10:55 〜 11:05
[O-1-03] 移動形態の決定に難渋した腰部脊柱管狭窄症術後患者一症例
【症例紹介】
本症例は腰部脊柱管狭窄症と診断され、L4/5後方椎体間固定術及びL3/4開窓術を施行された70代女性である。4年前から両下肢痛・痺れが出現し、1年前から下肢筋力低下の増悪により歩行困難となったが、四つ這い移動にて自宅内ADLは自立されていた。術後は上記の症状は改善したが下肢筋力低下は残存した。本症例は急性期時に歩行目的で短下肢装具(以下SLB)を作成しており、回復期転入後も歩行獲得に向けた介入を継続していた。しかし、経過の中で本症例が希望する移動形態に変化があり、介入内容との間に乖離が生じた。本症例と家族の意思確認を行い、希望する移動形態の共有と介入内容の軌道修正を行ったため報告する。
【評価・リーズ二ング】
初期評価(術後+36~39日)の結果を以下に示す。MMT(右/左)は腸腰筋3/3、大殿筋1/1、中殿筋1/2、前脛骨筋0/3、腓腹筋0/0。触覚は右下肢重度鈍麻、足部外側脱失、左下腿以下重度鈍麻。運動覚は右足関節と足趾で脱失、左足趾で脱失していた。主治医の見解は麻痺の改善は見込めないだろうとのことであった。立位は支持物が無ければ保持困難であり、後方への易転倒性を認めた。前方に上肢支持を置くことで前方重心での立位保持が可能であった。平行棒内歩行では右遊脚期で鶏歩を認めた。以上の評価から歩行での移動には後方への転倒リスク回避と歩行中の推進力を得るために、前方重心を保持できる前腕支持型歩行器と右脚のクリアランス低下を補償するSLBが必要と考えた。10m歩行テストは98秒であり、近位見守りを要した。また、HOPEは「自宅内は歩いて生活したい」であった。
【介入と結果】
屋内の移動には歩行器とSLBが必要になることを説明し、カンファレンスで了承を得てリハビリを進めた。治療として膝立ちや立位バランス練習等の理学療法に加え、退院後の移動形態を再現した姿勢での歩行再学習を目的に免荷式歩行リフトPOPOでの歩行練習を行った。術後+54日、麻痺の状態は初期評価と比べ著変がなかったが10m歩行テストは26秒に改善を認めた。しかし、本症例との会話の中で歩行獲得に対する意欲の低下が窺えたため、再度意思確認したところ、術前の移動形態である四つ這いを希望された。歩行を再獲得できるという家族の期待に対する使命感から歩行獲得を望まれていたとのことであった。また、歩行の度に歩行器と装具を利用する手間に対しても負担を感じられていた。ご家族に対して再度説明する場を設定し、退院後の移動形態を四つ這い移動とすることで患者家族共に了承を得た。後日、自宅内での実動作の評価と環境調整を行い、退院までの期間は床上動作等自宅内で想定される動作の反復練習を行った。
【結論】
本症例を通して療法士としての見解を踏まえ患者様にとって最善の治療や方向性を共に検討するためには、患者様と関わる中で小さな変化から意思を汲み取り治療に反映させることが重要だと学んだ。
【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には口頭にて説明し書面にて同意を得た。
また、本発表は当院委員会にて承認を得ている(承認番号HG-IRB2117)。
本症例は腰部脊柱管狭窄症と診断され、L4/5後方椎体間固定術及びL3/4開窓術を施行された70代女性である。4年前から両下肢痛・痺れが出現し、1年前から下肢筋力低下の増悪により歩行困難となったが、四つ這い移動にて自宅内ADLは自立されていた。術後は上記の症状は改善したが下肢筋力低下は残存した。本症例は急性期時に歩行目的で短下肢装具(以下SLB)を作成しており、回復期転入後も歩行獲得に向けた介入を継続していた。しかし、経過の中で本症例が希望する移動形態に変化があり、介入内容との間に乖離が生じた。本症例と家族の意思確認を行い、希望する移動形態の共有と介入内容の軌道修正を行ったため報告する。
【評価・リーズ二ング】
初期評価(術後+36~39日)の結果を以下に示す。MMT(右/左)は腸腰筋3/3、大殿筋1/1、中殿筋1/2、前脛骨筋0/3、腓腹筋0/0。触覚は右下肢重度鈍麻、足部外側脱失、左下腿以下重度鈍麻。運動覚は右足関節と足趾で脱失、左足趾で脱失していた。主治医の見解は麻痺の改善は見込めないだろうとのことであった。立位は支持物が無ければ保持困難であり、後方への易転倒性を認めた。前方に上肢支持を置くことで前方重心での立位保持が可能であった。平行棒内歩行では右遊脚期で鶏歩を認めた。以上の評価から歩行での移動には後方への転倒リスク回避と歩行中の推進力を得るために、前方重心を保持できる前腕支持型歩行器と右脚のクリアランス低下を補償するSLBが必要と考えた。10m歩行テストは98秒であり、近位見守りを要した。また、HOPEは「自宅内は歩いて生活したい」であった。
【介入と結果】
屋内の移動には歩行器とSLBが必要になることを説明し、カンファレンスで了承を得てリハビリを進めた。治療として膝立ちや立位バランス練習等の理学療法に加え、退院後の移動形態を再現した姿勢での歩行再学習を目的に免荷式歩行リフトPOPOでの歩行練習を行った。術後+54日、麻痺の状態は初期評価と比べ著変がなかったが10m歩行テストは26秒に改善を認めた。しかし、本症例との会話の中で歩行獲得に対する意欲の低下が窺えたため、再度意思確認したところ、術前の移動形態である四つ這いを希望された。歩行を再獲得できるという家族の期待に対する使命感から歩行獲得を望まれていたとのことであった。また、歩行の度に歩行器と装具を利用する手間に対しても負担を感じられていた。ご家族に対して再度説明する場を設定し、退院後の移動形態を四つ這い移動とすることで患者家族共に了承を得た。後日、自宅内での実動作の評価と環境調整を行い、退院までの期間は床上動作等自宅内で想定される動作の反復練習を行った。
【結論】
本症例を通して療法士としての見解を踏まえ患者様にとって最善の治療や方向性を共に検討するためには、患者様と関わる中で小さな変化から意思を汲み取り治療に反映させることが重要だと学んだ。
【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には口頭にて説明し書面にて同意を得た。
また、本発表は当院委員会にて承認を得ている(承認番号HG-IRB2117)。
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