第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[P-14] P-14

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:P-14 (webポスター会場)

座長:木内 隆裕(森ノ宮医療大学)

[P-14-04] 連合反応を有する脳血管疾患患者の関節可動域に対してマットレスの違いが与える影響

*堀口 怜志1、井尻 朋人1、鈴木 俊明2 (1. 医療法人寿山会 法人リハビリテーション部、2. 関西医療大学大学院 保健医療学研究科)

【背景と目的】

重症例に対して褥瘡予防の観点からエアマットが選択されるが、姿勢が不安定となる欠点を有する。脳血管疾患患者では、連合反応や病的共同運動等により可動域制限・疼痛を招き、エアマットの不安定性により増悪する可能性がある。しかし、マットレスと筋緊張に関する報告は少ない。そこで本研究の目的は、脳血管疾患患者の関節可動域・疼痛に対してマットレスが与える影響を明らかにすることとし、シングルケースデザインを用い検討した。

【方法】

対象は、ベッド臥床時に左下肢屈筋の筋緊張亢進により著明な可動域制限・疼痛を呈した既往に右脳梗塞後左片麻痺を有する左脳梗塞患者とした。発症以前より認めた左下肢屈筋の連合反応が発症後に増悪していた。発症後35日での身体機能は、Brunnstrom recovery stage(右/左):上肢2/5、下肢2/2、Fugl Meyer Assessment 下肢(右/左):4/6であった。関節可動域は左股関節伸展:-105°、左膝関節伸展:-105°であり、左腸腰筋、ハムストリングスの筋緊張は著明に亢進していた。エアマット臥床時は、左上肢で柵など支持物を探索・把持し、身体を安定させる様子を認めた。車椅子で身体支持が安定すると支持物の探索や連合反応が減少した。そのため、身体支持が強固な環境では連合反応が減少すると推察された。そこで表面筋電計を用いマットレスの種類による左下肢の筋活動の違いを検討し、エアマットから標準型マットレスへ変更後、筋活動量の低下が確認された。以上をふまえ、研究デザインはAB型のシングルケースデザインとし、独立変数は標準型マットレスへの変更、従属変数は臥床時の左股関節・膝関節の伸展可動域、FaceScale(以下、FS)にて計測した疼痛強度とした。A期はベースライン期で6回、B期は介入期で8回計測を実施した。A期B期ともに、肺炎などの合併症・体位変換回数・経管栄養回数・リハビリ内容に差はない。介入効果の分析方法は、各評価結果をグラフ化し2-Standard deviation band分析(以下、2SDband分析)を用いて視覚的分析を実施した。加えて、Tau-Uを用い効果量を算出した。

【結果】

2SDband分析による視覚的分析の結果、A期と比較しB期において、左股関節・膝関節の伸展可動域の拡大、FS減少が確認された。Tau-Uの結果、各従属変数の効果量は、股関節伸展可動域:0.71、膝関節伸展角度:0.96、FS:0.81であった。

【結論】

視覚的分析の結果に加えて、A期内での変化を考慮した効果量分析の結果からも標準型マットレス使用後に関節可動域制限・疼痛の軽減が確認された。各従属変数は高い効果量を示していることから、各期における評価回数は少ないものの明確な変化が生じたと考えられる。本症例の様に、安静臥床時から連合反応が生じている症例に対して、マットレスの種類を考慮する必要性が示唆された。

【倫理的配慮】

本症例の家族に対し、研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た。

また、ABA法を検討したが、B法での明確な効果が確認されたためAB法を適応した。

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