、デザインプロセスで一般的に用いられる共有化BOだけでなく、共感化BOを媒介としてデザインプロセスに導入することにより、イノベーション活動を促進できる可能性を示唆している。