有機EL討論会 第37回例会 開催プログラム
日 時 2023年11月16日(木),17日(金)
会 場 広島国際会議場(広島市)
表彰式
司会: 梅田 時由(シャープディスプレイテクノロジー株式会社 開発本部)
13:00 ~ 13:10
有機EL討論会第36回例会講演奨励賞 表彰式
S1:特別講演Ⅰ
座長: 河村 祐一郎(出光興産株式会社 先進マテリアルカンパニー電子材料部)
S1 13:10 ~ 13:50
「OLEDの性能限界を超えるeLEAPTM AM-OLEDディスプレイの開発」
山本 貴史(株式会社ジャパンディスプレイ Infini Tech 事業部)
S2:評価・解析
座長: 伊澤 誠一郎(東京工業大学 科学技術創成研究院 )
S2-1 13:50 ~ 14:10
「EL素子応用に向けたEu(III)錯体ドープ薄膜の発光機構の実時間解析」
宮崎 栞(九州大学 大学院理学研究院)
要旨
Eu(III)錯体は高色純度発光を示し、電界発光(EL)素子への応用が期待されている。EL素子効率化には、素子環境における発光機構解明が必要であるが、アモルファス環境中で生じる多段階の発光過程を個別で観測するのは難しい。本研究では、発光層環境であるホスト-ゲスト薄膜に着目し、時間分解分光法を用いてホスト分子励起後からゲスト分子であるEu(III)錯体が発光するまでの過程を詳細に解析し、高効率エネルギー移動機構を明らかにした。「特異な熱挙動を示すTADF材料の詳細な速度論解析」
土屋 陽一(九州大学 最先端有機光エレクトロニクス研究センター)
要旨
熱活性化遅延蛍光(TADF)は通常、高温時に長寿命、低温時に短寿命の減衰を示す。我々はTADF材料の中にS-T反転材料のような、通常のTADFとは逆の発光減衰の温度依存性を示す材料を見出し、その詳細な発光メカニズムの解析を行った。モデル研究および様々な溶媒中における発光減衰の温度依存性を用いた包括的速度論解析の結果、発光減衰の特異な熱挙動が通常のTADF材料における励起子のエネルギー配置で説明できることを見出した。「OLEDの変位電流と発光強度の同時測定」
井上 勝(TOYOTech LLC)
要旨
近年、三重項–三重項消滅(TTA)を利用したフォトンアップコンバージョンによる発光の挙動が注目されている。三重項励起状態の生成や失活挙動は、発光の立ち上がり付近に観測される。今回我々は、この発光の立ち上がり領域を詳細に調べるために、測定レンジを最適化した変位電流と、輝度計ではなくフォトダイオードを用いた発光強度の高感度同時測定を行い、OLEDの劣化による電流密度、電流効率の変化を調べた。14:50 ~ 15:05 休憩 ( 15分 )
S3:特別講演Ⅱ
座長: 硯里 善幸(山形大学 有機エレクトロニクスイノベーションセンター)
S3 15:05 ~ 15:45
「有機薄膜太陽電池の高効率化に向けた材料開発」
尾坂 格(広島大学 大学院先進理工系科学研究科)
S4:評価・解析
座長: 八尋 正幸(公益財団法人九州先端科学技術研究所 有機光デバイスグループ)
S4-1 15:45 ~ 16:05
「OLED材料の不純物分析」
高野 皓(株式会社東レリサーチセンター)
要旨
ロット間でデバイス寿命の異なるOLED材料について、寿命低下に関与する不純物を同定するために、燃焼イオンクロマトグラフィーおよびTOF-SIMS、LC/MS測定を実施した。各種分析の結果、デバイス寿命が低いロットにおいてHost-1のBr化体が多く存在することが示唆され、デバイス寿命の低下に関与する化合物を同定することに成功した。「表面Green函数に基づく電極・電子輸送層界面の微視的理論解析」
上島 基之(株式会社MOLFEX)
要旨
表面Green函数を用いた半無限系のソルバーを独自開発し、電極・電子輸送材料界面の電子状態計算を行うことでAl/LiF/Alq3系での立ち上がり電圧や電子注入材料の役割を説明することができた。本手法によりキャリア輸送材料の立ち上がり電圧の予測や新規キャリア輸送材料の分子設計が可能となることが期待される。16:25 ~ 16:40 休憩 ( 15分 )
S5:材料・装置
座長: 梅田 時由(シャープディスプレイテクノロジー株式会社 開発本部)
S5-1 16:40 ~ 17:00
「シリコンプロセス用有機蒸着装置の開発」
遠藤 有希子(株式会社アルバック)
要旨
近年、AR/VR市場の拡大等により、有機ELディスプレイにおいてもマイクロディスプレイへの注目が高まっている。マイクロディスプレイは従来のディスプレイのようなガラス基板ではなく、シリコン基板上に形成される。そこで、我々は、300mmシリコン基板用の有機蒸着装置の開発に取り組み、材料付着効率40%を実現する蒸発源ならびに基板温度を-20℃から80℃まで制御可能な温調プレートを開発した。「陽電子消滅法を用いたPHPS塗布型ガスバリア膜のナノサイズ空隙評価」
硯里 善幸(山形大学 有機エレクトロニクスイノベーションセンター)
