[P-9-03] 股義足患者に視覚的フィードバックを用いたトレッドミル歩行練習が有効であった一症例
【症例紹介】
50代男性。身長160cm体重42.3kg。骨肉腫の診断によりX日左股関節離断術施行。X+27日股義足作製及びリハビリテーション目的で当院入院。術前ADLは全自立。車通勤にて工場勤務。最終目標は職場復帰。
【評価とリーズニング】
初期評価(X+27日)断端縫合部の創治癒良好。疼痛は幻肢痛NRS6〜8、筋力は体幹下肢GMT5レベル、等尺性膝伸展筋力体重比0.80kgf/kg。HDS-R30点。片脚立位2分以上可能。起居移乗動作、松葉杖歩行自立。経過として入院時より積極的に筋力増強運動と有酸素運動を実施。X+37日股義足採型、X+51日訓練用仮義足仮合せ。歩行練習は平行棒内歩行から段階的にはじめ、X+79日T字杖歩行練習開始。X+111日仮義足完成、10m歩行15.5秒19歩、6分間歩行240m。歩行時断端の荷重時痛に対してソケット内部の調整を、下肢クリアランス低下に対しては外転角度を適宜調整した。順調に股義足歩行自立に至ったが、歩容は左右非対称性を呈し歩行効率も生理的コスト指数(以下PCI)0.60と低下し社会復帰を目的に安定した長距離歩行を獲得するためには更なる歩容修正が必要と考えた。X+111日目より1週間ステップ練習と動画でのフィードバックを中心に歩容修正を試みたが効果が得られなかった。問題点として左右非対称な歩容の原因は義足立脚期の荷重が不十分なこと、転倒恐怖心による足部クリアランス低下を補うための努力性の振り出しによるものと考えた。
【介入と結果】
Davisらは義足患者にリアルタイムな視覚的フィードバック(以下RTVF)を行うことで歩行の左右対称性および心拍数と酸素消費量の改善が得られると報告しており、尾形らは義足歩行訓練において自己の姿勢を同時に提示することが重要であると述べている。これらのことから転倒恐怖心を取り除きながらRTVFが可能な歩行練習として、X+117日より姿勢鏡と転倒防止ハーネスを用いたトレッドミル歩行練習を2週間実施した。股義足は股・膝・足関節制御を義足で行うため常に転倒恐怖心が付き纏い下肢クリアランスを保とうと左右非対称な歩容を呈し歩行効率が低下する。義足に十分に荷重することで継手はその機能を発揮するが、転倒恐怖心がある状態では義足への荷重が不十分となり継手の機能は十分発揮できない。今回動画でのフィードバックでは歩容修正に至らなかったが、ハーネスと姿勢鏡を用いて自己の歩容を認識しながら歩行練習を行うことで、安全に義足への荷重を促すことができた。それにより安定したクリアランスが得られ歩行の左右対称性及び歩行効率の改善に繋がったと考える。最終評価(X+131日)幻肢痛はNRS3〜5、等尺性膝伸展筋力体重比1.10kgf/kg。10m歩行13.0秒18歩、6分間歩行270m、PCI 0.33へと向上した。
【結論】
姿勢鏡と転倒防止ハーネスを用いたトレッドミル歩行練習は股義足患者の歩容修正を図ることができる有効な手段であったと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
当院の倫理審査委員会の承認を得た(2020-29)。
50代男性。身長160cm体重42.3kg。骨肉腫の診断によりX日左股関節離断術施行。X+27日股義足作製及びリハビリテーション目的で当院入院。術前ADLは全自立。車通勤にて工場勤務。最終目標は職場復帰。
【評価とリーズニング】
初期評価(X+27日)断端縫合部の創治癒良好。疼痛は幻肢痛NRS6〜8、筋力は体幹下肢GMT5レベル、等尺性膝伸展筋力体重比0.80kgf/kg。HDS-R30点。片脚立位2分以上可能。起居移乗動作、松葉杖歩行自立。経過として入院時より積極的に筋力増強運動と有酸素運動を実施。X+37日股義足採型、X+51日訓練用仮義足仮合せ。歩行練習は平行棒内歩行から段階的にはじめ、X+79日T字杖歩行練習開始。X+111日仮義足完成、10m歩行15.5秒19歩、6分間歩行240m。歩行時断端の荷重時痛に対してソケット内部の調整を、下肢クリアランス低下に対しては外転角度を適宜調整した。順調に股義足歩行自立に至ったが、歩容は左右非対称性を呈し歩行効率も生理的コスト指数(以下PCI)0.60と低下し社会復帰を目的に安定した長距離歩行を獲得するためには更なる歩容修正が必要と考えた。X+111日目より1週間ステップ練習と動画でのフィードバックを中心に歩容修正を試みたが効果が得られなかった。問題点として左右非対称な歩容の原因は義足立脚期の荷重が不十分なこと、転倒恐怖心による足部クリアランス低下を補うための努力性の振り出しによるものと考えた。
【介入と結果】
Davisらは義足患者にリアルタイムな視覚的フィードバック(以下RTVF)を行うことで歩行の左右対称性および心拍数と酸素消費量の改善が得られると報告しており、尾形らは義足歩行訓練において自己の姿勢を同時に提示することが重要であると述べている。これらのことから転倒恐怖心を取り除きながらRTVFが可能な歩行練習として、X+117日より姿勢鏡と転倒防止ハーネスを用いたトレッドミル歩行練習を2週間実施した。股義足は股・膝・足関節制御を義足で行うため常に転倒恐怖心が付き纏い下肢クリアランスを保とうと左右非対称な歩容を呈し歩行効率が低下する。義足に十分に荷重することで継手はその機能を発揮するが、転倒恐怖心がある状態では義足への荷重が不十分となり継手の機能は十分発揮できない。今回動画でのフィードバックでは歩容修正に至らなかったが、ハーネスと姿勢鏡を用いて自己の歩容を認識しながら歩行練習を行うことで、安全に義足への荷重を促すことができた。それにより安定したクリアランスが得られ歩行の左右対称性及び歩行効率の改善に繋がったと考える。最終評価(X+131日)幻肢痛はNRS3〜5、等尺性膝伸展筋力体重比1.10kgf/kg。10m歩行13.0秒18歩、6分間歩行270m、PCI 0.33へと向上した。
【結論】
姿勢鏡と転倒防止ハーネスを用いたトレッドミル歩行練習は股義足患者の歩容修正を図ることができる有効な手段であったと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
当院の倫理審査委員会の承認を得た(2020-29)。
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