[P-9-05] 肩関節周囲炎の慢性疼痛に対するアプローチの一考察
【症例紹介】
60代女性。診断名は、右肩関節周囲炎、主訴は「1ヵ月前から肩を動かすと痛い」であった。
【評価とリーズニング】
初期評価では、他動での関節可動域は屈曲120°、外転100°、2nd外・内旋30°であり、NRS2の痛みを認めた。座位での自動運動屈曲・外転、外・内旋では、同最終域でNRS5の痛みがあった。棘上筋テスト・Neer test ・Hawkins testは陽性であり、大胸筋、小円筋、棘上筋に圧痛を認めた。上腕骨頭が2横指前方に偏位し肩甲骨は挙上及び外転、前傾位であり、アライメントの左右差を認めた。また、自動屈曲時の肩甲骨の挙上及び外転、上方回旋が著明であった。肩関節joaスコアは55.5点で、結帯動作・患側を下に寝る・頭上の棚の物に手が届くの3つが減点項目として挙がった。
以上より、インピンジメントテストや疼痛評価、肩関節2nd内旋制限の結果から、後面筋や後下方の関節包の短縮により骨頭の下方への滑りを阻害し、インピンジメントが生じたと考えた。また、痛みの長期化により肩甲下筋・棘上筋・小円筋の回旋筋腱板の機能低下に繋がり、動的安定化が図れず上腕骨頭の下方への引き下げが行えないことで、慢性的なインピンジメントの発生要因と考えた。また、骨頭は内旋位を呈しており、大胸筋に圧痛を認めていることや肩甲骨が前傾位になっていることもインピンジメントの発生要因と考えた。
【介入と結果】
週1回40分の介入を約4ヵ月実施した。治療内容は、始めに後面筋や後下方の関節包の短縮に対してストレッチと、上腕骨頭の後下方へのモビライゼーション、日常生活動作指導として、肩甲骨や胸椎のアライメント是正や就寝時のポジショニングとして患側を下にして寝ることを避け、仰向けで寝る際は右肩下にクッションを挟むように指導した。その後、段階的にコッドマン体操や回旋筋腱板の筋力強化、ホットパックを行った。最終評価では、他動での関節可動域は、肩屈曲160°、外転165°、2nd外・内旋65°と拡大を認めた。自動・他動運動における屈曲・外転・内外旋最終域の痛みはNRS1と軽減した。棘上筋テスト・Neer test ・Hawkins testは陰性であり、大胸筋、小円筋、棘上筋の圧痛は軽減した。上腕骨頭は、1横指前方に偏位まで改善を認めた。また、自動での屈曲における過度な肩甲骨の挙上及び外転、上方回旋が緩和された。肩関節joaスコアは、87.5点で初期評価時の減点項目の改善を認めた。
【結論】
先行研究では、肩関節痛はインピンジメントに起因するものが多いと報告があり、本症例も同様にインピンジメントが、慢性疼痛を引き起こした要因と考えた。そこで、後面筋や後方関節包に対してストレッチを行うとともに、就寝時のポジショニングにも着目してインピンジメントの発生を抑えたことで疼痛緩和に繋がったと考えた。
本症例を通して、直接的な介入以外に、アライメント是正(姿勢指導)や就寝時のポジショニングなどの日常生活動作指導の重要性を再確認することができた。
【倫理的配慮、説明と同意】
症例には症例発表にあたり説明を行い、同意を得た。
60代女性。診断名は、右肩関節周囲炎、主訴は「1ヵ月前から肩を動かすと痛い」であった。
【評価とリーズニング】
初期評価では、他動での関節可動域は屈曲120°、外転100°、2nd外・内旋30°であり、NRS2の痛みを認めた。座位での自動運動屈曲・外転、外・内旋では、同最終域でNRS5の痛みがあった。棘上筋テスト・Neer test ・Hawkins testは陽性であり、大胸筋、小円筋、棘上筋に圧痛を認めた。上腕骨頭が2横指前方に偏位し肩甲骨は挙上及び外転、前傾位であり、アライメントの左右差を認めた。また、自動屈曲時の肩甲骨の挙上及び外転、上方回旋が著明であった。肩関節joaスコアは55.5点で、結帯動作・患側を下に寝る・頭上の棚の物に手が届くの3つが減点項目として挙がった。
以上より、インピンジメントテストや疼痛評価、肩関節2nd内旋制限の結果から、後面筋や後下方の関節包の短縮により骨頭の下方への滑りを阻害し、インピンジメントが生じたと考えた。また、痛みの長期化により肩甲下筋・棘上筋・小円筋の回旋筋腱板の機能低下に繋がり、動的安定化が図れず上腕骨頭の下方への引き下げが行えないことで、慢性的なインピンジメントの発生要因と考えた。また、骨頭は内旋位を呈しており、大胸筋に圧痛を認めていることや肩甲骨が前傾位になっていることもインピンジメントの発生要因と考えた。
【介入と結果】
週1回40分の介入を約4ヵ月実施した。治療内容は、始めに後面筋や後下方の関節包の短縮に対してストレッチと、上腕骨頭の後下方へのモビライゼーション、日常生活動作指導として、肩甲骨や胸椎のアライメント是正や就寝時のポジショニングとして患側を下にして寝ることを避け、仰向けで寝る際は右肩下にクッションを挟むように指導した。その後、段階的にコッドマン体操や回旋筋腱板の筋力強化、ホットパックを行った。最終評価では、他動での関節可動域は、肩屈曲160°、外転165°、2nd外・内旋65°と拡大を認めた。自動・他動運動における屈曲・外転・内外旋最終域の痛みはNRS1と軽減した。棘上筋テスト・Neer test ・Hawkins testは陰性であり、大胸筋、小円筋、棘上筋の圧痛は軽減した。上腕骨頭は、1横指前方に偏位まで改善を認めた。また、自動での屈曲における過度な肩甲骨の挙上及び外転、上方回旋が緩和された。肩関節joaスコアは、87.5点で初期評価時の減点項目の改善を認めた。
【結論】
先行研究では、肩関節痛はインピンジメントに起因するものが多いと報告があり、本症例も同様にインピンジメントが、慢性疼痛を引き起こした要因と考えた。そこで、後面筋や後方関節包に対してストレッチを行うとともに、就寝時のポジショニングにも着目してインピンジメントの発生を抑えたことで疼痛緩和に繋がったと考えた。
本症例を通して、直接的な介入以外に、アライメント是正(姿勢指導)や就寝時のポジショニングなどの日常生活動作指導の重要性を再確認することができた。
【倫理的配慮、説明と同意】
症例には症例発表にあたり説明を行い、同意を得た。
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