第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[P-12] 研究報告①(運動器)P-12

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster:P-12 (webポスター会場)

座長:堀口 達也(整形外科なかむらクリニック)

[P-12-04] 亜急性期まで屈曲制限が著明だった膝蓋骨骨折術後の長期成績について

*吉田 拓也1、平田 繁1、水下 和也1、中谷 善之1、大西 純一1、吉年 寛士1 (1. 清恵会病院)

【背景と目的】

急性期の理学療法における膝関節屈曲角度の早期獲得は重要であり、膝蓋骨骨折に対しTension band wiring(以下:TBW)を施行した患者は、術後30日を目安に100°以上屈曲角度を獲得できれば良好な屈曲角度につながるとされる(伊藤ら)が、臨床では術後30日に屈曲制限がある患者も多い。本研究では予後不良とされる術後30日において屈曲角度が100°以下である患者の長期成績を分析し、術後の指標となる知見を得たので報告する。

【方法】

2010年1月~2020年1月間の術後患者のうち、術後30日時点で他動可動域が100°以下であった21名(男13名、女8名、平均年齢57.5歳±16.8)を対象。術式によりTBW群11例、その他群10例(Cannulated cancellous screw(以下:CCS)9例、ひまわり法1例)に分類。そのうち、TBW群7症例、その他群8症例で、術後30日時点で100°以上の屈曲許可はなく、100°以上の追加指示は最短で術後21日目、最長で術後63日目からだった。両群で術後30日→術後90日→術後150日の経過を比較、屈曲角度回復に有意差がみられるのか、EZRを用いてFriedman検定にて統計解析を行った(p<0.05)。

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言、及び当院の患者の個人情報保護規定に基づき、個人情報の利用及び提供について、予め同意を得ている。

【結果】

TBW群は術後30日と術後90日間、術後30日と術後150日間、術後90日と術後150日間のいずれも屈曲角度の回復に有意差があった。一方、その他群は術後90日と術後150日間のみ有意差がみられなかった。平均可動域(術後30日→術後90日→術後150日)は、TBW群が64.5°±25.9→130.7°±17.7→143.6°±6.4、その他群が79.0°±16.7→131.0°±16.8→141.0°±10.8であった。

【結論】

両群とも術後150日時点で平均約140°と比較的良好だが、一部に有意差がみられなかった。大腿四頭筋に対し一定の条件下で筋力増強運動を行い、Delayed onset muscle soreness(以下:DOMS)が生じると運動前後で内側広筋と外側広筋の筋硬度に有意差がみられる(久保下ら)。当科では主治医の指示に応じ自主練習を指導しており、両群とも術後90日以降、Open kinetic chainからClosed kinetic chainへと負荷量が増加するとDOMSの頻度が増える傾向があった。運動量増加と大腿四頭筋の伸張性低下が関与し、一部の回復に影響があった可能性があった。また、屈曲角度の早期獲得が重要である一方、術後30日時点で100°以上の許可がでている症例は多くなかった。今回の結果を踏まえ、術後の運動量調整を含め、当院のパスを術式に応じて作成する必要性があった。急性期における膝関節屈曲角度の早期獲得が重要であることは言うまでもないが、亜急性期に屈曲制限が残存することが必ずしも予後不良に直結しないことが本研究により示唆された。

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