第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[P-8] 運動器③(人工関節)P-8

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster:P-8 (webポスター会場)

座長:法所 遼汰(牧整形外科病院)

[P-8-03] 左人工膝関節全置換術後の関節可動域改善に超音波画像診断装置による評価が有効であった一症例

*反保 裕貴1、平松 久仁彦2、山嵜 夏樹1、玉井 宣行2 (1. 玉井病院 リハビリテーション室、2. 玉井病院 膝関節センター)

【症例紹介】症例は左人工膝関節全置換術(以下、TKA)を施行された70歳台の女性である。15年前から左膝痛があり、保存療法にて経過を観察していた。3か月前から左膝痛が増悪し、左TKAを施行。翌日より理学療法介入開始となった。術後35日に自宅退院し、外来リハビリ(週3回)に移行した。

【評価】術前の左膝関節伸展可動域(以下、ROM)は-5°であり、膝関節後方の伸張感を訴えていた。術後103日(初期評価)での左膝ROMは屈曲115°、伸展-10°であった。膝関節他動伸展時は膝蓋骨下内側部に疼痛の訴えがあり、同部位のHoffa’s testが陽性であった。徒手的に下腿を牽引しながら他動伸展を行ったが同部位の疼痛に変化はなかった。超音波画像診断装置(以下、US)を用いた膝蓋下脂肪体(以下、IFP)の動態観察では健側と比較して膝関節自動伸展にともなうIFPの可動性の低下を認めた。徒手筋力検査(以下、MMT)では膝関節伸展4レベル、触診にて内側広筋の収縮低下を認めた。

【介入と結果】IFPの可動性改善を目的としたIFPのモビライゼーションとともに、膝関節後方の柔軟性の改善を目的にハムストリングス、膝窩筋の持続伸張と反復収縮を繰り返して施行した。筋力強化訓練は左膝関節伸展筋力強化を中心に行い、内側広筋の収縮を促すように実施した。術後143日目の評価では左膝関節ROMは屈曲120°伸展-5°に改善した。左膝関節伸展時の膝蓋骨下内側部痛は消失し、膝後方の伸張感の訴えに変化した。また、Hoffa’s testは陰性となり、USにおけるIFPの動態評価は初期評価時と比較して可動性の改善を認めた。左膝関節伸展MMTは4レベルと同値であったが、触診では内側広筋の収縮に向上を認めた。

【結論】IFPは膝関節伸展に伴い前方へ移動し、疼痛に対する感受性が高いとされている。本症例において、左膝関節伸展ROMが術前よりも低下している原因は、膝伸展時の疼痛発生部位、Haffa’s testからIFPの問題であると考えた。そこで、USによる動態評価を追加し、IFPの可動性低下と推察した。これに対し、IFPのモビライゼーションを実施し、柔軟性の向上が得られたことにより、膝関節伸展ROMの改善につながったと考えた。本症例のごとく膝関節伸展時に膝関節前面痛を訴える症例における膝関節伸展制限の原因として後方組織だけでなく、前方組織の可能性も考慮する必要があると考える。今回は、その原因をより明確化するためにUSによる評価が有効であった。今回の経験を今後の臨床に生かしていきたいと思う。
【倫理的配慮、説明と同意】発表に際し症例に趣旨を十分説明し同意を得た。

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