[P-10-04] 体幹筋へのアプローチにより座位保持能力の改善を認めた右片麻痺の1症例
【症例紹介】80代女性、令和X年Y月Z日、シルバーカー歩行中に外出先で転倒し当院へ救急搬送となる。画像所見で左放線冠に急性期脳梗塞(Branch atheromatous disease:以下BAD型)を認め意識障害、右片麻痺、構音障害を呈し入院加療となり、入院翌日からリハビリテーション介入となった。病前のADLは、移動は屋内歩行自立、屋外歩行はシルバーカーを使用し自立していた。合併症として誤嚥性肺炎、正球性貧血、既往歴に強皮症がある。
【評価とリーズニング】初期評価(第8病日)、Japan Coma Scale(以下JCS)は、Ⅱ-10、高次脳機能障害として麻痺側への注意機能低下がみられた。Brunnstrom Recovery stage(以下BRS)右上肢Ⅲ右手指Ⅲ右下肢Ⅳ、Mingazzini試験は陽性、感覚機能は表在感覚・深部感覚共に軽度鈍麻であった。筋緊張は両側腹部及び麻痺側下肢に低緊張を認めた。またStroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)は、合計点数は40点で、麻痺側運動機能が9点、体幹機能は0点であった。
座位姿勢では、体幹の低緊張が著明で右後方へ崩れ、非麻痺側方向への重心移動にも抵抗を認めた。座位での左右への立ち直り反応も見られず、端座位保持にも介助を要した。画像所見より皮質網様体脊髄路が障害され、両側体幹抗重力筋・右股関節近位筋の低緊張及び出力低下が出現すると予測されるため、本症例では腹斜筋・腹横筋、下肢近位筋活動の促通が有効ではないかと考えた。
【介入と結果】腹部低緊張に対して、寝返り動作練習や座位でのリーチ動作練習で筋緊張の賦活を試みた。また、介助下での立位動作で、非麻痺側股関節への荷重練習を行い、両側体幹伸展活動を促した。最終評価(第26病日)、BRSは右上肢Ⅳ手指Ⅳ下肢Ⅴ、Mingazzini試験は陰性となり、初期評価と比較して体幹機能・麻痺側随意性の改善を認めた。座位姿勢では、左右への立ち直り反応も出現し、端座位保持は介助レベルから見守りレベルへと向上した。SIASは合計48点で、麻痺側運動機能が13点、体幹機能は4点と改善を認めた。
【結論】本症例はBAD型の脳梗塞であり左放線冠から左基底核に3スライドに及ぶ広範囲の梗塞巣を認め、右片麻痺を呈した。本症例の座位姿勢の崩れは、両側体幹筋の低緊張、股関節近位筋の低緊張及び随意性低下が影響していると考えた。治療アプローチとして両側の体幹筋伸展活動と股関節近位筋の出力を促したことにより体幹機能が向上し、座位姿勢の改善に繋がった。また体幹機能が向上したことにより、立位保持や移乗動作の介助量軽減にも繋がった。脳血管障害の理学療法では早期から患者に抗重力伸展活動を促し、体幹筋及び股関節近位筋に対するアプローチが重要であると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】本症例はヘルシンキ宣言に基づき、口頭・書面にて発表の趣旨を十分に説明し同意を得た。
【評価とリーズニング】初期評価(第8病日)、Japan Coma Scale(以下JCS)は、Ⅱ-10、高次脳機能障害として麻痺側への注意機能低下がみられた。Brunnstrom Recovery stage(以下BRS)右上肢Ⅲ右手指Ⅲ右下肢Ⅳ、Mingazzini試験は陽性、感覚機能は表在感覚・深部感覚共に軽度鈍麻であった。筋緊張は両側腹部及び麻痺側下肢に低緊張を認めた。またStroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)は、合計点数は40点で、麻痺側運動機能が9点、体幹機能は0点であった。
座位姿勢では、体幹の低緊張が著明で右後方へ崩れ、非麻痺側方向への重心移動にも抵抗を認めた。座位での左右への立ち直り反応も見られず、端座位保持にも介助を要した。画像所見より皮質網様体脊髄路が障害され、両側体幹抗重力筋・右股関節近位筋の低緊張及び出力低下が出現すると予測されるため、本症例では腹斜筋・腹横筋、下肢近位筋活動の促通が有効ではないかと考えた。
【介入と結果】腹部低緊張に対して、寝返り動作練習や座位でのリーチ動作練習で筋緊張の賦活を試みた。また、介助下での立位動作で、非麻痺側股関節への荷重練習を行い、両側体幹伸展活動を促した。最終評価(第26病日)、BRSは右上肢Ⅳ手指Ⅳ下肢Ⅴ、Mingazzini試験は陰性となり、初期評価と比較して体幹機能・麻痺側随意性の改善を認めた。座位姿勢では、左右への立ち直り反応も出現し、端座位保持は介助レベルから見守りレベルへと向上した。SIASは合計48点で、麻痺側運動機能が13点、体幹機能は4点と改善を認めた。
【結論】本症例はBAD型の脳梗塞であり左放線冠から左基底核に3スライドに及ぶ広範囲の梗塞巣を認め、右片麻痺を呈した。本症例の座位姿勢の崩れは、両側体幹筋の低緊張、股関節近位筋の低緊張及び随意性低下が影響していると考えた。治療アプローチとして両側の体幹筋伸展活動と股関節近位筋の出力を促したことにより体幹機能が向上し、座位姿勢の改善に繋がった。また体幹機能が向上したことにより、立位保持や移乗動作の介助量軽減にも繋がった。脳血管障害の理学療法では早期から患者に抗重力伸展活動を促し、体幹筋及び股関節近位筋に対するアプローチが重要であると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】本症例はヘルシンキ宣言に基づき、口頭・書面にて発表の趣旨を十分に説明し同意を得た。
要旨・抄録、PDFの閲覧には参加者用アカウントでのログインが必要です。参加者ログイン後に閲覧・ダウンロードできます。
» 参加者用ログイン