基調講演
ソーシャルデザインと慈悲
― “ほしい未来”を育む情報環境
― “ほしい未来”を育む情報環境
講演者
兼松 佳宏
KANEMATSU Yoshihiro
さとのば大学副学長/NPO法人グリーンズ理事
プロフィール:1979年生まれ。ウェブデザイナーとしてNPO支援に関わりながら、「デザインは世界を変えられる?」をテーマに世界中のデザイナーへのインタビューを連載。その後、ソーシャルデザインのためのヒントを発信するウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わり、10年から15年まで編集長。
16年より京都精華大学人文学部特任教員として、ソーシャルデザイン教育のためのプログラム開発を手がけ、現在は地域を旅する大学「さとのば大学」副学長としてカリキュラムデザインを担当。
著書に『ソーシャルデザイン』『beの肩書き』、連載に「空海とソーシャルデザイン」など。秋田県にかほ市出身、長野県北佐久郡在住。現在、高野山大学大学院修士課程(密教学専攻)在籍中。
16年より京都精華大学人文学部特任教員として、ソーシャルデザイン教育のためのプログラム開発を手がけ、現在は地域を旅する大学「さとのば大学」副学長としてカリキュラムデザインを担当。
著書に『ソーシャルデザイン』『beの肩書き』、連載に「空海とソーシャルデザイン」など。秋田県にかほ市出身、長野県北佐久郡在住。現在、高野山大学大学院修士課程(密教学専攻)在籍中。
社会的な課題をクリエイティブに解決する「ソーシャルデザイン」。日本国内では2011年の東日本大震災以降、拙著『ソーシャルデザイン 社会をつくるグッドアイデア集』(グリーンズ編)など関連図書が相次いで出版されたが、もはや一時的な流行ではなく、ひとつの定番となりつつあるように思う。
その年の”最も優れたデザイン”に贈られるグッドデザイン大賞においても、2018年の貧困問題解決に向けてのお寺の活動「おてらおやつクラブ」、2022年の地域で子ども達の成長を支える活動「まほうのだがしやチロル堂」、2023年の地域で助け合う共生型デイサービス「52間の縁側」など、ソーシャルデザインの事例の受賞が相次いでいる。
また、特に大学教育においてその浸透は著しい。2016年、日本では初めてとなる九州産業大学芸術学部ソーシャルデザイン学科設立を筆頭に、私自身も京都精華大学の特任教員としてデザイン学部ではなく人文学部でソーシャルデザインの授業を担当するなど、今や芸術系に限らず多くの大学で「ソーシャルデザイン論」を冠する授業が実施されている。
こうしてソーシャルデザイン教育が一般化し、その実践例が増えてきた今こそ、さまざまな教育機関における試行錯誤を共有し、カリキュラムデザインの底上げに寄与するような何らかのモデルを示す絶好の時機といえるのかもしれない。
そのひとつの試案として紹介したいのが、私が地域を旅する大学「さとのば大学」副学長としてカリキュラムに取り入れているフレームワーク「ソーシャルデザイン曼荼羅」* である。それは、思想家であり社会活動家としても知られる弘法大師・空海の金剛界曼荼羅をヒントに、ブレない土台となる「①本来の自分」×目指したい北極星としての「②ほしい未来」×エネルギー源となる「③リソース」×ニーズを満たす手段としての「④デザイン」という4つの要素を図式化したものだが、今回は特に「②ほしい未来」にフォーカスし、さらに、それを深めるヒントとして「慈悲」(英語ではよく「コンパッション」と訳される)というキーワードに注目する。
ソーシャルデザインが「自分のため」に執着しすぎてひとりよがりになるでもなく、かといって「他者のため」に寄り添いすぎるあまりバーンアウトするでもなく、「自分のため」と「他者のため」がほどよく一致する段階まで視座を高めたり、身体感覚を獲得したりするためには、果たしてどのような情報環境が必要なのだろうか。そんなすぐには答えの出ない問いを真ん中に、みなさんと対話させていただくのを楽しみにしています。
その年の”最も優れたデザイン”に贈られるグッドデザイン大賞においても、2018年の貧困問題解決に向けてのお寺の活動「おてらおやつクラブ」、2022年の地域で子ども達の成長を支える活動「まほうのだがしやチロル堂」、2023年の地域で助け合う共生型デイサービス「52間の縁側」など、ソーシャルデザインの事例の受賞が相次いでいる。
また、特に大学教育においてその浸透は著しい。2016年、日本では初めてとなる九州産業大学芸術学部ソーシャルデザイン学科設立を筆頭に、私自身も京都精華大学の特任教員としてデザイン学部ではなく人文学部でソーシャルデザインの授業を担当するなど、今や芸術系に限らず多くの大学で「ソーシャルデザイン論」を冠する授業が実施されている。
こうしてソーシャルデザイン教育が一般化し、その実践例が増えてきた今こそ、さまざまな教育機関における試行錯誤を共有し、カリキュラムデザインの底上げに寄与するような何らかのモデルを示す絶好の時機といえるのかもしれない。
そのひとつの試案として紹介したいのが、私が地域を旅する大学「さとのば大学」副学長としてカリキュラムに取り入れているフレームワーク「ソーシャルデザイン曼荼羅」* である。それは、思想家であり社会活動家としても知られる弘法大師・空海の金剛界曼荼羅をヒントに、ブレない土台となる「①本来の自分」×目指したい北極星としての「②ほしい未来」×エネルギー源となる「③リソース」×ニーズを満たす手段としての「④デザイン」という4つの要素を図式化したものだが、今回は特に「②ほしい未来」にフォーカスし、さらに、それを深めるヒントとして「慈悲」(英語ではよく「コンパッション」と訳される)というキーワードに注目する。
ソーシャルデザインが「自分のため」に執着しすぎてひとりよがりになるでもなく、かといって「他者のため」に寄り添いすぎるあまりバーンアウトするでもなく、「自分のため」と「他者のため」がほどよく一致する段階まで視座を高めたり、身体感覚を獲得したりするためには、果たしてどのような情報環境が必要なのだろうか。そんなすぐには答えの出ない問いを真ん中に、みなさんと対話させていただくのを楽しみにしています。
*:ソーシャルデザイン曼荼羅