[P-5-02] 受傷後7カ月経過した中心性脊髄損傷患者の残存機能を活かした環境調整にて立位移乗獲得に至った一症例
【症例紹介】
53歳 男性 20AB年C月X日に自宅内階段から転落。保存療法加療行っていたが、X+48日にC3―6椎弓形成術施行。X+78日に当院回復期病棟転院。X+191日に障害者病棟転棟。社会的情報:妻と息子2人の4人暮らし。自宅は3階戸建て。既往歴:後縦靭帯骨化症 need:立って移乗がしたい
【評価とリーズニング】
〈初期評価 X+191日目〉AIS:D 運動スコア(右/左)C5:5/5、C6:4/3、C7:4/3、C8:3/3、T1:3/3、L2:3/3、L3:5/4、L4:4/4、L5:4/4、S1:5/5 感覚:左下肢T5以下で表在・深部共に中等度鈍麻 Frankel分類:C2 ROM:足関節背屈0/-10° MAS:肩関節1+/1+、肘関節1/1、股関節2/2 足関節:2/2 握力:6.3/0㎏ 動作能力は起居:軽介助 介助にてベッドG-upし、長座位へ移行。下肢下垂は協力動作認め、体幹挙上は介助。移乗:中等度介助 起立直後に左下肢痙性認め、自己での立位姿勢修正困難。方向転換時は介助。重心誘導行うことで静止立位保持は可能。立位姿勢は体幹前傾・臀部後退位。移動:普通型車いす介助。
【介入と結果】
理学療法では鏡を使用し、膝立ちと立位・起立練習、伸張運動を中心に行った。起立時の環境性設定は①高さ48㎝②ベッド柵はL字バー、バーにロープを固定③ベッドコントローラーにフック・操作ボタンにはスポンジを付けて自己にて操作できるように改良。
〈最終評価 X+401日目〉AISA:D 運動スコア:C5:5/5、C6:4/4、C7:4/4、C8:4/4、T1:4/3、L2以下は初期評価と同様。握力:7.4/5.4㎏ 動作能力は起居:自立 移乗:立位移乗見守り ロープ把持し、起立直後にロープを引きこみ、姿勢修正。L字バーに持ち替えて方向転換。移動:普通型車いす自操自立(足漕ぎ)
【結論】
今回、中心性脊髄損傷患者に対して、残像機能を活かした環境調整行い、立位移乗動作獲得に至った。武川らFrankel分類Cでは70%の割合で移乗動作自立に至ったと報告しているが、上肢支持困難な場合の報告は少なく、立位移乗動作獲得に難渋した。起立練習、床上動作の中から体幹の賦活、動作定着を目指したが、著明な身体機能面の変化は認められなかった。Fawcett らは受傷後3 カ月までに活発な運動機能回復が起こり、9 カ月後にはほぼ終息、12~18 カ月でプラトーに達すると述べている。本症例は、転棟時受傷後7カ月経過しており、運動麻痺が形成されていることが考えられた。そのため、残存機能を引き出せるようベッド周囲の環境調整を進めた。具体的には、左右とも5レベルである上腕二頭筋の筋力を活かし、ロープを使用し、臀部離床時の上肢協力と痙性に対する姿勢修正を図った。さらに、立位安定後にL字バーに持ち替え、方向転換も安定した。したがって、上肢支持不十分な場合であっても、残存機能を有効に活用できれば、立位移乗獲得が行える可能性があると考えた。
【倫理的配慮、説明と同意】
なお、本症例報告にあたり患者および家族の了承を得た。また、当院倫理委員会の承認を得た。
53歳 男性 20AB年C月X日に自宅内階段から転落。保存療法加療行っていたが、X+48日にC3―6椎弓形成術施行。X+78日に当院回復期病棟転院。X+191日に障害者病棟転棟。社会的情報:妻と息子2人の4人暮らし。自宅は3階戸建て。既往歴:後縦靭帯骨化症 need:立って移乗がしたい
【評価とリーズニング】
〈初期評価 X+191日目〉AIS:D 運動スコア(右/左)C5:5/5、C6:4/3、C7:4/3、C8:3/3、T1:3/3、L2:3/3、L3:5/4、L4:4/4、L5:4/4、S1:5/5 感覚:左下肢T5以下で表在・深部共に中等度鈍麻 Frankel分類:C2 ROM:足関節背屈0/-10° MAS:肩関節1+/1+、肘関節1/1、股関節2/2 足関節:2/2 握力:6.3/0㎏ 動作能力は起居:軽介助 介助にてベッドG-upし、長座位へ移行。下肢下垂は協力動作認め、体幹挙上は介助。移乗:中等度介助 起立直後に左下肢痙性認め、自己での立位姿勢修正困難。方向転換時は介助。重心誘導行うことで静止立位保持は可能。立位姿勢は体幹前傾・臀部後退位。移動:普通型車いす介助。
【介入と結果】
理学療法では鏡を使用し、膝立ちと立位・起立練習、伸張運動を中心に行った。起立時の環境性設定は①高さ48㎝②ベッド柵はL字バー、バーにロープを固定③ベッドコントローラーにフック・操作ボタンにはスポンジを付けて自己にて操作できるように改良。
〈最終評価 X+401日目〉AISA:D 運動スコア:C5:5/5、C6:4/4、C7:4/4、C8:4/4、T1:4/3、L2以下は初期評価と同様。握力:7.4/5.4㎏ 動作能力は起居:自立 移乗:立位移乗見守り ロープ把持し、起立直後にロープを引きこみ、姿勢修正。L字バーに持ち替えて方向転換。移動:普通型車いす自操自立(足漕ぎ)
【結論】
今回、中心性脊髄損傷患者に対して、残像機能を活かした環境調整行い、立位移乗動作獲得に至った。武川らFrankel分類Cでは70%の割合で移乗動作自立に至ったと報告しているが、上肢支持困難な場合の報告は少なく、立位移乗動作獲得に難渋した。起立練習、床上動作の中から体幹の賦活、動作定着を目指したが、著明な身体機能面の変化は認められなかった。Fawcett らは受傷後3 カ月までに活発な運動機能回復が起こり、9 カ月後にはほぼ終息、12~18 カ月でプラトーに達すると述べている。本症例は、転棟時受傷後7カ月経過しており、運動麻痺が形成されていることが考えられた。そのため、残存機能を引き出せるようベッド周囲の環境調整を進めた。具体的には、左右とも5レベルである上腕二頭筋の筋力を活かし、ロープを使用し、臀部離床時の上肢協力と痙性に対する姿勢修正を図った。さらに、立位安定後にL字バーに持ち替え、方向転換も安定した。したがって、上肢支持不十分な場合であっても、残存機能を有効に活用できれば、立位移乗獲得が行える可能性があると考えた。
【倫理的配慮、説明と同意】
なお、本症例報告にあたり患者および家族の了承を得た。また、当院倫理委員会の承認を得た。
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