第27回近畿臨床工学会

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循環器①

座長:中野 克哉(神戸大学医学部附属病院 臨床工学部)、清水 好(関西医科大学総合医療センター 臨床工学センター)

[05-04] 入院中に突然のRV閾値上昇によるペーシング不全をきたした1例

*宮本 賢昌1、中西 理恵子1、布元 孝典1、寺田 賢二1 (1. 奈良県西和医療センター 臨床工学技術部)

【はじめに】現在のペースメーカには自動出力調整機能が搭載されている。今回、自動閾値測定により自動出力調整がなされていたが、突然の閾値上昇によりペーシング不全をきたした症例を経験したので報告する。
【症例】80歳代男性、既往歴に2型糖尿病、脂質異常症、陳旧性心筋梗塞がある。2019年1月、高度房室ブロックによる心不全増悪のためペースメーカ(Medtronic Azure DR)植込みを行い、設定はDDI、基本レート60ppmとした。その後、遠隔モニタリングを実施しており、RVペーシング閾値は0.5-0.75Vと安定していた。出力は自動出力調整機能で設定した最小値である2.0Vで経過していた。2021年2月、呼吸苦が出現し、肺炎と診断され入院加療となった。第5病日、モニター上で心拍数40bpmの徐脈を認めたため、臨時のペースメーカチェックを実施した。RVリード抵抗に変動はなく、自動閾値測定は0.75Vであったが、手動でペーシング閾値を測定したところ、閾値は上昇しており、心室波高値は大幅に減少していた。
【結果/考察】胸部レントゲン上は明らかなリード断線や脱落は認めず、ペーシング閾値の変動が懸念される抗不整脈薬等の投与もなかった。また血液検査と心臓超音波検査により電解質異常や虚血性心疾患の疑いも否定的であった。糖尿病患者では高血糖でRVペーシング閾値の上昇が出現しやすいという報告もあり、本症例では当日の血糖値が421mg/dlであったため、高血糖による閾値上昇が考えられた。突然の閾値上昇には自動出力調整機能では対応しきれないため、本症例のようなペーシング不全を未然に防ぐには患者の医学的背景と共に閾値上昇の要因を把握し迅速に対応するための知識と経験が必要と考える。
【結語】突然の閾値上昇によりペーシング不全をきたした症例を経験し、今後も臨床工学技士としてできることを模索し向上させていきたい