第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[P-2] 脳損傷②(回復期)P-2

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster:P-2 (webポスター会場)

座長:木下 篤(さくら会病院)

[P-2-06] CBAを用いて課題指向型練習に切り替え歩行獲得に至った右片麻痺・重度失語症の一症例

*坂口 達哉1 (1. 富永病院リハビリテーション部)

【症例紹介】左被殻出血により失語症・片麻痺を呈した40歳代女性を担当した。家族構成はの5人暮らしで日中は独居となるためセルフケアの自立、屋内での歩行獲得が必要であった。介入により自宅内での歩行獲得に至った為、報告する。

【評価とリーズニング】[初期評価:87~90病日]Brunnstrom stage(Brs):Ⅱ-Ⅱ-Ⅱ Berg Balance Scale(BBS):31/56点Weight bearing ratio(WBR):15/40kg(37%) 表在・深部感覚検査:中等度鈍麻(失語症により精査困難)

(コミュニケーション)簡単なはい/いいえでの質問に対して首振りでの返答は可能。自身での表出は困難。尿意便意は、決まったジェスチャーで訴えることが可能。

〈リーズニング〉平行棒歩行練習においては、麻痺側下肢の支持性低下・両側体幹筋群低緊張により非麻痺側の股関節屈曲での代償を認め、立脚中期〜後期(Mst~Tst)にかけての抗重力伸展活動が低下し麻痺側クリアランスの低下を認めた。また、高次脳機能障害の影響により上記の姿勢となっていても自己修正が困難であり、歩行の安全性低下を助長していると考えた。

【介入と結果】〈介入〉麻痺側下肢・両側体幹の抗重力伸展活動促通・ステップ練習Mst~Tstに注目し実施した。リハビリ室での歩行は見守りで可能となったが、病棟での看護師付き添い歩行練習では安全性に欠ける場面が残存した。そのことから失語症でも高次脳機能障害の程度が評価可能なCognitiverelatedBehavioral Assessment(CBA)を使用した。CBA:23/30点で注意、判断、病識で3/5点、感情で4/5点、意識、記憶で5/5点あった。中等度の障害を認めた注意、判断、病識においては限局した環境での課題指向型練習に切り替え難易度調整を行い実施した。病棟の歩行練習では介助者からの指示を減らし遠位監視下で実施し、歩行の中で自己身体への気づきを増やせるように促した。〈結果〉[最終評価:174~176病日]BBS:45/56点 WBR:21㎏(52%) 10m歩行:26秒 CBA:24点(病識3→4)歩行動作において、非麻痺側股関節屈曲での代償が軽減しMst~Tstでの抗重力伸展活動が向上し麻痺側クリアランスの改善を認めた。また病棟歩行にて動作の性急さの軽減、周囲を確認しながら歩行できる事が多くなった。退院後は、自宅内で4点杖・短下肢装具装着にて歩行獲得に至った。

【結論】先行研究では、屋内歩行獲得の指標として重度運動麻痺や、BBS:47点(鏑木ら2012)・WBR:71%(明崎ら2006)・10m歩行:11.66秒(中村ら2015)と述べられており本症例においては上記のように否定的であった。しかし、本症例は重度失語症を認める為、CBAを用いて評価を行うことで、肯定的な面から練習内容を検討し、限定した場面で課題指向的に介入することが出来た。その結果、動作遂行能力が向上し、自宅内歩行獲得に至ったと考える。

【倫理的配慮、説明と同意】

対象者と家族には発表の趣旨を十分に説明し同意を得た。

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