11:45 〜 11:55
[O-3-01] 麻痺側つまずきにより歩行自立が困難であった左ラクナ梗塞後の一症例
【症例紹介】左ラクナ梗塞を認めた70歳代男性で既往歴に多発性脳梗塞、右PCA梗塞があった。入院前ADLは自立であったが、歩行時に右足部のつまずきがあった。今回、発症後につまずきの増強を認め歩行困難となったため報告する。
【評価とリーズニング】初期評価(発症24日目):右下肢SIAS-Motor(4.4.4.4.5)、Trunk Impairment Scale(以下TIS)11/23点、Berg Balance Scale(以下BBS)30/56点であった。歩行観察では、左立脚時間の短縮、右トゥクリアランスの低下、右足部のつまずきを認めた。FIM(歩行)は1でTUG-tは評価困難であった。10m歩行中に転倒に至るつまずきを2回認めた。重心動揺検査は、左右荷重量が右67.2%左32.8%、最大荷重(中心からCOPの移動距離)が右7.5cm左3.5cmであった。
評価結果より本症例は右側優位の荷重となっており、左下肢への重心移動が困難であった。そのため歩行時の左立脚時間が短縮し、右トゥクリアランスが低下、右足部のつまずきが生じていると考えた。Geertらは脳卒中後の体幹機能は歩行と関連していると報告しており、丸谷らは片麻痺患者の歩行能力にはバランス機能が強く関与しているとしている。本症例においても体幹機能の低下やバランス機能の低下が歩行に影響していると考えた。
【介入と結果】左側への重心移動練習として、側方リーチ動作や踏み台昇降、体幹機能の向上を目的に座位で体幹側屈運動、下肢交互挙上運動を実施した。また体重免荷歩行器を使用した歩行を1回360m(2〜3分)を5回/週、免荷量は体重の約15〜20%で設定し実施した。最終評価(発症47日目):運動麻痺は著変なし、TIS 13/23点、BBS 36/56点であった。歩行観察は左立脚時間の延長、右トゥクリアランスの向上、右足部のつまずきの軽減を認めた。TUG-tは11.3秒、10m歩行は10.9秒であり、10m歩行中は転倒には至らない程度のつまずきを1回認めた。重心動揺検査では左右荷重量は共に50.0%、最大荷重では右6.3cm左7.2cmであった。FIM(歩行)は4となり、病棟内付き添い歩行が可能となった。
【結論】つまずきの増強を認め歩行困難となった左ラクナ梗塞患者に対して、重心移動や体幹機能に着目し理学療法介入をした。またMillerらは床上歩行での部分的体重免荷は、歩行速度、バランス能力、歩幅を改善させると報告している。本症例においても、バランス練習と体幹トレーニングに加え、体重免荷歩行器を使用しての歩行練習を実施し、右足部のつまずき軽減とバランス機能の向上したことにより、歩行の介助量軽減を認めた。しかし最終評価では歩行自立には至らず、軽介助レベルにとどまった。要因としては、体幹機能とバランス機能の低下が残存している点や、発症前からつまずきがあった点が考えられる。
【倫理的配慮、説明と同意】対象者には口頭にて説明し書面にて同意を得た。また、本発表は当院倫理委員会にて承認を得ている。(承認番号:HG-IRB2121)
【評価とリーズニング】初期評価(発症24日目):右下肢SIAS-Motor(4.4.4.4.5)、Trunk Impairment Scale(以下TIS)11/23点、Berg Balance Scale(以下BBS)30/56点であった。歩行観察では、左立脚時間の短縮、右トゥクリアランスの低下、右足部のつまずきを認めた。FIM(歩行)は1でTUG-tは評価困難であった。10m歩行中に転倒に至るつまずきを2回認めた。重心動揺検査は、左右荷重量が右67.2%左32.8%、最大荷重(中心からCOPの移動距離)が右7.5cm左3.5cmであった。
評価結果より本症例は右側優位の荷重となっており、左下肢への重心移動が困難であった。そのため歩行時の左立脚時間が短縮し、右トゥクリアランスが低下、右足部のつまずきが生じていると考えた。Geertらは脳卒中後の体幹機能は歩行と関連していると報告しており、丸谷らは片麻痺患者の歩行能力にはバランス機能が強く関与しているとしている。本症例においても体幹機能の低下やバランス機能の低下が歩行に影響していると考えた。
【介入と結果】左側への重心移動練習として、側方リーチ動作や踏み台昇降、体幹機能の向上を目的に座位で体幹側屈運動、下肢交互挙上運動を実施した。また体重免荷歩行器を使用した歩行を1回360m(2〜3分)を5回/週、免荷量は体重の約15〜20%で設定し実施した。最終評価(発症47日目):運動麻痺は著変なし、TIS 13/23点、BBS 36/56点であった。歩行観察は左立脚時間の延長、右トゥクリアランスの向上、右足部のつまずきの軽減を認めた。TUG-tは11.3秒、10m歩行は10.9秒であり、10m歩行中は転倒には至らない程度のつまずきを1回認めた。重心動揺検査では左右荷重量は共に50.0%、最大荷重では右6.3cm左7.2cmであった。FIM(歩行)は4となり、病棟内付き添い歩行が可能となった。
【結論】つまずきの増強を認め歩行困難となった左ラクナ梗塞患者に対して、重心移動や体幹機能に着目し理学療法介入をした。またMillerらは床上歩行での部分的体重免荷は、歩行速度、バランス能力、歩幅を改善させると報告している。本症例においても、バランス練習と体幹トレーニングに加え、体重免荷歩行器を使用しての歩行練習を実施し、右足部のつまずき軽減とバランス機能の向上したことにより、歩行の介助量軽減を認めた。しかし最終評価では歩行自立には至らず、軽介助レベルにとどまった。要因としては、体幹機能とバランス機能の低下が残存している点や、発症前からつまずきがあった点が考えられる。
【倫理的配慮、説明と同意】対象者には口頭にて説明し書面にて同意を得た。また、本発表は当院倫理委員会にて承認を得ている。(承認番号:HG-IRB2121)
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