第43回 日本血管外科学会学術総会

会長挨拶

 このたび第43回日本血管外科学会学術総会を横浜にて主催させていただくことになり、大変光栄でありますとともに、急速に進化し続けている本学会の学術総会を充実したものとすべく、身の引き締まる思いでおります。
今回の学術総会のテーマは“血管外科と血管外科医の未来”とさせていただきました。

 大血管外科の分野では、急性大動脈解離手術をはじめとする日本におけるopen surgeryの成績は急速に向上し、世界のトップレベルとなっています。今後も世界のリーダーとして、未来への方向性を示していく必要があると思われます。一方1991年手作りの大動脈ステントグラフトが初めて使用されてからまだ20年あまりしか経過しておりませんが、商品化とともに急速に普及し、腹部大動脈ステントグラフト症例数は厚生労働省の認可後8年でopen surgeryの手術数を上回るようになっております。あまりにも速い変化のため有効性について十分な検証がされておらず、今まさに長期遠隔成績からこのステントグラフトの有効性を検証する時期にきていると思われます。本学会ではこの検証の結果をうけて、将来に向けて適切な術式選択の目安を明らかにできればと思っております。

 末梢動脈疾患では糖尿病患者さんや透析患者さんの増加に加え、血管内治療とその関連するdeviceの進歩、distal bypassの普及で治療数が増加しております。しかしながら治療に係わる合併症も報告されており、疾患の自然歴、それぞれの治療法の利点、欠点、限界を十分に理解した上で、最も患者さんに適した治療法を選択する必要があります。本学会では血管内治療を積極的に行っている内科系医師も交えて討論していただき、少しでも治療法選択におけるコンセンサスが得られればと思っております。

 静脈疾患ではcommon diseaseである下肢静脈瘤に対する血管内治療が登場し、またリンパ浮腫では、静脈リンパ管吻合が複合的理学療法に加わり、いずれも治療体系が大きく変化しつつあります。本学会でこれらに対する理解をさらに深めたいと思います。

 血管疾患の治療は今後も、画像診断、治療device、再生医療の進歩により大きく変わってくるものと思われます。本学会ではこれらについて最前線で開発、研究中の方にお話ししていただき、未来像を知る手がかりにしたいと思っております。

 血管外科、血管外科医の未来に向けて少しでも有意義な学術総会となりますよう会員の皆様のお力をお借りし、また横浜市立大学外科治療学益田宗孝教授のご協力をいただいて横浜市立大学心臓血管外科グループ全体で準備していきたいと存じます。

 学会会場は、横浜の地の古い港町と現代的な街並みの融合した“みなとみらい地区”で、美食のまち中華街もすぐそこです。6月初めの横浜は例年ですとまだ梅雨入りしていないことが多く、三渓園では蛍狩りが行われています。2015年6月横浜でお待ちしております。


 
横浜市立大学附属市民総合医療センター・心臓血管センター
教授 井元 清隆