第33回大阪府理学療法学術大会

Presentation information

oral session

[O-3] O-3

Sun. Jul 11, 2021 11:45 AM - 12:45 PM 対面会場(200名)/サテライト会場/Web会場①(ウェビナー3000名) (2階グランドホール)

座長:増田 知子(千里リハビリテーション病院)

12:35 PM - 12:45 PM

[O-3-06] 客観的ふらつきは認めず、主観的ふらつきと転倒恐怖感から屋外活動制限を認めた症例

*辻野 玲菜1、井川 勇成1、中谷 裕也1、山本 将揮2、文野 住文3 (1. 医療法人青洲会 なかつか整形外科リハビリクリニック、2. 医療法人高遼会 高遼会病院、3. 関西医療大学 保健医療学 理学療法学科)

【症例紹介】
X−3年に右人工膝関節全置換術(以下、TKA)を施行し、既往歴に腰部脊柱管狭窄症・糖尿病を有する80歳代後半の女性である。TKA前は庭で散歩やガーデニングの屋外活動を行っていたが、X年には「屋外は転びそうで恐い」という転倒恐怖感と「歩くとふらふらする」といった主観的ふらつきを訴え、意欲や活動量の低下を認めていた。しかし、歩行動作観察では、客観的ふらつきを認めず、症例が訴える主観的ふらつきと転倒恐怖感の解釈に難渋した症例である。

【評価とリーズニング】
転倒恐怖感の指標であるthe Modified Falls Efficacy Scale (MFES)は110/140点であり、そのうち屋外でのIADL項目は13/40点であった。また、歩行動作は一貫性があり、客観的ふらつきは認めなかったが、修正Borgスケールは200mの屋内歩行動作では1程度、50mの屋外歩行動作にて4の疲労感があり、屋外歩行動作では耐久性の低下を認めた。このことから、転倒恐怖感には歩行動作能力だけでなく、周辺環境も影響すると考えたため、耐久性を向上させ、屋外歩行動作の成功体験を積み重ねることで転倒恐怖感が改善され、散歩やガーデニングなどの屋外活動の再開に繋がると考えた。歩行動作は、右立脚中期に右足関節背屈に伴う下腿前傾とわずかな右股関節伸展・外旋と右膝関節屈曲に伴う空間的な骨盤後傾と左回旋が生じ、同時に胸腰部屈曲がわずかに生じる。この時、左足底接地するため右立脚後期を認めない。続く左荷重応答期にてわずかな右股関節屈曲、右膝関節屈曲、わずかに右足関節底屈し右踵離地するが、右立脚期から左立脚期での身体左前方移動が乏しく、右下肢の歩幅が狭いことが特徴であった。関節可動域検査は、右股関節伸展0°、徒手筋力検査は、右股関節伸展3、右足関節底屈2-であった。神経学的検査は、アキレス腱反射減弱であった。

【介入と結果】
運動療法は、右股関節伸展可動域練習と右股関節伸展・右足関節底屈筋力強化練習・ステップ練習を実施した。歩行動作練習は、歩行動作能力に気づきを与えることを目的に近位見守りレベルから開始した。意欲的な発言を認めると見守りなしの歩行動作練習に切り替え、歩行練習の成功体験を積めるように距離は症例と相談し決定した。そして、現在は1人で自主的な歩行動作練習を行えるようになった。最終評価の関節可動域検査は右股関節伸展5°、徒手筋力検査は右股関節伸展4と改善し、歩行動作観察では歩幅の拡大を認めた。そしてガーデニングや庭での散歩を再開し、MFESは屋外でのIADL項目が18/40点と改善し、転倒恐怖感が改善した。

【結論】
転倒恐怖感が、患者の主訴だけでなく背景や身体機能を含めて解釈することで改善することを経験した。今回は、歩行動作改善を図り、同時に行動変容や習慣化することや自主的に行動を行うように働きかけることが重要である症例であった。

【倫理的配慮・説明と同意】
本人に十分な説明を行い、書面にて同意を得た。

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