要旨
有機ELのフレキシブル化には、高い水蒸気バリア性能を有するバリア構造が必要である。我々はSi-Nを主骨格にもつポリシラザンを塗布し、真空紫外光(VUV光)を照射することで、高い水蒸気バリア性能を達成してきた。ハイバリアには水分子を透過しない膜の緻密性が重要であるが、膜内部のナノ空隙の詳細は分かっていない。本研究では、陽電子消滅法を用い、VUV光照射とナノ空隙サイズの関係性を明らかとした。A1:企業展示広告
座長: 梅田 時由(シャープディスプレイテクノロジー株式会社 開発本部)
A1-1 17:20 ~ 17:23
「OLED素子製作と評価プラットフォームのご紹介」
公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団
公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団
A1-2 17:23 ~ 17:26
「OLED に関する分析技術紹介」
株式会社住化分析センター
株式会社住化分析センター
A1-3 17:26 ~ 17:29
「新しい有機EL材料の開発を支援する分子シミュレーションと機械学習のプラットフォーム Materials Science Suite」
シュレーディンガー株式会社
シュレーディンガー株式会社
A1-4 17:29 ~ 17:32
「有機ELに関する分析技術」
株式会社東レリサーチセンター
株式会社東レリサーチセンター
A1-5 17:32 ~ 17:35
「UBI Research が発刊する調査レポートのご案内」
UBI Research Co, Ltd.
UBI Research Co, Ltd.
A1-6 17:35 ~ 17:38
「アルバック計測コンポーネント 有機EL技術への貢献」
株式会社アルバック
株式会社アルバック
A1-7 17:38 ~ 17:41
「Fluxim製品の紹介」
サイバネットシステム株式会社
サイバネットシステム株式会社
A1-8 17:41 ~ 17:44
「有機EL材料向け重水素標識化合物」
大陽日酸株式会社
大陽日酸株式会社
A1-9 17:44 ~ 17:47
「ガス・水蒸気透過度測定装置及びその受託分析サービスなどについて」
株式会社MORESCO
株式会社MORESCO
17:50 ~ 18:00 移動 ( 10分 )
交流会
18:00 ~ 20:00 交流会
11月17日(金) 9:00~15:45
S6:特別セッション <ディスプレイ高色純度化技術>
座長: 中 茂樹(富山大学 学術研究部工学系)
S6-1 9:00 ~ 9:30
「多重共鳴効果を用いた高色純度TADF材料の開発」
畠山 琢次(京都大学 大学院理学研究科)
S6-2 9:30 ~ 10:00
「高い色純度を有するペロブスカイト量子ドットLEDの開発」
千葉 貴之(山形大学 大学院有機材料システム研究科)
S6-3 10:00 ~ 10:30
「高輝度と高耐久性を両立したペロブスカイト量子ドットインクの開発」
大橋 良太(キヤノン株式会社 R&D本部 )
10:30 ~ 10:45 休憩 ( 15分 )
S7:学生口頭発表(評価・解析)
座長: 福島 大介(住友化学株式会社 先端材料開発研究所)
S7-1 10:45 ~ 11:00
「発光層の自発的配向分極による リン光有機EL素子の励起子消光の抑制」
中野 正太郎(明治大学 大学院理工学研究科 )
要旨
本研究では、発光層ホストに自発的配向分極(SOP)を示すTPBiを用いたリン光有機EL素子を作製し、その素子特性を変位電流と光励起発光強度の同時計測法により評価した。前回報告したCBPホスト素子の結果と比較しながら、発光層のSOPと蓄積電荷による励起子消光(EPQ)との相関を解析した。発光層のSOPは、EPQを抑制することが分かった。「青色蛍光OLEDの駆動電圧付近で生じる急激な励起子消滅過程」
角町 駿太(九州大学 最先端有機光エレクトロニクス研究センター)
要旨
有機EL素子(OLED)の駆動中に生成された励起子の消滅過程は、有機発光材料の性能を最大限に引き出す上での制限因子になっており、EL外部量子効率(EQE)を低下させる要因となる。励起子消滅確率は、励起子やポーラロンの密度に依存するため、高励起条件下での寄与が注目されてきた。本研究では、三重項-三重項アップコンバージョン(TTU)ベースの青色蛍光OLEDにおいて、駆動電圧付近での急激な励起子消光がEL効率を制限していることを示す。「光導波路分光法を用いた有機層の温度変調吸収スペクトルの測定」
岩井 恵大(北陸先端科学技術大学院大学)
要旨
本研究では、電流印加によるHOD内部の温度上昇が吸収スペクトルに及ぼす影響を明らかにするために、光導波路分光法を用いて正孔オンリー素子(HOD)の温度変調吸収分光測定を行った。その結果、素子の温度上昇によりスペクトルの振動構造が生じ、スペクトルのピーク強度の増加とピーク位置の短波長側へのシフトを観測した。HODのオペランド吸収スペクトルにみられた振動構造は、光学的干渉の温度依存性に起因すると結論付けた。11:30 ~ 13:10 昼食 ( 100分 )
