[P-7-03] 歩行動作のスピード低下を認めた左後十字靭帯付着部裂離骨折患者の一症例
【症例紹介】
症例は80歳代男性であり、買い物からの帰り道に自転車を押して歩行された際に足がペダルに引っ掛かり転倒し、左後十字靭帯付着部裂離骨折と診断された。受傷日より1ヶ月間のギプス固定による保存療法と完全免荷の後に1週間ごとに1/3荷重、1/2荷重、2/3荷重、全荷重となった。また、ギプス抜去後3ヶ月間膝サポーターを装着していた。病棟内ADLでは2/3荷重までは松葉杖歩行にて自立レベルであり、全荷重時に独歩となった。主訴は「右足が出しにくい」であり、ニードを歩行スピードの向上とした。
【評価とリーズニング】
全荷重開始時の歩行動作において、左立脚初期から中期の左股関節伸展、左膝関節伸展が乏しかった。このとき、左股関節外旋位、左下腿外旋位にて左膝関節屈曲し、左足底内側の離床を伴う下腿外側傾斜を認めた。これにより左膝屈曲・内反が増大することで左立脚中期を迎えていた。そのため、左立脚中期にかけての骨盤左前側方移動は乏しく、歩幅の減少に影響していると考えた。このことから、左股関節伸展可動域制限・筋力低下、左膝関節伸展可動域制限・筋力低下、左足の底屈・外がえし筋力低下を機能障害と予測した。MMTでは左股関節伸展3、左膝関節伸展筋2、左足の底屈・外がえし5であり、関節可動域検査では左股関節伸展5°、左膝関節伸展0°であった。
【介入と結果】
左膝・股関節伸展筋力の向上を目的に、背臥位での大腿四頭筋セッティング、右側臥位での左股関節伸展運動を実施した。初期評価より100日後、MMTで左膝・股関節伸展5と筋力向上を認めた。歩行動作においては、左立脚初期から中期に左膝関節伸展筋力向上による左膝屈曲・内反の軽減、左股関節伸展筋力向上による骨盤左前側方移動が増加した結果、歩幅が増大し歩行スピードが向上した。
【結論】
月城らは歩行中、内側広筋を含む広筋群は立脚初期から中期に最大収縮を迎えると報告している。また山田らは膝内反が生じていると立脚初期から中期における股関節内転運動が減少し、その後の股関節外転運動も減少すると報告している。本来、立脚初期から中期では足部回内による下腿外側傾斜にともなって骨盤側方移動が生じる。しかし膝関節屈曲位の場合、下腿外側傾斜は生じるが大腿部の外側傾斜は減少し、骨盤側方移動は減少すると考えられる。本症例においても、左立脚初期から中期の左膝関節伸展が乏しく、左股関節外旋位、左下腿外旋位にて左膝関節屈曲し、左足底内側の離床をともなう下腿外側傾斜により左膝内反が増大していた。理学療法介入による左膝関節伸展筋力向上により、左立脚初期から中期における左膝関節伸展が可能となり、左膝屈曲・内反が軽減した。その結果、左立脚初期から中期における左股関節内転にともなう骨盤左側方移動が向上した。加えて左股関節伸展筋力向上により、左股関節伸展が増大し、左立脚後期における歩幅の増大による歩行スピード向上に繋がったと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
発表に際し症例には説明の上、同意を得た。
症例は80歳代男性であり、買い物からの帰り道に自転車を押して歩行された際に足がペダルに引っ掛かり転倒し、左後十字靭帯付着部裂離骨折と診断された。受傷日より1ヶ月間のギプス固定による保存療法と完全免荷の後に1週間ごとに1/3荷重、1/2荷重、2/3荷重、全荷重となった。また、ギプス抜去後3ヶ月間膝サポーターを装着していた。病棟内ADLでは2/3荷重までは松葉杖歩行にて自立レベルであり、全荷重時に独歩となった。主訴は「右足が出しにくい」であり、ニードを歩行スピードの向上とした。
【評価とリーズニング】
全荷重開始時の歩行動作において、左立脚初期から中期の左股関節伸展、左膝関節伸展が乏しかった。このとき、左股関節外旋位、左下腿外旋位にて左膝関節屈曲し、左足底内側の離床を伴う下腿外側傾斜を認めた。これにより左膝屈曲・内反が増大することで左立脚中期を迎えていた。そのため、左立脚中期にかけての骨盤左前側方移動は乏しく、歩幅の減少に影響していると考えた。このことから、左股関節伸展可動域制限・筋力低下、左膝関節伸展可動域制限・筋力低下、左足の底屈・外がえし筋力低下を機能障害と予測した。MMTでは左股関節伸展3、左膝関節伸展筋2、左足の底屈・外がえし5であり、関節可動域検査では左股関節伸展5°、左膝関節伸展0°であった。
【介入と結果】
左膝・股関節伸展筋力の向上を目的に、背臥位での大腿四頭筋セッティング、右側臥位での左股関節伸展運動を実施した。初期評価より100日後、MMTで左膝・股関節伸展5と筋力向上を認めた。歩行動作においては、左立脚初期から中期に左膝関節伸展筋力向上による左膝屈曲・内反の軽減、左股関節伸展筋力向上による骨盤左前側方移動が増加した結果、歩幅が増大し歩行スピードが向上した。
【結論】
月城らは歩行中、内側広筋を含む広筋群は立脚初期から中期に最大収縮を迎えると報告している。また山田らは膝内反が生じていると立脚初期から中期における股関節内転運動が減少し、その後の股関節外転運動も減少すると報告している。本来、立脚初期から中期では足部回内による下腿外側傾斜にともなって骨盤側方移動が生じる。しかし膝関節屈曲位の場合、下腿外側傾斜は生じるが大腿部の外側傾斜は減少し、骨盤側方移動は減少すると考えられる。本症例においても、左立脚初期から中期の左膝関節伸展が乏しく、左股関節外旋位、左下腿外旋位にて左膝関節屈曲し、左足底内側の離床をともなう下腿外側傾斜により左膝内反が増大していた。理学療法介入による左膝関節伸展筋力向上により、左立脚初期から中期における左膝関節伸展が可能となり、左膝屈曲・内反が軽減した。その結果、左立脚初期から中期における左股関節内転にともなう骨盤左側方移動が向上した。加えて左股関節伸展筋力向上により、左股関節伸展が増大し、左立脚後期における歩幅の増大による歩行スピード向上に繋がったと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
発表に際し症例には説明の上、同意を得た。
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