The 28th Kinki Association for Clinical Engineers

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一般演題

一般演題5
血液浄化②

Sun. Oct 9, 2022 1:30 PM - 2:30 PM 第3会場 (Zoom)

座長:下村 太郎(大阪赤十字病院)、中村 拓生(明石市立市民病院)

[05-05] 当院における腹水濾過濃縮再静注の現状と2社の腹水濾過器と濃縮器の使用経験

*中本 幸那1、岩下 裕一1、西谷 喜治2 (1. 市立奈良病院 臨床工学室、2. 市立奈良病院 腎臓内科)

【はじめに】
腹水濾過濃縮再静注法(以下CART)は、採取した腹水中の不純物を除去後、蛋白成分を濃縮し再静注する治療法である。当院では、消化器内科・外科、婦人科などの診療科の難治性腹水に対しCARTを行っている。今回、当院におけるCARTの現状と2社の腹水濾過器と濃縮器を使用する機会を得たので比較検討し報告する。
【対象及び方法】
対象は、2020年12月から2022年7月までに外圧濾過法を行った31例。旭化成メディカル社の腹水濾過器(AHF-MOW)、腹水濃縮器(AHF-UP)を使用した群をA群。川澄化学工業社製のマスキュア腹水濾過フィルタ(KS-1.3)、マスキュア腹水濃縮フィルタ(KC-3.0)を使用した群をK群とし、比較項目は、CARTの施行時間、濃縮率、回収率(TP、Alb)、濃縮還元腹水の投与前後の体温変化とした。
【結果】
婦人科15例、消化器外科9例、消化器内科2例、その他診療科5件。疾患では転移性肝腫瘍や卵巣癌など癌性腹水が31例であった。CART前の腹水中のアルブミンは平均0.047g/dl、CART後は平均0.92g/dlであった。A群とK群との比較では、CART施行時間の平均は、A群で22.6分/kg、K群で14分/kg。濃縮率の平均は、A群で6.05倍、K群で7.33倍。回収率の平均は、A群でTP 51%、Alb 52.9%、K群でTP 50.3%、Alb 52.4%。体温上昇が見られたのは、A群で12件中2件、K群で19件中2件であった。
【考察】
濃縮還元腹水中のアルブミンは平均0.92g/dl含まれており、等張アルブミン製剤には及ばないが、再静注は有用であると考える。また、KC-3.0はAHF-UPに比べ膜面積が大きいことから過度のTMPや膜洗浄の回数を減少させ、施行時間の短縮や濃縮率、体温上昇を抑えることにつながったと考える。膜の比較では同患者の腹水による症例数が少なく、信頼度は低いため、今後も症例の集積を行い、検討が必要である。
【結語】
今回、当院におけるCARTの現状と2社の腹水濾過器と濃縮器を比較し報告した。 当院では、癌性腹水の症例がほとんどであり、腹水の性状等が毎回異なるため、今後も症例の集積・検討が必要である。