S8:学生口頭発表(材料・デバイス)
座長: 野口 裕(明治大学 理工学部)
S8-1 13:10 ~ 13:25
「ケイ素架橋多重共鳴型 TADF 材料の合成と高色純度青色有機 EL」
年眞 遥生(山形大学 大学院有機材料システム研究科 )
要旨
高効率・高色純度発光を実現する技術として多重共鳴型熱活性化遅延蛍光(MR-TADF)材料が注目されている。代表例である DABNA-1 は、高い発光量子効率(PLQY)、色純度、TADF 性と際立った特徴を示すが、凝集による PLQY の低下と光取出効率を向上させる水平配向性が低い問題点がある。本研究では、架橋構造による剛直性の向上および嵩高い置換基による凝集抑制を試みた。「架橋性配位子を用いたCsPbBr3ナノ結晶の厚膜化と高効率LEDの開発」
柳橋 健人(山形大学 大学院有機材料システム研究科)
要旨
長鎖アルキル配位子を用いたペロブスカイトナノ結晶は、塗布溶媒に対して再分散するため多積層構造の形成が極めて困難である。そこで本研究では、アルキル基の両端にアミノ基を有するアルキルジアミンをペロブスカイトナノ結晶に添加しナノ結晶間を架橋することで、ナノ結晶層の不溶化と塗布成膜による積層化に成功した。さらに、アルキルジアミンのパッシベーションにより高い発光量子収率を示した。ペロブスカイトナノ結晶を架橋化した緑色LEDでは、二層積層後も低い駆動電圧を維持し、最大輝度2020 cd/m2、最大外部量子効率10.1%を達成した。「エキサイプレックスアップコンバージョン型有機ELの励起子消光抑制」
益田 鉄平(富山大学 大学院理工学研究科)
要旨
エキサイプレックスアップコンバージョン型有機EL (ExUC-OLED)のdonor層において100 nm以上に及ぶ励起子の長距離拡散が確認されている。これにより励起子がホール注入層(MoO3)/donor (M/D)界面に到達することで消光している。そこでMoO3による消光を抑制するためM/D界面に励起子ブロック層を挿入したExUC-OLEDを作製した。ブロック層としてα, β-ADNを挿入することでExUC-OLEDの特長である低電圧化を損なうことなくMoO3による励起子消光を抑制し、さらに外部量子効率の向上に成功した。「エキサイプレックスアップコンバージョン型有機ELのD/A界面チューニングによるエネルギー移動制御」
深澤 亮祐(富山大学 大学院理工学研究科)
要旨
エキサイプレックスアップコンバージョン型有機EL (ExUC-OLED)は適切な組み合わせのドナーとアクセプタが必要となり、デバイス設計の自由度が狭い。そこでドナー層とアクセプタ層の界面にspacerを挿入したExUC-OLEDを作製した。Spacerによりドナーとアクセプタ間の距離を制御することでクーロン束縛力、エキサイプレックスのエネルギー、発光層へのエネルギー移動を制御し発光効率が向上した。これによりExUC-OLEDのデバイス設計の自由度を上げることが可能である。「ドナー・アクセプター界面のエネルギー解析による低電圧駆動OLEDの実現」
佐藤 千夏(東京理科大学 理学研究科)
要旨
OLEDの省電力化には駆動電圧の低減が不可欠だが、駆動電圧を決定する要因の系統的理解は充分ではない。本研究では、エキサイプレックス界面発光を示す単純構造OLEDを採用し、励起子束縛エネルギーを考慮することでOLEDの電荷再結合に必要な電圧とエミッタのエネルギーギャップとの相関を明らかにした。その結果を基に新たな分子を設計し、三重項-三重項消滅を利用した約1.5Vで発光する青色OLEDを実現した。閉会
14:25 ~ 14:35 閉会の辞
河村 祐一郎 副実行委員長(出光興産株式会社 先進マテリアルカンパニー電子材料部 )
ポスター討論
14:35 ~ 15:45 S2,S4,S5,S7,S8
【講演形式について】本討論会における各講演発表は下記①~⑤のいずれかの講演形式で行います。
①特別講演(40分)
②特別セッション(30分)
《一般講演》
④一般口頭発表(20分:質疑応答含む)とポスター討論(70分)
⑤学生口頭発表(15分:質疑応答含む)とポスター討論(70分)
【ポスター討論について】講演者と参加者の討論を促すため、一般講演における筆頭発表者が講演会終了後に参加者と討論する場(ポスター討論)を設けます。余裕のある時間とリラックスした雰囲気の中で行われる活発な討論に是非ご参加ください。
【企業展示】法人会員9社による展示ブースを設けます。
【交流会】1日目の例会終了後に交流会を開催します。
【講演奨励賞対象者について】一般講演における35歳以下の筆頭発表者が講演奨励賞の対象になります。
【学生講演奨励賞対象者について】学生口頭発表における筆頭発表者が学生講演奨励賞の対象になります。