11:55 〜 12:05
[O-3-02] 福祉用具の導入に懐疑的であった家族への説明の工夫により、同意へと展開できた症例
福祉用具の導入に懐疑的であった家族への説明の工夫により、同意へと展開できた症例
所属 リハビリ本舗あっぷる訪問看護ステーション
氏名 大西導
【症例紹介】
10年前の脳出血による左片麻痺を有する80歳代女性。発症半年後より訪問リハビリテーションを開始し、90歳代の夫の介助を受けながら在宅生活を継続。数年前より心身機能低下に伴い、移乗や移動動作の介助量が増加。夫の介護負担軽減のため福祉用具変更を検討したが、夫の同意が得られず福利用具変更には至らなかった。その後、夫の腰痛増悪に伴い介護負担感も増大し、在宅介護に限界を感じていた。今回、在宅生活継続のため、福祉用具の変更による介護負担軽減を目指した取り組みについて報告する。
【評価とリーズニング】
ベッドと車椅子間の移乗動作はFIM2点。BRSは上下肢Ⅳ、手指Ⅴ。膝伸展筋力体重比は右37%左29%。両足関節の背屈0°。ベッドサイドの横型手すりを使用して移乗動作を行なっていたが、離殿直後に足部が前方に滑り、前方及び上方への重心移動が行えず着座してしまうため、起立時に最大介助が必要であった。また、夫の腰部への負担が大きい介助方法に対して助言を行なったが改善がみられず、腰痛の増強が認められた。本症例は上肢で前方の支持物を引いて前上方への重心移動を補い起立動作の自立度を高めることが可能であると推察した。また、縦型手すりにより起立動作時の重心動揺が軽減することが報告されており、介助量軽減を図るため、ベッド近位に突っ張り型手すりの設置が妥当であると考えた。以前、夫が拒否した経緯もあるため、縦型手すりの実用性を示すプレゼンテーションに重点をおいた。
【介入と結果】
対象者の前方に突っ張り型手すりに見立てた支持物を設置し、それを利用して移乗動作のシミュレーションを行なった。即時的に起立動作の自立度が向上することを夫に示し、突っ張り型手すりの設置に際して家屋への侵襲がないこと、返却可能な貸与品であることの説明を加え、理解を促した。結果、突っ張り型手すりの導入に至り、車椅子とベッド間の移乗動作の自立度が向上した(FIM4点)。また、夫の介助量と腰部への負担も減少し、「介護が楽になった」と感じ、介護負担感の軽減を認めた。
【結論】
要介護者の在宅生活継続において、介護者の身体的・精神的負担が軽減されることは重要な因子であり、その介護能力を補う援助手段の一つとして福祉用具の活用がある。しかし、安易な導入で機能改善の妨げになったり、家族の抵抗感でタイミングよく導入できないこともあるため、福祉用具の選定や効果、使用方法などの適切な指導を行うことが、理学療法士としての重要な役割である。本症例では、夫が介護力の限界を感じた時期での福祉用具の変更となったが、今後の課題として、介護者の負担感も経時的に評価し、負担軽減のための早期介入が必要であると考える。
【倫理的配慮 説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言に則り、当社倫理委員会の承認を得たものであり(承認番号:2021002番)、症例報告の趣旨をご本人とご家族に文書にて説明を行い書面で承諾を得た。
所属 リハビリ本舗あっぷる訪問看護ステーション
氏名 大西導
【症例紹介】
10年前の脳出血による左片麻痺を有する80歳代女性。発症半年後より訪問リハビリテーションを開始し、90歳代の夫の介助を受けながら在宅生活を継続。数年前より心身機能低下に伴い、移乗や移動動作の介助量が増加。夫の介護負担軽減のため福祉用具変更を検討したが、夫の同意が得られず福利用具変更には至らなかった。その後、夫の腰痛増悪に伴い介護負担感も増大し、在宅介護に限界を感じていた。今回、在宅生活継続のため、福祉用具の変更による介護負担軽減を目指した取り組みについて報告する。
【評価とリーズニング】
ベッドと車椅子間の移乗動作はFIM2点。BRSは上下肢Ⅳ、手指Ⅴ。膝伸展筋力体重比は右37%左29%。両足関節の背屈0°。ベッドサイドの横型手すりを使用して移乗動作を行なっていたが、離殿直後に足部が前方に滑り、前方及び上方への重心移動が行えず着座してしまうため、起立時に最大介助が必要であった。また、夫の腰部への負担が大きい介助方法に対して助言を行なったが改善がみられず、腰痛の増強が認められた。本症例は上肢で前方の支持物を引いて前上方への重心移動を補い起立動作の自立度を高めることが可能であると推察した。また、縦型手すりにより起立動作時の重心動揺が軽減することが報告されており、介助量軽減を図るため、ベッド近位に突っ張り型手すりの設置が妥当であると考えた。以前、夫が拒否した経緯もあるため、縦型手すりの実用性を示すプレゼンテーションに重点をおいた。
【介入と結果】
対象者の前方に突っ張り型手すりに見立てた支持物を設置し、それを利用して移乗動作のシミュレーションを行なった。即時的に起立動作の自立度が向上することを夫に示し、突っ張り型手すりの設置に際して家屋への侵襲がないこと、返却可能な貸与品であることの説明を加え、理解を促した。結果、突っ張り型手すりの導入に至り、車椅子とベッド間の移乗動作の自立度が向上した(FIM4点)。また、夫の介助量と腰部への負担も減少し、「介護が楽になった」と感じ、介護負担感の軽減を認めた。
【結論】
要介護者の在宅生活継続において、介護者の身体的・精神的負担が軽減されることは重要な因子であり、その介護能力を補う援助手段の一つとして福祉用具の活用がある。しかし、安易な導入で機能改善の妨げになったり、家族の抵抗感でタイミングよく導入できないこともあるため、福祉用具の選定や効果、使用方法などの適切な指導を行うことが、理学療法士としての重要な役割である。本症例では、夫が介護力の限界を感じた時期での福祉用具の変更となったが、今後の課題として、介護者の負担感も経時的に評価し、負担軽減のための早期介入が必要であると考える。
【倫理的配慮 説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言に則り、当社倫理委員会の承認を得たものであり(承認番号:2021002番)、症例報告の趣旨をご本人とご家族に文書にて説明を行い書面で承諾を得た。
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