[P-14-01] 水素ガス吸入が脳血流に与える影響
【背景と目的】
Osawaら(2007)は、水素が細胞膜を速やかに通過し、細胞障害性の活性酸素種と反応することで酸化障害を防ぐ効果的な抗酸化治療に用いられることを報告した。2016年に水素ガス吸入療法が厚生労働省の先進医療Bとして承認され、水素に着目がされてきた。水素ガス発生装置からの水素の吸入の方法は、肺から血中に取り込むことができ、作用が速く現れると言われ、水素の吸入は活性酸素種によって生じた酸化ストレスに対する有効な方法であるとされている。そのため、近年、様々な種類の水素ガス発生装置が市販されており、病院やクリニック、整骨院、スポーツクラブ、エステサロンなどでも用いられてきている。しかしながら、水素ガス吸入によって脳血流が変化した客観的なデータが十分に示されていない。そこで本研究は、健常成人に対する水素ガス吸入が脳血流に与える影響を検討することを目的とする。
【方法】
対象は、健常成人8名とした。研究プロトコルは、課題のみを遂行する水素吸入前の5分間(水素吸入前)、課題に加え水素を吸入する10分間(水素吸入中)、課題のみを遂行する水素吸入終了後の10分間(水素吸入後)とした。研究中の課題は、脳血流が増加するとされている100マス計算(掛け算)を用い、左上から順に一定の速度ですることや、課題遂行中に頭部を大きく動かさないことを指示した。吸入する水素は、濃度2%の水素ガスを水素吸入装置(株式会社ジャストリンク社製 H2Air+)を用いた。脳血流の計測には、携帯型脳血流計測装置(NeU社製、HOT-2000)を前額部に当て、左右の脳血流動態の変化を計測した。データ解析は水素吸入前の左右脳血流を基準とした。さらに、水素吸入前(0~5分)、水素吸入中(0~5分、5~10分)、水素吸入終了後(0~5分、5~10分)における各5分間で、波形が安定した1分間の平均値を算出して、比較した。統計は、脳血流量や作業遂行量における条件間の要因の違いを検討するために、Friedman検定を用いた。有意差は5%とした。
【結果】
水素吸引前の脳血流に比べ、左右の脳血流は水素吸入中・後において有意な差がみられず、課題遂行量においても有意差をみとめなかった。一方、右利きと左利きの対象者で分けた際、水素吸入による脳血流の増減に異なる傾向がみられた。
【結論】
課題遂行中の脳血流を基準とした場合、健常成人に対して水素ガスを吸入することによって、課題遂行時の脳血流や課題遂行量に顕著な増減はみられなかった。しかし、利き手が異なると課題遂行時の頭部や手の動きが異なるため、利き手毎で脳血流を検討する必要がある。本研究の限界として、対象者が少ないことに加え、本研究では末梢血流の計測ができていないこともあり、脳血流と末梢血流の関係や脳血流が減少した機序は解明できていないことがある。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は本学倫理委員会で承認され,対象者に対して研究の趣旨を紙面と口頭にて説明し,同意を得た。(承認番号1-21)
Osawaら(2007)は、水素が細胞膜を速やかに通過し、細胞障害性の活性酸素種と反応することで酸化障害を防ぐ効果的な抗酸化治療に用いられることを報告した。2016年に水素ガス吸入療法が厚生労働省の先進医療Bとして承認され、水素に着目がされてきた。水素ガス発生装置からの水素の吸入の方法は、肺から血中に取り込むことができ、作用が速く現れると言われ、水素の吸入は活性酸素種によって生じた酸化ストレスに対する有効な方法であるとされている。そのため、近年、様々な種類の水素ガス発生装置が市販されており、病院やクリニック、整骨院、スポーツクラブ、エステサロンなどでも用いられてきている。しかしながら、水素ガス吸入によって脳血流が変化した客観的なデータが十分に示されていない。そこで本研究は、健常成人に対する水素ガス吸入が脳血流に与える影響を検討することを目的とする。
【方法】
対象は、健常成人8名とした。研究プロトコルは、課題のみを遂行する水素吸入前の5分間(水素吸入前)、課題に加え水素を吸入する10分間(水素吸入中)、課題のみを遂行する水素吸入終了後の10分間(水素吸入後)とした。研究中の課題は、脳血流が増加するとされている100マス計算(掛け算)を用い、左上から順に一定の速度ですることや、課題遂行中に頭部を大きく動かさないことを指示した。吸入する水素は、濃度2%の水素ガスを水素吸入装置(株式会社ジャストリンク社製 H2Air+)を用いた。脳血流の計測には、携帯型脳血流計測装置(NeU社製、HOT-2000)を前額部に当て、左右の脳血流動態の変化を計測した。データ解析は水素吸入前の左右脳血流を基準とした。さらに、水素吸入前(0~5分)、水素吸入中(0~5分、5~10分)、水素吸入終了後(0~5分、5~10分)における各5分間で、波形が安定した1分間の平均値を算出して、比較した。統計は、脳血流量や作業遂行量における条件間の要因の違いを検討するために、Friedman検定を用いた。有意差は5%とした。
【結果】
水素吸引前の脳血流に比べ、左右の脳血流は水素吸入中・後において有意な差がみられず、課題遂行量においても有意差をみとめなかった。一方、右利きと左利きの対象者で分けた際、水素吸入による脳血流の増減に異なる傾向がみられた。
【結論】
課題遂行中の脳血流を基準とした場合、健常成人に対して水素ガスを吸入することによって、課題遂行時の脳血流や課題遂行量に顕著な増減はみられなかった。しかし、利き手が異なると課題遂行時の頭部や手の動きが異なるため、利き手毎で脳血流を検討する必要がある。本研究の限界として、対象者が少ないことに加え、本研究では末梢血流の計測ができていないこともあり、脳血流と末梢血流の関係や脳血流が減少した機序は解明できていないことがある。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は本学倫理委員会で承認され,対象者に対して研究の趣旨を紙面と口頭にて説明し,同意を得た。(承認番号1-21)
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