[P-12-06] 上肢運動器疾患における利き手・非利き手別で与える影響~橈骨遠位端骨折での検討~
【背景と目的】
日常生活において利き手と非利き手ではそれぞれ役割が違う.利き手は器用さや運動能力が優れており,非利き手はそれらをサポートする役割があると言われている.上肢運動器疾患においてADLに影響を及ぼす因子の一つとして利き手があるとの報告はあるが,利き手・非利き手別でどのような影響を及ぼすかの報告はない.そこで,本研究の目的を上肢運動器疾患における利き手・非利き手別で与える影響を明らかにすることとした.
【方法】
2018年9月から2020年12月に当院にて橈骨遠位端骨折術後,運動療法を行った25例を対象とした.利き手を受傷した利き手群12例と非利き手を受傷した非利き手群13例の2群間で術後4,8,12週の経時的変化を調査した.内訳として利き手群は,男性2例,女性10例,平均年齢72.6±12.8歳,AO分類A2例,B2例,C8例で,非利き手群は,男性3例,女性10例,平均年齢64.3±18.4歳,AO分類A6例,B0例,C7例であった.調査項目は,機能障害の評価としてROMの健側比(背屈,掌屈,橈屈,尺屈,回内,回外),握力の健側比,ADL評価はPatient-Rated Wrist Evaluation The Japanese Version(以下,PRWE-J)とその小項目である痛み,機能とした. 統計ソフトRを使用し術後4,8,12週の機能障害,ADLについて2群間でt検定を行い比較検討した.有意水準は5%未満とした.
【結果】
機能障害において2群間で著明な差は認めなかった.PRWE-Jは利き手群(術後4週/8週/12週)で43.9/33.7/29.5,非利き手群で44.8/37.5/23.9,痛みの項目で利き手群は21.2/16.8/16.0,非利き手群は22.0/18.5/13.9,機能の項目で利き手群は46.4/17.0/29.5,非利き手群は22.6/18.6/23.9であった.PRWE-Jの全項目で有意差は認めなかったが,術後4週の機能でのみ利き手群が点数の高い傾向がみられ,その後8週と12週では傾向は認めなかった.
【結論】
上肢運動器疾患における利き手・非利き手別で与える影響は,2群間で著明な差はないことが分かった.この結果より,臨床場面で目標設定などを行う際に利き手・非利き手別での考慮の必要はないことが示唆された.また術後4週でPRWE-Jの機能で利き手群に点数の高い傾向がみられ,術後8週以降では傾向を認めなくなったことに関して,握力健側比が70~80%に至るまで3~5か月必要であることや,掌背屈の可動域は術後3ヶ月まで改善するという報告がある.このことより術後4週時点では機能障害が十分に改善されていない時期ということが分かり,日常生活場面で利き手を使えない状況が予測される.したがって,術後4週での利き手群に対しては経過の説明やADL指導について考慮が必要と考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,当院倫理審査委員会の承認(倫理番号2019-B)を得ている.患者には,ヘルシンキ宣言に基づいて研究の意義を十分に説明し同意を得た.
日常生活において利き手と非利き手ではそれぞれ役割が違う.利き手は器用さや運動能力が優れており,非利き手はそれらをサポートする役割があると言われている.上肢運動器疾患においてADLに影響を及ぼす因子の一つとして利き手があるとの報告はあるが,利き手・非利き手別でどのような影響を及ぼすかの報告はない.そこで,本研究の目的を上肢運動器疾患における利き手・非利き手別で与える影響を明らかにすることとした.
【方法】
2018年9月から2020年12月に当院にて橈骨遠位端骨折術後,運動療法を行った25例を対象とした.利き手を受傷した利き手群12例と非利き手を受傷した非利き手群13例の2群間で術後4,8,12週の経時的変化を調査した.内訳として利き手群は,男性2例,女性10例,平均年齢72.6±12.8歳,AO分類A2例,B2例,C8例で,非利き手群は,男性3例,女性10例,平均年齢64.3±18.4歳,AO分類A6例,B0例,C7例であった.調査項目は,機能障害の評価としてROMの健側比(背屈,掌屈,橈屈,尺屈,回内,回外),握力の健側比,ADL評価はPatient-Rated Wrist Evaluation The Japanese Version(以下,PRWE-J)とその小項目である痛み,機能とした. 統計ソフトRを使用し術後4,8,12週の機能障害,ADLについて2群間でt検定を行い比較検討した.有意水準は5%未満とした.
【結果】
機能障害において2群間で著明な差は認めなかった.PRWE-Jは利き手群(術後4週/8週/12週)で43.9/33.7/29.5,非利き手群で44.8/37.5/23.9,痛みの項目で利き手群は21.2/16.8/16.0,非利き手群は22.0/18.5/13.9,機能の項目で利き手群は46.4/17.0/29.5,非利き手群は22.6/18.6/23.9であった.PRWE-Jの全項目で有意差は認めなかったが,術後4週の機能でのみ利き手群が点数の高い傾向がみられ,その後8週と12週では傾向は認めなかった.
【結論】
上肢運動器疾患における利き手・非利き手別で与える影響は,2群間で著明な差はないことが分かった.この結果より,臨床場面で目標設定などを行う際に利き手・非利き手別での考慮の必要はないことが示唆された.また術後4週でPRWE-Jの機能で利き手群に点数の高い傾向がみられ,術後8週以降では傾向を認めなくなったことに関して,握力健側比が70~80%に至るまで3~5か月必要であることや,掌背屈の可動域は術後3ヶ月まで改善するという報告がある.このことより術後4週時点では機能障害が十分に改善されていない時期ということが分かり,日常生活場面で利き手を使えない状況が予測される.したがって,術後4週での利き手群に対しては経過の説明やADL指導について考慮が必要と考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,当院倫理審査委員会の承認(倫理番号2019-B)を得ている.患者には,ヘルシンキ宣言に基づいて研究の意義を十分に説明し同意を得た.
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